"A Fukushima, les solutions mises en œuvre ne sont qu'un pis-aller"
「フクシマで行われている解決策は一時しのぎでしかない」
2013年8月21日 聞き手 ピエール・ル・イール
放射線防護を担当する原子力安全研究所(IRSN)副所長であるジェーローム・ジョリ氏が福島にある日本原発の- その貯蔵タンクから300トンの放射能水の漏洩が公表された- 状況を解読する。参考 : Fukushima : la dernière fuite de réservoir classée en "incident grave"
日本放射能規制委員会(ARN)は8月21日にフクシマ・プラントでの汚染水漏洩問題をレベル3の「深刻」なものだと発表しました。この漏洩の原因は何なのでしょうか?
ジェローム・ジョリ:2011年3月11日の地震と津波が引き起こしたフクシマ・カタストロフは、原発サイトの排水システム全体をもシャットダウンさせました。通常時このシステムは、地下水が原発地下階に流入しないように、原発が建てられた土地に流れる地下水とその上の建物とを隔離する機能を果たします。事故以来、この隔離機能がなくなった。そのため、2年半の間に浸透が現在のフクシマ最大の問題となりました。状況を理解するためには壊れた原子炉(1.2.3号基)冷却のため、現在のところ時間当たり5 m3 の真水が一基あたり注入されていることを知らなければなりません。毎日、このように数百トンの水が炉の中を循環しているわけです。けれど、これは冷却水の「開かれた」循環なのです:3基の原子炉の心臓部は溶解し、圧力容器と格納容器に穴を開け、事故の後の爆発でさらに弱って、密閉状態にはないのです。 原子炉に注入された水は、そこで放射能成分を帯び、次に技術的ギャラリー(回廊)を流れ、タービン建屋の地下に流れ込むわけです。
この水が地下水に浸潤するのを防ぐために、テプコ(東京電力;原発サイト管理者)は水をポンプし続けざるを得ず、少なくとも一日あたり300m3水を除染し、冷却システムに再注入してきました。つまり、一日あたり残りの400m3の水が数百の巨大なタンクにストックされ、原発サイトのあちこちに置いてあるわけです。
そのうちひとつのタンクから漏れた汚染水量は、日本のオーソリティによると約300トンです。
この汚染水は、日本政府が8月7日に発表した、太平洋に絶え間なく流出している一日あたり300トンの水よりさらに放射能汚染されているのですか?
原則的にはノンです。その水にはおそらく、溶けた核燃料から水が剥ぎ取った異なった放射性核種、特に放射性のセシウム・トリチウム・コバルト・ストロンチウムが含まれるはずです。けれど、建築物の地下から流出する水;ここからポンプでくみ出し除染後再循環されているのですが-、この水全体の汚染度を超えることはないはずです。汚染水問題は、原発サイト全体レベルの難問です。
では、なぜ核監視委員会は、2011年3月以来始めてこの深刻な問題を公表したのですか?
この漏洩が危険レベル3と判断されたのは、汚染水を遮断するはずの二つのバリアーに欠陥が見つかったからです。まず、フクシマ原発敷地の西部に設置された貯蔵タンクの欠陥。次にこのタンク群を囲う、流出を防ぐための囲い自体の欠陥です。つまり、二重の欠陥があったと言うわけです。
数週間前からのこれら技術的説明以外にも、ARN(2012年に厳しい批判を受けた放射能安全委員会に代わる独立した監査機関)および日本国首相安倍晋三は、テプコに圧力を加え、汚染水問題に対して明解で永続的解答を要求しています。ARN責任者の1人は、テプコのみにはこの問題を解決する能力はないと宣言している。この点から、危機管理透明性への意図がくみ取れるのかも知れません。
健康被害リスクには何がありますか?
汚染水の太平洋流出自体は、大きな健康被害リスクではないでしょう。これは、2011年春に空中と海洋に放出された巨大な汚染に比べれば小さなものです。セシウム137;もっとも頑固な核種なのですが、その放出量は空中で約600万億ベクレル、太平洋へは1700万億ベクレルと考えられており、これは歴史上最大の海中放射能汚染です。他方、地上の汚染物質も雨により洗い落とされ海に流れますから、大洋は現在でも多量の放射能、数100万x100万ベクレルと思われる量を受け入れているのです。(訳者注;最後の数字は計算確認していません)
したがって、比較としては現在の流出による海洋汚染は限定されたものです。大洋の希釈能力を考えると、可能である環境への即時のインパクトは原発付近海域に留まると考えられます。湾内とその近縁での検査は今のところ放射能度の高まりを示していません。
しかし、状況は憂慮すべきものです。現在テプコによって行われている対策は一時しのぎでしかありません。これは長続きしうるものではないのです。
この汚染水の問題の解決方法は何なのでしょうか?
現時点でのフクシマサイト内汚染水ストック許容量は約30万m3で、これは数ヵ月後には45万m3まで増やす必要があります。この量はこれからも制限なく増えるでしょう。この汚染水は、廃水浄水設備を建設しサイト内で処理した後に海洋に放出されるべきです。この放出を枠組むには許可がいるでしょうし、それに必要とされるのは、安全に関する情報ファイル作成と、処理有効性の証明と、リスク評価、影響に関する研究、監視...などです。
即時的には、テプコはポンプ装置の高さの地中に化学樹脂を注入し、地下水が海に流れないようバリケードを造っています。けれどこのバリケードは山から海に流れる地下水の水位を上げる要因にもなっており、必然的に、汚染水が地下水に混ざらないようにするためには、冷却循環サイクルから漏れるより多くの水をつねにポンプで吸い上げざるをえません。これには終わりがありません。
またテプコは、原発サイト山側に1ダースほどの井戸を掘って水をくみ上げ地下水水位を下げ、そうして建築物への浸食を食い止めようとしています。最終的には、これらの水も同様に海にたどり着くでしょうし、結局のところ海洋への放出許可が必要となります。
他方、政府は別の解決案を検討しています。原発周辺の土壌を凍結する、つまり液体窒素の注入で永久凍土層に変化させようというものです。これは複雑なオプションで、したがって有効かつ危険性がないと証明される必要があります。
いずれの場合においても、困難なオペレーションであり、すべての関連機関の間の協議なしでは行い得ないものです。
Pierre Le Hir
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21日掲載記事なので、すでに古くなった情報や欠けている情報もあるかと思います。翻訳について、あるいは科学的語彙や理解などに間違いがありましたら、コメント欄でお知らせいただくと幸いです。
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