もちろんカンヌなんぞには出向かなかったので、プレス読んだだけで決めた見るべし映画リストです。まあ、映画祭が終わって久しいわけですが、自分用にメモ。
1. パルム・ドール受賞のタイの監督アピチャッポン・ウィーラセタクンの「LUNG BOONMEE RALUEK CHAT /ONCLE BOONMEE CELUI QUI SE SOUVIENT DE SES VIES ANTERIEURES」 仏語訳のタイトルを直訳いたしますと『前世の命を思い起こすボンミー親父』となります。いつか紹介したデュラス原作の小説をユペール主演で映画化した『太平洋の防波堤』に描かれていた時間空間の延長なのかもしれない(見ないとなんとも言えませんが)。あの湿気と虫さんが一杯のジャングルに住む、生者と死者と動物と植物と聖者の話のようです。ガルシア・マルケスの語った魚の振ってくる話なんかに似てるのかも。。。いや、分からん。こりゃ見てみたい。
パルム・ドールもらわなかったら、絶対埋もれてた作品です:ティム・バートン(アタクシこの人大苦手)が審査委員長でよかったのか。
2. グザヴィエ・ボーヴォワのDES HOMMES ET DES DIEUX/ 男たちと神たち。現実に起こったアルジェリアでの修道僧殺害事件を元にボーヴォワが作った映画です。8人の僧は、危険がやってくることを知りながら僧院を去らないと言う決断を、長い討論とメディテイションの末決める。(だが、事件を知る私たちは僧たちは殺害され、のちに彼らの首だけが発見されることを知っている;あとの体は見つかっていないし、実際の殺害者が誰だったのかも分かっていない。)
アルジェリアの山岳地区で、ある意味『世を捨てて』祈りに生きる僧院での暮らし(映画Grand Silence を思い起こす)と、その“静寂”を襲う暴力に関する映画。僧の一人を演じるランベール・ウィルソンが、モロッコでの撮影期間中、他の修道僧役の同僚たち(そして撮影チーム)と、共同生活をし、祈りを歌い上げて行くうちに、一種の“聖的”一体感を共有することができた、みたいなことをインタヴューで言っていた。この映画に価値があるとしたら、この点が重要なんだと思う。
宗教も、少なくともアタクシにとってはひとつのフォルムでしかない。それは、メタフォーと言ってもいいのかもしれない。霊性、あるいは精神性、あるいは超越、あるいはまあなんでもいいんだけど、かつてのようにそれは宗教の形をとる場合もあるし、ほかのフォルムをとる場合もある。昔は文学もその場を占めていた。今でも、そういった場所は可能なのだと思う。持続的ではなくても、単発としてのゲリラ戦にも似て、、、そう、たとえば、映画の中とかね。
なお、当映画はカンヌで大賞を取った。
3. いわずと知れたジャン-リュック・ゴダールのFilm Socialisme/映画社会主義。ゴダールの映画を見なくなって久しい。でもこれは見ることに決めた。彼ももう79歳になったのだそうだ。ゴダールは(金銭問題から)スイスでの自分の仕事場、膨大な書籍・フイルムコレクション等を手放したと言う。なんたる頑固親父。だが、今になってこの頑固親父の言うことが、すこしだけだが、分かった気がする。ああ、ゴダール。 4. 審査員賞を取ったのが、チャド生まれののMahamat-Saleh HAROUN 監督によるUN HOMME QUI CRIE / 叫ぶ男。チャドの一流ホテルで水泳インストラクターを務めていたアダムは、ホテルが中国人に買い取られ職を失う(その後任は自分の息子だ)。かつてチャンピオンだった彼は、職を求め内戦化のチャドを回る。 監督はどこかのインタヴューで、映画を作ると言うことは、みんなで食事を作ってもっと大勢のみんなにふるまうみたいなもんなんだ、と言っていた。以下のヴィデオはアルテのインタヴュー。なおこの映画の音楽担当がかつて当ブログで紹介した、ワジス・ディオップ氏。
かつて霊がすんでいた森林も破壊された。アフリカは旱魃と洪水と内戦に苦しんでいる。でも、たとえば東京のホルモン焼き屋カウンターとかの、都
会の隅にもまだ本当の闇が残っているのかもしれない。 そして、それは、諏訪大社で見た、月の光に対応しているのだと思う。
5. こちらは演出賞を取ったフランスのTOURNEE。両親がル・モンドとリベの新聞記者だったというマチュ・アマルリックが監督および主演をこなしています。話は、元フランスのtv界で仕事をしていたが、わけあって米国に渡りニュー・ブルレスクという、まあ手早く言えば女性向けオールドファッション・ヌードショウのプロモーターになった主人公が、米国の美女たちとひとりの美男とともに母国にて巡業するというもの。踊りと笑いと涙と言う、クラシックなテーマを、アマルリックがメランコリックに料理している(らしい)。ああ、フェリーニ。映画とはひとつの国なんだよ、君。
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わーありがとうございます♪
カンヌ速報はあちこちのサイトで拾ってたんですけど、コムズカシイ映画が多いのか単に私が読めないだけなのか、さっぱりわかってなかったので嬉しいです。日本で(というより京都で)上映されるといいのになー渋い小作品をかける館があまりないからなあ。アマルリックの映画、是非みたいです!大好き♪
いつかこちらでご紹介のあったLe Concert、『オーケストラ!』という邦題で今かかっていますが、入りが悪いみたいで昼間2回の上映のみで、それももうすぐ終わりそう……大人が見に行ける時間にやってよって感じです。6月第1週までやってますように!
投稿情報: midi | 2010-05-28 07:41
midi 氏、
どもどーも。
なんか今年のカンヌはあんまりキンキラしてなかったんですが、まあ、映画つくり資金繰りも大変なんでしょう。オリバー・ストーンのWall Streat 2 もなんだか全編予告のあつまりみたいとかの意見が多かった。ケン・ローチの作品もミハルコフのもかなり残酷にこき落とされてた。
パリではシネマ・テイクもあるし、ポンピドーもあるし映画環境はいいんですが、問題は値段。この数年で二倍になっちゃったからねえ。。。時間は売れるくらいあるんだけど(←誰も買ってくれない)、タバコとワイン代払ったらあとなんも残んないのよ、、、さびしー。ま、天気いいからいいか(立ち直りは早いのだ)。
ベランダから見える森の新緑が雨ごとにムクムク爆発してるのとか、団体で飛行訓練してる元気な鳩君たちの飛び方とか、雲の流れとか、ついでにTVでロラン・ギャロスとか眺めてます。もう、俳句でも始めよか、、いや、わびもさびもないからなあ、無理か。。体力はあるんだけどなあ。。。。
投稿情報: 猫屋 | 2010-05-29 01:26