「猫にも分かる福島第1」 これは猫屋よりもっと分かってない友人に向けたものなので、猫屋より分かってる人は心臓に悪いかもしれないし、ちゃんとは読まないように。
CNICでレクチャーし続けてる、東芝で原子炉格納容器の危険耐久度を研究していた後藤さんによると(って、これは猫屋理解なのですが)、チェルノのように燃料がバババっと核分裂連鎖を起こし、大きな爆発を起こすという可能性は(0ではないにしろ)かなり低い。
でも、すでに炉心はかなりダメージを受けてメルト(溶解)してると想定され(猫注:だからジルコニウムは原子炉の外で検出された)、ジルコニウムが水と接触して何回も水素爆発を起こした。今恐れられているのは、水位がさがって熱を発生する燃料とその他の周囲金属が混合したブツ(=溶解デブリ、とてもとても熱い)が圧力容器(鋼鉄の壁16cm)破損を起こし、次に格納容器の底を痛め格納容器の下にあるコンクリート(あるいは水)にぶつかって大爆発すること。
(猫注;ジルコニウムは、コバルト各種の集合ででできたチョコベビーのような個体を連ねた長い燃料棒を囲む外筒の金属;説明も長いなあ、、)
えっと、猫屋理解を続けると、スリーマイル・アイランドの時はメルトした溶解デブリが格納容器底部を損傷し始めたが、メルトダウン寸前に冷却に成功、それ以上の被害は免れた。なお、元京都大原子炉研究所の海老沢徹さん(CNIC29日ヴィデオ2の1時間20分頃から登場)によると、スリーマイルの格納容器は、近くに飛行場があるため飛行機が上に落ちても耐えられる強度設計になってたそうだ。
で、原子力3原則はとにかく「止める・冷やす・閉じ込める」。火力発電所では、燃やしてる燃料(天然ガス・石炭)を止めさえすれば発電活動は止まる。だが、原子燃料というのは(制御棒で核分裂を止めても)何時までも巨大な熱を発し続けるから、それに対応する膨大な量の冷却水で冷却し続ける必要がある。だが、福島第1では地震で電源が落ち冷却装置が止まった。非常用ディーゼル電源もやられて動かなかった。格納容器上部横にある「使い済み燃料棒」プールへの水供給も止まった。残った水も熱で蒸発し、使い済み燃料も水がなければ発熱を続ける。。。
しかたないので近くにある海水をかけた。海水では塩が溜まって器材やバルブを痛め、容器などの表面に塩の膜を作って冷却しづらくなったりするはずだけど、とにかく冷やさなきゃ圧力釜が破裂する。同様な理由でベントも行われた。ベントとは圧力釜の弁から圧力を逃がすこと:格納容器上部のベントはドライウェルベント、下部のはウェットウェルベント。ドライは圧力抑制プールを通さないで、放射性物質を含む蒸気が直接おもてに出るが、圧力釜爆発よりはまし。参考アサヒ3月14日:甘い想定、頼った「最終手段」 福島第一原発事故 ←猫:これはウェットウェルなのかなあ。
別棟、タービン室での溜まった放射能度高汚水:これでショートブーツを履いた作業員2名がやけどを負ったんだが、この放射能汚染水は、原子炉格納容器とタービン室をつなぐ多数の配管の一部が破損、流失したんじゃないかと考えられる。あるいは格納容器上部のふた部パッキングからの漏れの可能性もあるか。。。
中性子:これは難しい。猫屋お手上げテーマだが、海老沢さんの説明によると、廃棄燃料輸送の再にも周囲にかなりの中性子が検出されてる。プルトニウム:これもお手上げ。ただ分かるのは、プルトニウムは第3号機で使われるMOX燃料以外に、使用されたウラニウムからも出るということ。追記:プルトニウムが原子炉外部で検出されたということは、燃料パレット(棒)破損の結果だろう。
で、福島第1周辺5箇所でプルトが検出された。プルトは重いので蒸気化して遠くまで飛んでくことはないが、地面に残る。同じく京大原子炉研の小出さん形容では、「人間が作り出した最大級の毒物」。なおMOXをデリバーしたアレヴァは、当社MOX搬入は最近だから「使い済み燃料プール」にはないはず、と発表してた(付け加えるとアレヴァから福島第1に出向していた5人だったかの社員は、地震後待避した模様)。
話は脱線しますが、かつて華々しく行われていた原・水爆実験で、毎回かなりな量の各種放射線が出たはずだけど、これらの量をトレースする研究結果とかないんだろうか、知りたいもんです。1・2年前に原水爆実験マッピング・グラフィックを見た記憶がある:探してみよう。
