7月28日の記事を即訳しました。ガザの病院のエマージェンシーで働くMSFの女医さんとのチャットです。日本語としてのこなれは良くないですが、ご容赦ください。
A l'hôpital Al-Shifa de Gaza, « un patient sur deux qui arrive est déjà mort »
ガザ、アル・シファ病院、「担ぎ込まれる負傷者の2人に1人はすでに死んでいる」
ル・モンド 2014年7月28日
オードレイ・ギャリックが編集
セシル・ショッケはガザのアル・シファ病院で治療に当たる国境のない医師団(MSF)の緊急医;MSFは現地で唯一の国際医療NGOだ。彼女がル・モンドネット紙の読者とのチャットで、病院周辺が爆撃される「大変困難な」労働条件、いかに1日に150から200人の患者-半分は女性と子供-の治療をオーガナイズしているのかを語る。会話の数時間後、病院はミサイル攻撃にあっている。
マリアンヌ:アル・シファ病院の状況はどうなっているのですか?負傷者はどんどん増えているのですか?状況は日によって変化します。2日前の停戦時には病院で治療を受ける人の数は減りました。それで救急車は瓦礫の下敷きになった人々を救援しに行きました。その日の治療活動がどうなるのか前もって知ることはできません。
ドリス:平均して1日に何人の被害者を受け入れるのですか?日によります、停戦があるのかないのか。停戦時でなければ、日に150から200の患者数です。
リマ:被害者のうち女性と子供の比率は?
アデル:病院にやって来る子供たちの精神状態はどんなですか?
怪我人のだいたい半分は女性と子供です。子供たちは完全にショックを受けていて、トラウマ状態です。救急で、まったく無反応な子供を目にするより、子供が泣くのを聞くことは我々には安心の種です。女性たちは自分の中の苦難とトラウマを外化し押しのけるために叫びます。
カロッブ:病院で受け入れる活動家と市民の比率は?
誰が活動家で誰が市民なのかはわかりませんから正確な比率もわかりません。けれど、大方は市民と考えることができます、なぜなら我々の患者の半分は女性と子供なのですから。
マチュー:患者たちはあなたに何を語りますか?
私の診た患者は喋れない:コーマ状態にあるか、あるいは他の病院から気管挿管された状態で送られて来るから。
セリーヌ:治療は具体的にどのように行われますか?
緊急科はふたつのパートからなっています:救急医療と救急外科です。戦争時では外科がほぼすべての患者を受け入れます。緊急蘇生室では、生命の危険にさらされている最も重症な負傷者を受け入れます。患者は時として波のように続けてやってくるので、混乱となります。同時に複数の重傷患者を治療するのですから。
迅速であることが求められます。手早くひと目で診断を下し、最初にどの機能が危険にさらされているか、患者は手術室に送るべきなのか蘇生室に送るべきなのかをすぐさま判断しなければいけません。けれど、実際には病院に来る患者の2人に1人はすでに死んでいます。
サラダン:ガザでの負傷者は6000人と言われます。どのタイプの負傷なのか、またどのような重度ですか?
すべてのタイプとすべての重度です。公道での「単純な」自動車事故のように、爆撃から逃れようとする人々の「間接的」負傷もあります。たとえば子供たちの肩が外れたり、手首の骨折等の軽い怪我は、避難する時に親が強く子供の手を引いたからです。
反対に、もっとも重度な負傷は建物崩壊の下敷きになった人々の場合です。重度の頭蓋骨開放骨折、気胸あるいはヘモトラックス(ショック後、肺内に空気と血液がたまる)、消化器系の穿孔(猫注;あながあくこと)、切断、火傷。。。。
キャロップ:特に飲料水不足からくる衛生リスクはありますか?伝染病の心配は?
もちろん。きれいな水が手に入らないので、伝染病は危惧されます。今のところはありません。けれど考慮すべき問題です。
フランソワ:白燐弾と「メタル製矢」爆弾使用が報告されています。それらによる負傷者あるいは死者を確認しましたか?
いいえ、私自身はそのような禁止軍備による負傷は見ていません。
ジュリアン:ガザでの状況は盲目戦争/ブラインド・ワーと比べられますか?
大方の負傷者が市民である以上、これはブラインド・ワーということができます。
クリスティーヌ:医療スタッフと医薬品に関して、現場での医療リソースは同様なものでしょうか?
ソフィ:手術に当たって、充分な医療機材があるのでしょうか?
アル・シファ病院には充分な医療班-現地スタッフ、がいます。おおかたはさまざまな分野を専門とする外科医です。10の手術室がありますが、多発性外傷を扱える充分な設備があるのはひとつです。
クララ:どのようにして医療設備はガザまで届くのですか?麻酔薬や血液などの充分なストックはあるのでしょうか?
