今日のル・モンドにTenzin Gyatso、第14世ダライ・ラマの文の仏訳が掲載されてます。このメッセージはチベット人民宛てですね。
翻訳してみます(なおチベット語→英語→仏語→猫屋的日本語なので、チベット語版読んだ方の意見を聞きたいところです、はい)。
原文は Dalaï-Lama.com の Statement of His Holiness the Dalai Lama to All Tibetans (4月6日)。
チベットのための“中道”、ダライ・ラマ
ル・モンド 2008年4月9日
この10年来私達は、ほぼチベッ全域で繰り広げられるデモンストレーションと抗議運動に直面し、さらにはいくつかの中国都市部で学生による運動も起こっています。これら怒りの爆発は、長すぎる期間にわたって抑えられてきチベット人の精神的そして肉体的不安と、チベット人民の権利の否定による深いルサンチマン、そして宗教自由の不在と中国政府による計画的な真実の歪曲の結果なのです。
チベット人民の平和運動抑圧に武器が使われ、多くの死者と負傷者と逮捕者が出たことに、私は悲しく同時に憂慮しております。悲劇的であり同時に悔悟すべきこの弾圧と苦悩は、感情を持つすべての人々の涙と共感を引き起こしました。この悲劇に対しては、私自信まったく無力であると感じます。この危機に命を落としたチベット人と、そして中国人のために祈るばかりです。
チベット全体における最近の抗議は、一握りの“反動分子”を除いたチベット人の多くが繁栄と幸福の中で生きているという中華人民共和国のプロパガンダを裏切るものです。これらの抗議は、チベット三省;U-Tsang, Kham, Amdo におけるチベット人が同じ願いと希望を持っていることを明らかにしています。同時にこれらの抗議は世界全体に対し、チベット問題がこれ以上無視できるものではないと示しました。
それは、“事実を元にして真実に至る”ことで、問題を解決すべきだと示しています。特筆すべきは、人民の利益のため命をかけるチベット人の勇敢と決意が、内の深い不安のなすものであって、それが彼らの希望の表現であることです。国際社会はそれを認識し、彼らの勇気ある行動を支持しました。チベット人としてのアイデンティティを失わず、現在の危機に忍耐と公正をもって対処した共産党チベット公務員および幹部たちの態度を、私は深く評価いたします。将来にこれら党内チベット幹部・公務員の、個人的利益の追求するのではなく、チベット共益を保護する目的のため、真なるチベット人民の心情を党上部層に伝え、チベット人民に対して客観的統治をなす努力を望みます。
中国政府のチベット人民に対する暴力的抑圧を終わらせるよう、現在、多くの大統領・国家元首・外務相・ノーベル受賞者、世界中の議会員と市民たちが政府に対して明確で強固なメッセージを送っています。互いに満足しうる解決の道をとるため、みなが中国政府を説得しようとしています。
非暴力原則を守る
かれらの努力がポジティヴな結果をもたらすよう、私達はチャンスをつくりださねばない。あらゆる手段がなされてはいるけれど、私たちの非暴力実践は守らねばなりません。中国政府は、私が最近起こった出来事を挑発し先導したという、虚偽の主張を流しました。これらの主張はいわれのないものです。問題の細心な調査のための独立し信頼しうる国際組織の設置を、私は数回にわたって呼びかけてきました。このような独立機関が、真実を明らかにしえると私は信じます。もし中華人民共和国が、その主張を裏付けるエレメントあるいは証拠を有するのであれば、いかに些細なものであっても、それを世界に向けて指し示すべきです。主張するばかりでは何にもならない。
チベットの将来については、私は中国という枠内での解決探求を決意しています。互いに有益な唯一の可能性である “中道;La voie du milieu/The Middle-Way”というアプローチに、私は1974年以来忠実でありました。 これは世界全体が知るところです。 “中道”とは、外交と国家防衛領域を除き、自己統治と自己決定権を有する真の人民地方自治を享受する行政機関によって、チベット人すべてが統治されることです。私は当初より、チベットに住むチベット人たちがチベットの未来を決定する権利があるのだと、主張してきました。
本年のオリンピック大会開催は、12億中国国民の大きな誇りであります。私は当初より、北京でのオリンピック開催に賛成しておりました。この点では私の意見は変わっておりません。チベット人は大会進行を妨げてはいけないと思います。チベット人の、権利と自由のための闘争はまったく正当なものでありますが、他方では、中国人の意識内に憎悪を生み出すような行為は、まったく無意味で不必要なものです。反対に、調和した社会建設のため、私達は信頼と尊厳を心に刻まなければならない。なぜなら、力と威嚇ではそこに行き着けないからです。