これから。やっと東電は少なくとも1・2・3・4号機廃炉を考えてると発表したようですが、決断・発表遅すぎ。地震直後、電気系がいかれた時点で炉心損傷は想像できたと、後藤さんは言う。その時点ですぐに避難および近隣住民によう素剤配布するべきだったんだろう。(関係ない話だが、チェルノブイリでは、2時間で4万人が一挙に避難したそうだ)
廃炉といっても簡単じゃない。冷却を続けながら、三原則の最後「閉じ込める」をやらなあかん。同時に、汚染されたたまり水、器材、とにかく散乱したあらゆるものを回収し密閉・廃棄しなきゃいけない。広い地域にわたる汚れた土壌の処理問題もある。避難民・被災者のケアと移住先や仕事の問題もある。作業に当たる人員確保・安全確保もある。汚れた水・土壌・破壊物をどこに持ってくかという話も出てくるし、もちろん海水放射能汚染、大気放射能汚染もあるし++。。。でも、現時点でのプライオリティNo1はブツの処理。
チェルノブイリでは、25年後の今でも4トンにわたる放射性物質が内部で高い放射能を出し続けており、サルコファージュ(石棺)の痛みも激しい。現在サイトを遮蔽するシェルター建設が進められている。
福島第1の4原子炉を、今のまま鋼鉄とセメントで固めることができるとしても、熱は出続けるし、放射能物質も出続ける。まずは炉と使用済み燃料プールを充分に冷却し続け、同時に原子炉を閉じ込める強固なサルコファージュを作り、棺をかぶせるのはそのあとの話になるんだろう。充分に冷やすだけで2・3年かかるとか、どこかで読んだ。
以上、「猫にも分かる福島第1」の話おしまい。おそまつ。
文献というか映像献は主にCNIC、それと国内外各種プレス・関連サイト・ブログ記事など。
参考;CNIC 3月29日福島原発で今なにが起きているのか ←一般人にも公開されたこの説明会のヴィデオ3本あり計約2時間半。ヴィデオ2の1時間20分目ぐらいに海老沢徹さん説明が始まってる。なお、(かなり怒ってたなあの)後藤さんが用意したパワ・ポイントPDF参照のこと:福島第一原発事故 - 炉心溶解・原子炉破損・格納容器破損 、CNICがウェブ発信した後藤さんと田中さん、小倉さん参加ヴィデオは(ブログ書きながら、とか他記事読みながらですが)ほぼ拝見しました。
仏語ですが、ル・モンドの記者Pierre Le Hir と読者とのチャットでできたQ&A 記事も参考になる:Fukushima : "La menace nucléaire perdurera sur le long terme" ←訳そうかと思ったけど、長いのでアキラメました。
下はグーグル・ヴィデオから。海老沢さんも所属していた京都大学原子炉研究所の研究者である、小出さんと今中さんを追ったルポルタージュ番組です:スポンサーがおりてTV未放映とか。タイトルは、なぜ警告を続けるのか〜京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち〜
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と、字ばっかり書いて疲れたので、検閲された系音楽ヴィデオ。1988年、契約会社東芝EMIからクレームかかってアルバムリリースできなかったRCサクセション「カバーズ」から、(the Who 系)サマ・タイム・ブルースとラブミー・テンダーのライヴ版:1984年に日本脱出した猫屋はこの話知らなかった:忌野清志郎、古井戸とも若いですねえ。なお、音響レベルにお気をつけください。
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付け加えたかったリンク集は後日:アッラ・アクバアル。
こんにちわ。
今日は昼間うららかな陽気でしたが、今はすとんと温度が下がりました。
福島がフクシマになりつつあることに心が痛いです。
アレバの女帝が登場しましたが、ともあれこれから長いこと猫も忍耐をためされるのだと思います。
サルコジが立ち寄って「問題はあくまで津波だったのである。炉心停止には成功した。とにかくCO2対策にはやはり原子力」とか、嗚呼という感じです。
日本ではシリアスなシリア情勢とかがあまり話題にならないのが、かえって気になります。
そちら方面の猫にも分かるシリーズ期待しております。
投稿情報: 神戸の猫店 | 2011-03-31 13:01