2週間帰国してました。こっちに戻ったのは4日ほど前なんですが、荷物の整理や空の冷蔵庫用食料調達、それから不在中に繁殖しちゃったベランダの蟻対策なんぞしてたらもう5月です。時差ぼけもそろそろ抜けようとしています。
今回日本に発ったのは、アタクシには発音できないあのアイスランド火山のせいで、欧州の空港が閉鎖されるちょっと前、帰仏便は封鎖解除後で、火山噴火の影響は受けないですみました。封鎖が続いたら日本全国の友人宅を一週間ずつ居候してしのごうかなあ、などとボンヤリ考えておりましたがそれはしないで済んだ。よかった、よかった。
さて、今回の帰郷の目的は、腰を痛めて歩けなかったはずの老父(80歳)の様子を見てみることと、病気の叔母にも会いたかったからなんですが、同時に、ギリシャ危機からユーロ危機へと、まるで古代の悲劇でのように、運命に魅入られ、引きつけられ、自ら罠に嵌ろうとしているヨーロッパの現状にげんなりしていたのと、今のフランスと言う国の品のなさ加減に腹が立っていたこともあります。仕事はないし、むしゃくしゃしたまんまじゃかえって体を壊します。ふと考えると、もう25年を越える海外生活の間に、桜の咲く母国に帰ったのはたしか3回だけだったなあ、と気がついた。じゃあ、桜を見に行こう。
なお父はいたって元気でピンピンしてました:(あれってだまされたのかなあ、、、)。
着いた成田と東京のソメイヨシノはもう終わっていたんですが、帰国前からプランを立てた新宿-長野-新大阪-京都-東京という3泊4日の旅行で桜づくし2010年日本の春を満喫いたしました。
とはいえ、東京の気温は26度から6度へと過激に変化し雪まで降った天候不順で、塩尻の友人がお膳立てし宿まで取ってくれた松本城の夜桜見物は雪の中。寒かった。松本に行く前に寄った諏訪の戸倉温泉で暖まったはずが、いっぺんで冷凍状態になっちゃった。
長野2日目は、友人の運転でまず善光寺参り、それからなんと高遠まで遠出して午後遅くの桜山散策、その後またまた雪の残る峠を越えて再び諏訪に出、御柱祭の諏訪大社上社を訪れた。夕刻の薄暗がりの中で、ピリピリと殺気だった祭装束の男衆が儀式を沈黙の中で進めていた。
人気の少ない夜の社だからかもしれないが、諏訪大社の境内には不思議な空気が満ちている。静寂と清爽、そして張り詰めた霊性だ。あれはうっそうとした樹々がもたらすものなのだろうか、あるいは土地なんだろうか。いや、たぶんそのふたつが一緒になって聖地を作るんだろう、日本では。
今までは密教系の寺ばかり通ってたんだけど、これからは神社もちゃんとチェックしなくちゃ。だけど、前行った伊勢神宮ではあんなゾクっとするような緊張感は感じ取れなかった。伊勢の人手と、時間帯が違うせいなのか。
ひんやりした諏訪大社の境内を出ようとして振り向くと、薄青い夕刻の空に半月が出ていた。
翌日は中央本線しなのに乗って名古屋経由で新大阪へ向かう:振り子式のこの列車も、諏訪まで乗った「スーパーあずさ」と同様案外空いていて、そのうえ天気は上々、新緑はまだだったがビールを飲みながら眺める桜をそこここに咲かせた木曾の山々は極楽の図であった。晩年の黒沢の映画で、梅の咲く山でお雛様が踊りだす風景と言うのがあったが、ほぼあれだ。日本の樹はえらい、本当にえらい。いいかえれば極めて尊いのだ。
新大阪では、事情があって移動できない大阪に住む友人に会いに、熊本と上尾と横浜からやって来た3人とパリから飛んできて松本経由のアタクシ計5人が落ち合い駅構内のカフェにて昼食会。その後、大阪で魚屋を営む友人を残し、熊本の友は伊丹から帰路につき、アタクシはあとのふたりとともに京都へ向かったわけです。
京都では、平安神宮と三千院のみを訪れました。信州・近畿旅行のテーマは、旧友を訪ね、ついでに桜を眺め、調子にのって美味しいものも頂こう、というものである。人間、生きてる間にいい目にあわなきゃいけません。なお、お金というのも使える間に使う。それでこそ世の中が回っていくというものです。
信州の山のそこここに咲く山桜。高遠の気が遠くなるような桜の群。平安神宮の巧みな人間の手になる枝垂桜と庭のパズル模様;友禅の柄・色合いそのまんまの京都の美意識だ。三千院は、女主人の趣であろうか、田舎ごのみを品よくあつらえた京の里の美であった。歩きつかれて今回訪れなかった寂光院は、平家物語を読んでから行くこととする。
