サルコジ、しばらくほっぽらかしてたら、なんだあれ、さらにむちゃくちゃである。やたらハイパーアクティヴでつきあってらんない、ばーろー。あいつは、漢字なしでですんじゃう男なのだ。
おなじ穴のムジナ、ベルルスコーニがイタリア首相に選ばれた(三回目)。リフティングと人口日焼け具合が同じである。このなさけない民主主義の衰退は、「歴史の終焉」ではなく「政治の終焉」と呼ぶべきであろう。
さて、サルコの改革がいつのまにか単なる経費節減にすり替えられている。ニコラ・ユロが大統領選挙候補になるならないから始まって、あれだけ大宣伝で盛り上がったエコロジー・グルネル会議も、こっちでいう、山がネズミを生んだって表現そのまま尻つぼみである。今年初めにジョゼ・ボベがハンガー・ストライキまでした、OGM(GMO;遺伝子書き換え)食物の野外栽培凍結も、尻切れトンボのまま議会では無視された。なお、このOGM、特にモンサント(遺伝子書き換え種と肥料を売る米企業)の件は、いつか個別エントリにしたと考えてるんだけど、今のところ勉強不足、というより複雑すぎで手が出せないでいる。
高校生と教職員と親による、これもすでに議会を通過した教職員数削減案に反対するデモが、意識的なんだろうけどメディアの扱いが極めて限定されてたにもかかわらず、2週間でたしか5回目の今日は警察発表で2万人、開催側発表で4万人を動員した。今日は私立校教師も参加して、11200人の人員削減に抗議です。
教育相ダルコスによれば、児童・生徒数が減ったのだから職員数を減らすのはあたりまえ。定年退職者の2人にひとり分、人員充填つまり新規採用しない。だが同時にクラスあたりの生徒数は増やさないと言ってる。
対する生徒・教師・親サイドは、政府は次々に教育改革案を提出するが、割り算や英語を低学年から教えることも、道徳教育を強化することも、勉強についていけない児童・生徒への課外授業も、教師やアシスタントの数を減
らしては実現不可能だし、大体数年前からの出産ブームの結果、近い将来児童数が増えるのはわかりきっているのに、この人員削減は理解しがたいと主張している。
特に、学区制の撤廃、私立グランゼコルの高い学費と、たとえばバンリュウでの教育機関への予算の少なさ、そしてもちろんCPE(短期契約制度;ド・ヴィルパンが実施しようとしたが高校生による大幅な反対に会い、内容を大幅変更して実施。しかし欧州議会に欧州人権法に適応していないと判断され撤廃)反対運動の時と同様、背景には、生徒たちの雇用不安と社会不安がある。春休み前のデ
モがあさってにまた行われる予定だ。
司法制度改革も、医療制度改革もなんだが、単なる裁判所・病院の数を減らし、公共サービスを軽減し、つまり公務員数を縮減。かわりに、民間(公立病院内の私立クリニック部強化、薬のスーパーでの販売、離婚担当は家裁判事と弁護士ではなく会計士が担当とか)への移行だ。
増え続ける国家赤字は確かに大問題だ。だが、たとえば英国や米国・カナダ、北欧諸国やドイツの統計数字を持ってきて、仏国システムは古臭すぎる。改革が必要だ。だから公務員数をナントカ人減らす。これでは短絡しすぎである。これではオルトフーの移民の強制退去数目的2万5千人とまったく変わりない。公務員全退職者の1/2を充填しない、とは分かりやすいことは分かりやすいわけだが、国家運営とはそんなに簡単なものなのだろうか。
さらに、“改革”にしろ“経費削減”にしろ、やたら同時多発で、内容も具体的準備に欠け、おまけに全体としての方向性も、重要度に見合ったランク付けもない。関連ロビーから反対の声が上がれば、委員会を作って検討するといってもみ消しにしたり、名前だけ改革になるケースも多い。すると、経費削減の“痛み”を背負い込むのは、影響力を持ち得ない弱者--貧乏人・貧乏な年寄り・貧乏な移民・貧乏な学生etc.となる。
これは記憶で書いてるから数字にあまり自信はないんだけど、昨年春に選出されたサルコジが初めにやった減税策( le paquet fiscal )は年間130から150億ユーロの税収入減をもたらし、でも金持ちは金を貯めこむばかりで使わない。大目玉だった、もっと働いてもっと稼ぐ、の超過勤務手当て非課税策も、結局超過勤務はしたくても注文がこなきゃどうにもならんわけで、こちらも景気促進にはつながらなかった。
おまけにサブプライムで始まった世界金融危機は、いまだ落ち着く風情はなく、今のところフランスがこの危機でこうむる経済被害は300億ユーロと見られている。でもって、サルコの発表した、「国家出費削減政策」で浮く金額は、、、20億ユーロだそうで、まあ、情けなくなる。要するに、政府はもっと稼ぐためにもっと働いてます、と見せつけるだけが目的なんじゃないかとか思っちゃうわけだが、結局のところ仏国家民営化は進むんだから、サルコ、任務は無事果たしております、親分、というところか。
眼鏡と、次は義歯の国民健康保険でのカバーがなくなるようだ。まあ眼鏡に対する健保の払い戻しは、たしか16ユーロぐらいだからたいしたことないし、大体、相互保険を持っていればこちらから払い戻しが受けられる。だが、医療自己負担金が上がったばかりだというのに、相互保険を払えない貧乏人や年金生活者や病人でしょ、この16ユーロが致命的なのは。
おまけに20年来こんなのなかった、とエコノミストたちが繰り返すインフレ率がある。つまり国内消費に支えられた経済成長率が景気回復の鍵、といういつものまじないは効かないわけだ。基本的生活コストがガンガン上がれば、普通人は必要な出費さえできなくなる。ドル安と金融危機の影響でフランスにやってくる観光客も減るだろうし、中国までフランス・ボイコット体制に入っている。公務員数が減るということは、彼らの払う所得税も減るということである。教師になりたかった学生たちの就職先の数も減る。
スタグフレーションに対して、(ストック・オプションへの課税とかしつつ)たとえば消費税を下げる、あるいは最低賃金自体を上げる方向でもってたっていい訳だし、欧州レベルでニュー・ディールを組んだっていいわけだ。
だが、サルコにはXXXXが、いや想像力も経済観念もないわけで、そんなことは考えもせず、高くつく連発法改正だの、(ネゴではない)お話し合いだの、おミーティングだの、これも高くつく人質ビジネスのカモネギクライアントやって喜んでいる。ありゃダミダ。
小さな政治を目指して終わらない戦争を始めてしまった、タイタニック米国ドル帝国が沈みかけている時に、ブッシュコピペするのはベルルスコーニとサルコぐらいしかおりません。時代錯誤が歩いているよ、奇妙な歩き方で。
「私は、悪と闘うのだ!」と首相に選ばれえたベルルスコーニは宣言しましたが、イタリア経済を空にしたのは、企業家ベルルスコーニその人だったわけなのだ。
国庫が空なのであれば、それなりに、お手盛り給料アップ分返上するとか、ダティのストッキング代や化粧品代を法務省予算で支払わないとか、無駄な出張は減らすとか、何の役にも立たない医療設備つき(つまり医師つき)チャータージェットを南米まで飛ばして6日も空港に待機させたりはしないでほしい。選挙権ないけど高い税金払ってんだぞ、こっちは。
なお、カルラ妃のロンドン・パフォーマンス(と、肩幅のあってないディオールのスチュワーデス風プレタ・スーツ)のおかげでいったん上昇したサルコ支持率は、また下降を始めております。あたりまえだ。