私たちの闘いは、中国人民に対してではなく、中国政府内の何人かに向けられたものです。そして同時に、私たちは、誤解を生み出したり、中国人民への挑発を引き起こすような何事をも、避けるよう努力せねばいけない。このような困難な状況にあっても、多くの中国知識人・作家・法律家が、中国本土でも外国でも、私たちの大義に賛同し、宣言を公表し記事を書くことで彼らの支持を表明しており、これ私たちの心に響くものです。(英語版から:世界中の中国人民に宛てた呼びかけを3月28日に発表しました。これを聞き読んでいただきたいと思います。)
現在のチベットでの状況が続くようなら、中国政府がさらに激しい力を用い、チベット人民に対する圧力を強めることを、危惧しています。私の持つ道徳的義務とチベット人民に対する責任から、チベット全土での抑圧中止とその警察および軍隊の引き上げを、中国政府に対し、数度におよび要求してきました。もしこの働きかけが成果をもたらすのであれば、私はチベット人民に対して、すべての抗議活動をやめるよう勧めます。
チベット以外の地で自由に生きるすべてのチベット朋友たちに、チベットで起こっている出来事に関しては慎重に発言するよう、強く勧めます。わずかにでも、暴力と見なされるような行動を、私たちはとるべきではない。明白な挑発に直面しても、私たちにとっての最も貴重で深い価値を、危険にさらしてはならない。非暴力の道を歩むことで、この闘いを私たちは勝ち取るのだと、確信しています。私たちが得たかつてない支持と友情が、何に根拠するのか理解するだけの理力を持たねばなりません。
現在のチベットがほぼ完璧に閉鎖され、いかなる国際メディアも許可されていない以上、私のメッセージがその住民にまで届く確信はありません。けれど、メディアと口コミのおかげで、多くがこのメッセージを受け取るよう、希望してやみません。
(英語訳版から:最後にもう一度、いかに状況が困難であろうが、非暴力の実践とこの道にためらうことのないよう、チベット人民に訴えます。)
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テンジン・ギャツォは、インド亡命チベット政府元首である第147世ダライ・ラマ。ジル・ベルトン/Gilles Berton による英語からの翻訳 © The Office of His Holiness the Dalaï-Lama
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後記:こうやって翻訳なんぞいたしてみますと、ダライ・ラマとチベットの人々が、アタクシも含めた多くの人々の共感を、何故に呼ぶのか、少なくとも部分的には理解できた。
まずわれらが世界でも、自由は次第に限定されつつあり、物質主義が幅を利かせ、金と権力と力ばかりが空間を満たし、心はまずます貧しくなるのだった。豊かさとは、実は人間自体であり、人間同士のつながり(社会)、つまり慈悲(愛)だとか信頼だとか、時間だとか単なる青い空(自然)だとか、なんだよね。慈悲(愛)は、自由のうえに立ち上がる。他者を押し付けての成功は、いったい何をもたらすのかという哲学的質問を、ダライ・ラマは問うておるのだよ(たぶん)。
なお、今日のTVルポルタージュ(fr2)見てたら、パリオリンピック聖火リレーで聖火は4・5回消されていたこと、伴走した青いジャージの人々は中国軍人であること、リレー行程とその変更はどちらも中国側が決定したこと、また各国カメラマンの乗ったキャラバンのいちカメラマンがプロ・チベット抗議団を録画中、中国カメラマンが本部に連絡、結局仏機動隊員が該当カメラマンをキャラバンから退去させたこと、などが分かった。サンフランシスコでは、聖火は約一時間倉庫に搬入され、結局バスで空港に向かいました。つぎはブエノアイレスでございます。
11区のアパートのいくつかの窓から、チベット国旗がつるされています。
ウイークエンドには、シャトレーでチベット国旗を肩からかけてるフランス人もちらほら。共感なのでしょう。
投稿情報: k | 2008-04-16 11:07
ドラノエさんは素敵だと思いました。
中国との経済関係を重視して(?)慎重な(?)サルコとは違い。
投稿情報: ねむりぐま | 2008-04-21 00:02
ドラノエは、ダライ・ラマと署名運動をして三年半の刑をくらった中国ネット人に、パリの名誉市民というタイトルを授与しました。サルコのほうは、中国でフランス・ボイコット運動が起きたんであわてて、特使(ラファラン含む、なんじゃこの選任は?)を2人北京に送りました。中国内部政治が何にも分かってない、あいつ。商売もそうだが、外交なんて太っ腹でかからなきゃいけないのに(アンゲラ姐を見よ!)、なんだあのあわて方は。
だいたい中国相手に金稼ごうとするんだったら弱みを見せちゃあいけないのよ。ド・ピルパンなみに、世界人権宣言とか歴史とか持ち出して煙に巻く器量はサルコにはない(学校で勉強してないもんぼくちゃん)。大勢いる身内顧問も、フランス語圏外を知らない。あれじゃあ、契約とっても支払いまで行きつかんだろうが。サルコ様が出てけば、世界中がハハーと頭下げると思ってる勘違いのマザコン小男、はっきり馬鹿にされてるのが分かってない。あーあ。ベトンクールと引き換えに、サルコをコロンビアのジャングルにクール宅急便で発送したいです。
投稿情報: 猫屋 | 2008-04-22 03:30