ニコラ・サルコジのバカロレア点数
リベラシオンの紙版読んでたら、読者の投書欄にこんなのがあった。
5月7日のリベにおいて、「ニコラ・サルコジはバカロレアをTrès bien という評価つきで受かっている」と、エンジニアのMartial (猫屋:匿名か)はインタヴューに答えている。誰がこんなつくり話を吹き込んだのだ!私は1973年、将来の仏国大統領が受けたバカロレア・シリーズBを、パリ16区のモリエール高校にて採点した試験官チームのメンバーだった。候補者ナンバー18917の筆記試験結果は極めてお粗末なもので(フランス語;7/20 数学;8/20 哲学;9/20)、mention (秀あるいは優)なしバカロレア合格のために、口頭での追試を受けている。口頭試験官に、自分は早起き派で68年5月運動の犠牲者だと信じ込ませる才能がすでにあったのかもしれない。
------Jean - Bernard Gonzalez 、教員退職者
実名で新聞に載ったんだから、これは事実なんだろう。しかし情けない成績である。サルコジのスローガンの「今までと違う!」政治といえば、まあそうだな。(日本のように、何はなくとも親の地元票を受け継げるシステムがないフランスでは、仏語が20点満点の7点という成績で、仏国大統領になってしまう、というのは前代未聞である。
何回でも reborn / 再生可能なサルコジなのであるから、仏語の筆記など問題ではないのかもしれない。サルコジの一番困る問題はカルチャー一般の欠如である。教養である。ハイソな(17区とヌイイ)界隈の醜いアヒルの子だったサルコジは、自己に欠落すると信じる価値を、社会的および経済的成功で補おうとハイパー努力をしたのだろうが、実は自分にもっとも欠落しているのが(本来の意味での)教養であることに思いが及ばない。
社会・歴史・人間に対する洞察と確立された思想に基づく政治リアリズムこそ、マキャべリが著書プリンスの中で展開した君子の徳ではなかったか。いや、国民はその徳に見合った元首をもつだろう、というのであれば、フランスも「美しい国」連盟の衛星国に仲間入りしただけのことなのか。 いやいや、抵抗運動は、不服従運動は、続くのだ。
夕食(とんかつ+カブ味噌汁)後追記:書き忘れてた。サルコジ・ノーカルチャー外交批判
新大統領がハイパーぶりを120パーセント全開起動したエリゼ宮就任の日夕方、サルコは待望の大統領ジェットでベルリンに飛び、メルケル独首相と会談、公式夕食ののち即帰国したわけなんですね。
ヴーヴォワイエ(あなた、を使う通常外交的話法)のメルケル氏に対してサルコジはテュトワイエ(お前・君的くだけた話法)。“アンゲラ!”とビズー(頬キス)とハグ(抱きつき)で、我らが恥ずかしい新大統領は、仏独友好の意を表しちゃった。ため息。
思い出していただきたいのは、シラクの外交登録商標だった baisemains(ベーズマン)、つまりご婦人の手の甲にする接吻である。たとえば国連本部でも、シラクはアナン国連理事長にビーズ(頬キス)やって政治効果を狙ってましたね。サルコジのメルケル抱きつき作戦は、仏国内選挙民に向けた、サルコ式新外交披露だったんだろうけど、メルケル首相はドイツ国元首、イタリアの駆け出し女優でもなんでもないわけで、やはりお里が知れるとしか言いようはない。
なお、メルケル首相(猫注;東ドイツ出身、ロシア語堪能)は先日ロシアで行われたプーチン(猫注;元KGBドレスデン駐在、ドイツ語流暢)との会談後の共同記者会見で、ロシア政府による反政府活動圧迫を批判、“ロシア国民はすぐさま街に出て反対意見を述べるべし”と発言、当然ロシアTVはこの発言をカットして放映したようですが、骨太アンゲラさすがです。
えっと、本論に戻りましょう。ベルリンにおけるサルコジ(猫注;母国語7点)外交センスはき違い度は、仏外交関係者の血圧をあげさせる結果となったわけですが、もと社会党所属で国境のない医師団設立者クシュネールが外相として任命され、医者が本業で英語のしゃべれない悪評高いドストブラジの後継者となったため、外交筋はほっと一息、というところでしょう。あーあ。
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アレーグルのバカ
クロード・アレーグルとは、地質化学者にして元仏国首相ジョスパンの大学時代の寮友。その関係からジョスパン内閣では教育相を務めたが、マンモス(仏教育組織)を減量させると宣言し教育システム大幅改革を目指すも、大学人・教育者たちの総スカンをくらった。寮友ジョスパン突然の引退後は、社会党内でも冷や飯食いのサモシイサビシイ境遇を嘆いていたわけ。おまけに教育省での補佐官はセゴレンヌ・ロワイヤルで、一匹狼(熊?)的行動習性のアレーグルはビシバシ・ロワイヤルとソリが合わなかったという経緯がある。
このアレーグル先生は、人間産業経済自動車エアコン活動の結果としての地球温暖化責任テーゼに反対してみたりで、この先生のスタンド・プレイぶりには困惑する研究者界同業者も多い。
さて、この“私がフランスを変えないで、誰がやるんだ”先生、仏大統領選挙戦まっただなかに、サルコジ選挙事務所の裏口からコソコソ出てくるところを、TVカメラで撮られちゃった。
後になって、あれはサルコジに呼ばれたから、フランス大学改革に関する意見しにいった、と言い訳してたけど、要はあの人“セゴレンヌ・ロワイヤルの足を引っ張る社会党のマッチョおじさんグループ”の一人で、サルコ事務所隠密訪問は、政権内にポストください運動であったのだろうというのが、一般(ブロガー)人の意見だ。
しかし、アレーグル先生の政治的科学者見解は、核エネルギー重視、OGM (英語ではGMOね)賛成、フランスの主流科学者からなる地球温暖対策会議にも参加しないなど、世論とは(ある意味システマチックに)まったく逆の流れなわけで、とにかく総選挙に勝つため、世論受けだけを狙ったフィヨン内閣サルコジ様のチームには空きポストがあるわけもなく、熱の入った就職活動は無駄に終わっている。やれやれ。
と思いきや、なんだこのマンモス先生。リベだのTVだのにやたら出現、ロワイヤル・オランドバッシングに精をだしている。あーあ。サルコジ御用達TVメディアで、社会党ラべリングのまま社会党バッシングしないでくれ、おっさん。TVと無料新聞しか情報源がない人間は、おっさんの言うことそのまま信じちゃうよ。こういう人物のおかげで、サルコジ支持アンケート調査結果が65パーセントになっちゃうわけですよ。困ったもんだ。