“奇跡”ののち疑念する日本
ル・モンド社説 2012年11月2日
古い大陸ヨーロッパの眼には、かつて経済発展と新技術開発の“奇跡”とうつっていた日本だが、今ではその位置からますます遠ざかっている。1970年から1980年、日本の自動車業界と電気業界は、疑いなく、世界のチャンピオンだった。それらは、この国を世界で2番めの経済大国となした。
時代はおおきく変わった。いわゆる“失われた”20年間(1990年代から2000年代)後、東京と大阪から毎週悪いニュースが届くようになった。大衆向け電気器具産業の先端企業は、経済沈滞の打撃をこうむる最後のセクターではない。
11月1日、シャープは2012-2013年度の憂慮すべき損失額を発表した;韓国・台湾との激しい競争の結果売り上げがおちた液晶画面事業がその理由だ。会社自体の存続が危ぶまれている。
その前日、前年の悪い業績結果に続き、パナソニックは本年の巨大な損失を発表した。また、いくらかましな状況にあるソニーも、無人の尖閣諸島“国有化”のあと中国が商業パートナー(日本)に対してとった報復手段に原因があると非難している。
世界最大の自動車マーケットである中国での販売に大きく依存した自動車製造メイカーにとっても、状況はきわめて難しくなっている:彼らは、北京政府との外交危機の影響にひどく苦しんでいる。中国でのアンチ日本キャンペーンは、ホンダ・トヨタ・日産車の急激な販売台数減少をもたらし、韓国のヒュンダイ、ドイツのBMWがそれらに代わった。
ちからのある隣国のボイコット効果は観光にも及んでいる。今年の“koyo(訳注;紅葉)”、列島全体の樹木がパープルと金に彩られる極上のスペクタクルを、中国観光客は敬遠している。この9月には、アジア圏の経済主要大国である両国間国交正常化40周年を祝うはずだった。しかし、全ての祭典は中止された。
この日中危機は、津波ショックとフクシマ原発カタストロフから一年以上たった日本の脆弱性を、赤裸々に現している。
たしかに、日中危機は日本式ダイナミズムに巣食う重い性向を裸にする。経済停滞、人口高齢化そして新技術開発能力の低迷にくわえ、政治システムの終わりなき弱体化が加わる。
半世紀に及ぶリベラル・デモクラット支配を終焉させデモクラットが権力についてから3年、日本政治階級は国の挑戦を目の前に、ますます麻痺していくように見える。しかし、中国の台頭を前にして、日本は自ら閉じこもることやナショナリズムへの誘惑に屈することなく、新しいモデルを見出すべきだろう。
社説
*****本社説とは直接関係はありませんが、BBCも日本に関する記事を載せていました。復興費用の流用について(31日):Japan tsunami reconstruction money 'misspent'