2008年1月のソクジェン(ソシエテ・ジェニアルジェネラル)内の不正取引事件でジェローム・ケルヴィエルに10月5日下された判決は、懲役5年(執行猶予2年)つまり実刑3年と、ななな、なんと49億ユーロの損害賠償。ケルヴィエルは上告するようで、次の裁判は一年後だそうだ。ソクジェンを解雇された後、(金融世界では働けないため)現在、コンピュータ系コンサルタントとして働いている33歳のケルヴィエルの月給は2300ユーロで、賠償金を払いきるには177000年かかるのだそうである(多分金利は計算されてないはずと思う)。なんとも。
禁固150年というねずみ講のマードックへの判決といい勝負であるよね。銀行・投信屋さんの世界はメガロマニアックなのだ。0が多すぎるというのは健康によろしくない。
かつてシンガポールのベーリング銀行で先物での不正取引をしていたニック・リーソンは、阪神大地震でアジア・マーケットの流れが急変したおり、巨大な赤字を引き起こして、ベーリングを破綻に陥れた。
ケルヴィエルの場合も社内規定額をはるかに越える金額をオプション市場に賭け、2008年はじめの市場の流れの急変に乗り切れず、損害額が膨大に膨れ上がったところで、不正が表ざたになった。ただ、リーソンが不正取引で得ていたゲインを自分の口座に流していたのに対して、ケルヴィエルはソクジェンからの給料以外には(巨額ボーナスを期待していたとしても)一ユーロたりとも私腹化していないところが違っている。
さて、損害賠償金の49億ユーロはソクジェンがケルヴィエルの不正取引でこうむった損害額に相当するのだが、昨日土曜にラジオ、ユーロップ1が、ソクジェンはこの49億を“緊急時における損害”として2008年の会計収支から除外し、結果法人税を17億ユーロ節約していたとすっぱ抜いた。会計法的には、この“減税”には合理性があるかも知れないが、ソクジェンは2008年の銀行システミック危機の際には国家から大幅な援助金を受けながら、その後上部管理職・トレーダーへの大型ボーナス支給も再開してるから、この“減税”がもたらすモラル的損害は、ソクジェン、あるいはメガバンク全体にとっての信用に関して言えば、かなり大きなダメージになるかもしれない。
ル・モンドの記事、ケルヴィエルの弁護士メツネールのコメント:Affaire Kerviel : la Société générale "a trompé le tribunal"
なお、7日木曜の放映だけど、C dans l'air が昨今にはめずらしく面白かった。ジュリスト、経済学者と裁判を追っかけてたジャーナリスト、それからプロ・トレーダーがそれぞれの立場からコメントしている。
L’homme qui doit 5 milliards ←(黒画面の下のほうのシルバーライト使わないのボタンを押すように)
**
えっと、こっちはおんなじ経済系でもなんと哲学がらみです。
闘う経済学者(冗談です)フレデリック・ロルドンが9月に新刊をだした。タイトルは Capitalisme, désir et servitude - Marx et Spinoza /Fréderic Lordon
つまり《資本主義、欲望と隷属-マルクスとスピノザ》でいいのかな。。。なんだかステキな響きですね。19世紀のマルクスの勘違いを17世紀のスピノザの語彙と思想を持ちいて(ドゥルーズとブルデューで味付けしながら)21世紀的プロトタイプに再構築しちゃってネオリベ・マネージメントを分析批判するというタイソウな構想の本である。12ユーロ。
ロルドンの文章はいくつか日本版ディプロで翻訳されてますが(ご苦労サンです)、この若い(つまり猫屋よりは若いという意;40代後半かという)CNRS経済学研究者の軽い口調とウィットがなかなか翻訳では出てこないのが残念(←でも時々見受けるクルグマン教授の崩れすぎ翻訳文的な軽さではないよ)。
で、ネット版Arrêt sur image で、仏語の先生にして演劇もやってるジュディット・ベールナールがロルドン先生にこの本について聞き出している。今のところ無料なようなので、時間ある仏語使いの方々はトライすべし。一時間半あります。かなりスリリングで楽しい脳みそ体操になるのです。
Lordon et le capitalisme "waoow", d@ns le texte Ou : le néo-libéralisme expliqué par l'angle alpha
***
きのうは《fx/貨幣戦争》について書き始めたんだけど、やたら長くなるばかりでまとまらない。まずはこのふたつクリップのみでアップしときます。
コメント