今のところ血液不足に直面はしていません。医療機材はMSFから来ていて、ガザに来る医者たちが少しずつ運んでいます。MSFは緊急注文をしなければなりませんでした。そしてそれをトラックに載せガザまで運びました。
ハイゼンベルグ:日々、一番の困難はなんでしょうか?
緊急蘇生室での一番の問題は医療スタッフ組織化のなさです。序列化できない。異なった専門の医者たちが1人の患者の治療に当たり、しばしば意見が異なり、これがよくないオーガニゼイションを招きます。それに加え、疲労と、医療スタッフのすべてがこの戦争によって苦しめられています- 皆、知り合いのだれかが犠牲者になっている。
ヤスミン:停電が問題になることはありませんか?影像機材はありますか?
スキャナーは24時間起動していて大変有効です。大変優秀なX線技師たちがおり、すばやくエコグラフィー検査を行っています。停電時は発電機がすぐに機能します。ガザ地区のほとんどに電力が通っていません。
ワキム:たくさんの遺体管理はどのようにしていますか?冷蔵室は充分にありますか?
遺族たちは埋葬するのが難しく、15ほどの場所しかないモルグはいっぱいです。
ションタル:医療関係者の労働コンディションはどうなっていますか?攻撃の対象になったことはありますか?
ジュリアン:ガザで働いていて、命の危険は感じますか?
我々は、いつ何が起きても不思議はないと知っています。【このチャットのすぐあとの7月28日午後アル・シファ病院はミサイルによって攻撃を受けている。】MSFはリスクを減らすため医療スタッフの移動を事務所と病院という最小限に減らしています。たとえば先週、MSFの車は2度攻撃から逃れました。砲撃は無差別で、何処にでも飛んできますし、我々のすぐそばにまで来ます。それは負傷者たちが病院に来ることを妨げます。
シリル:安全を考えて病院で眠っているのですか、あるいはガザに宿舎があるのですか?
MSF医療団にはふたつのチームがあって、夜と昼の治療を引き継いでいます。ひとチームはMSF事務所で眠り、夜勤チームは病院で眠ります。
メガンヌ:この状況をどんな風に生きていますか?増えるばかりの死者と負傷者の数に、無理力に感じることはありませんか?
ええ、自分たちがより役に立てるよう努めています。けれど、あのすべての人々、すでに死んでいたりすぐなくなる人々がやってくるのを目にするとフラストレーションがたまります。
アリ:どのようにガザ内部に入れたのですか?
ガザに入るのはとても難しい。イスラエルの許可が必要なのですが、これを得るために何日もかかります。許可が出たら国境を越えるのですが、これも大変難しいのです。なぜならいくつもチェックポイントがあって、そのたびに待つのです。個人的には、国境を越えるのに1時間半かけました。ジャーナリストの場合はMSFチームに比べ、より簡単です。
ナジーブ:ハマスのメンバーと関係はありますか?
病院は健康省の管轄にあります。我々はハマスと一切関係はありません。
ニナ:国際援助は充分だと思いますか?
それは答えるのが難しいです。なぜなら私はアル・シファ病院に留まっていたから。ガザのほかの病院では別の必要性があります。たとえば、Khan Younès 病院では血管外科医と顎顔面外科医が足りません。
多くの外国NGO医療関係者がいるのですか?
我々は2人の駐在赤十字外科医と一緒に緊急科で仕事をしています。それ以外では、MSFはガザで活動する唯一のNGOです。
エルワン:イスラエル医師が助けようとしているのを目にしたことはありますか?
いいえ、外国人医師とガザ医師だけです。
ミリエム:どうやったらあなた方を助けることができますか?
ドリス:ガザに医療援助を送ることはできますか?できるのならどうやってですか?
誰でもいつでもMSFに援助ができます。医療界の同僚も自分から外科器具を寄付してくれます。たとえば、一緒に働く外科医はきのうイタリアの同僚からの電話で、外科器具を寄付したいとの申し出を受けました。それに、ソーシャル・ネットワーク上で、この状況に対応して人々が動いているのがわかります。また、自分から救急科に手助けをしてくれる人々もいます。
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参考:ル・モンドによる:ガザの地理を理解するための地図
ご無沙汰でした。「リベラシオン」この2月から、大変な動きだったように日本でも報道されましたが、その後、現在どうなっているのか、まったくわかりません。そもそも新聞はまだ発行されているのですか?社屋はあるのですか?屋上はカフェにでもなってしまったのでしょうか?
投稿情報: alexis | 2014-08-04 08:24
お返事送れました。
リベはまだあるんですが、自分もあまり読んでないので内情はよくわかりませんw
ヌーベル・オプセルヴァタールもですが、プレス全体が経営難です。日本のように新聞宅配はほとんどないので、今のフランスで新聞・雑誌の経営はいわば「趣味」、というか慈善事業化しています。国家援助はあるんですが。
無料新聞とネットがあるので、自分もル・モンドとオプス購読はだいぶ前にやめてしまいました。
投稿情報: 猫屋 | 2014-08-05 23:22