2007年春の仏大統領選に向けて、昨日社会党内予備選挙が行われたわけだ。
ロワイヤル、ファビウス、ストラス・カンという3人の候補による選挙結果は、61パーセントという高い数字でセゴレンヌ・ロワイヤルが一等賞。結局、二次選挙はなくセゴレンヌがきれいにイッポンをとって、来年の選挙で(サルコジと推定される)UMP候補に対峙することになった。以下はル・モンド関連記事、いろいろあるんだがひとつだけ。「セゴレンヌ・ロワイアル“あしたのフランスを想像して”欲しいと国民に呼びかける」とでもなるかな、このタイトル。
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こうすっきり決まるとは思わなかったが、なにやら気分がよろしい。来年の大統領選をめぐっては、右も左も、早くからナンデモありのチキンレースで、社会党得意のマッチョ雄たけびまで出たようだし、いずれにしろアタクシには選挙権がない。しかしハタから観戦しているだけでも見えてくるものはある。
社会党左派を謳うファビウスのスーツはいつも見事に決まっていて、あれではいくら失業者と握手して見せても説得力がない。おまけにあの人、頭はいいんだが肝心な時にバカな選択をする。
ストラス・カン(DSK)は政治家としての手腕はあるし、もともと経済学の先生だから経済界にも目線が効くわけだけれど、なんとも。フィジカルに言ってなんだかマフィアのオヤビンか悪徳弁護士ってな雰囲気になってて、あれじゃダメだよ。整形しろとまでは言わないが体重もう10キロ減らして歯ぐらい治したってよかっただろう。どうせ水ものなんだから、政治は。
さて、社会党予備選挙討論会とか横目で見て、「ロワイヤル支持!」などと言ってたサルコジだが、要するに、わかりやすいのがとりえの(同時にそれが欠点の)このハイパーアクティヴ壊し屋サルコ、社会党分裂を計算して、自分がロワイヤル持ち上げりゃ、サルコ・アレルギー社会党員はセゴレンヌを避ける、と見ていたわけだろう。はっきり言って対セゴレンヌではサルコに勝ち目はあまり(と暫定的に言っておくが)ない。それは嗅覚の強いサルコ自身が一番知っているはずだ。大体、セゴレンヌの方が背が高い。
最近サルコは10cm上げ底革靴を採用し始めたようだが(ネタ元 Combat Pour l'Elysée;最高なり)、いやべつに彼の背が低いことが問題じゃない。問題は背が低いことをネに持って権力に上り詰めたいという根性が問題なんだよ。TVに出たくてわざわざワシントンまで出かけ、ブッシュと握手して帰ってくるという政局の読めなさが問題なのだよね。壊すことでしか自己主張を出来ない男が一国の大統領になってはいけないのである。国が壊れる。
したがってアタクシは生暖かくセゴレンヌを支持するのであった。
さて、シラク。1981年の大統領選挙戦時にジスカール政権の首相であったシラクは、ジスカール再選は自分のキャリアー妨害になると判断、当時の保守党RP内でミッテランに投票するよう暗に指示している。そしてミッテランが勝利するわけだが、今回も、かつてのサルコの裏切りを忘れていないシラクは、サルコジ大統領可能性阻止のためにもういちど立候補するのではないか、とまで噂されているわけだ。
なお、日本での秘密口座の件をエリゼ宮はどこまでも否定しているが、どうなるのか。以下は関連記事、今週のキャナール・アンシェネ記事が元ネタ。なお本文で、Shunkan Postとなっているのはキャナール・アンシャネの間違いをル・モンドがそのまま拾ってるからです。問題の本はコレ。(シラク秘密口座は、sowa銀行内部の人間からの情報が元になってるんだが、エリゼサイドは、日本の大衆週刊誌の信頼できない記事が火元と問題を回避。しかし在日本ジャーナリストが週間ポストのアーカイブをいくらさがしても、問題記事は見つからなかった、、という流れ)。実はこの話が最初に持ち上がりそうになったのが2002年の大統領選の直前であります。)
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ラテン気が強いはずで、格好だけはマッチョなフランスなんだが、歴史の転機には何故か女性が現れる、ってのがある。聖ジュヌヴィエーヴ、ジャンヌ・ダルク、あとコミューンのルイーズ・ミシェル(渋谷ステイションを歌うロック・グループ、ルイーズ・アタックの名は彼女から来ている)。
そういった“共同な記憶”みたいなものがあって、そこにドイツのアンジー、USの(もしかしたらの)ヒラリーといった政治家達の“現在性”が加味されて、同時にマッチョ信仰の重みにイヤケがさしたフランスは、やはり一種の“国母、というよりもフランスのママン”を欲してるんじゃあないか、と思うわけです。とくに2002年大恥大統領選、欧州憲法投票、バンリュウ騒動、そしてCPEのあとでは。
結局、オプスからリベに転職しそうなロラン・ジョフランもセゴレンヌと同じ54歳だ。世代交代ですよね。
翌日追記:クーリエから、期限付きと思われますが外国紙の反応。