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おいしいものも色々食べたよ。信州のそば。なぜか塩尻の鹿児島ラーメン。京都の漬物。三千院門前で頂いたとろろそばもうまかった。信州のそばはうまいが汁が弱い。さすが、京都のはダシがよい。京都で土産に買ったのは、しば漬け・阿闍梨餅と蓬莱の豚まん。京での酒はいつものように玉の光。帰りの新幹線では伊勢丹で買ったいづうの鯖寿司と、下鴨茶寮の惣菜でたけのこの炊いたの。ビールはプレミアム・モルツでデザートは桜餅である。生きててよかったの計約3000円=24ユーロなり豪華新幹線夕食。
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戻った関東でも、横浜の友人がやってる飲み屋に出向き、郷里(とんでもない山奥)から送ってきたのだと言う春野菜;フキノトウ・椎茸・たけのこ等のてんぷらをアタクシが持ってったカマルグの塩で頂き、またまた京都水なすの漬物も食し、うどとマグロのブツのぬた、しめさば・タコ・鯛のさしみと日本酒で大満足。
巣鴨への墓参りの日は土砂降りで、母への挨拶もそこそこに、恒例のとげ抜き地蔵参拝もせず逃げ帰ってきたのだったが、京都から帰ったあと老父をさそって両国にある母の実家の墓まいりに行った日は、本当に「墓参り日和」のいい天気で、浅草の観光案内所で寺への行き方を訊ね(もう何十年ぶりだからね、両国もすっかりビル街になって墓地のありかが分からない)、祖母ちゃん初め御先祖様方に御挨拶。しかし、考えてみるとアタクシの御先祖様はなかなか趣味がよろしい。お墓が巣鴨と両国ですよ、あなた。粋だね。
お寺さんに向かう途中「むぎとろ」で昼食。墓参りの後は浅草見物。極めて楽しい。
人形焼の焼き立てをほうばり、雷おこしを試食し、日曜の午後は客で一杯のホルモン焼きとホッピーの店々を横目で眺めて、爺ちゃんの足にあわせてのんびり一日を過ごした。
今回は、新宿にも池袋にも、むかし勤めが近かったので通いなれた銀座も無視、原宿にも行かなかった(根津美術館は行くべきだったかも、だが)。やたらと多いショッピング・センターも新宿も、並ぶ店はほとんど同じだし、とにかく人が多すぎて田舎モンのアタクシにはなんともしんどい。
東京最後の日は、下北沢で園子さんにイタリアンを御馳走になった(;ありがとうございました)。パリから来てなんで下北でイタリアン?と一瞬懐疑的になったアタクシだったが、さずが地元の舌の肥えた方のチョイスは正しい。ボンゴレ・ビアンコはピサで食べたのとおんなじぐらいおいしうございました。
園子さんと別れてから、老父に借りたケイタイで吉祥寺の友人(大阪は八尾の魚屋の息子;今はハゲ親父)に電話。今回の帰国は知らせてなかったんだけれど、たまたま休みの日のハゲ親父と吉祥寺で一杯飲む。「ダンハン(彼のニックネーム)」もほぼ40年来の友人でありまして、まあお互いいろいろあるよなあ、と酒なくてなにがおのれの桜かな。あ、井の頭公園の八重桜を見落としたぞ:また日本に行こう。この次は浅草のホルモン焼きに繰り出そうと「ダンハン」と約束して別れた。
アタクシをいまでも日本に結びつけているのは、友人と食とあの樹々と神社仏閣。それに巣鴨と両国の墓。そして忘れちゃいけない日本語である。
何故今回新大阪まで出向く羽目になったのかを「ダンハン」に説明したら、焼酎割を飲みながら「ダンハン」は言ったのだった:あのなあ、猫屋。おまえは「フーテンの寅」みたいなもんなんや。フーラ・フーラ遊んで、時々帰ってきよる。おもて見には迷惑ばっかりかけとる風やけどな、それでええんや。時々おまえが帰ってきて、いろいろ引っかきまわして、わしらも詰まらん日常つーもんからイットキ自由になれるんよ。
ふむふむ、そーか。しかしおいちゃん、あの下駄頭よりは風の又三郎とかにして欲しかった。そのほがかっこええやん、あかんかなあ。
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さて、フーテンの寅八、もう一度日本の桜にめぐり合える日は来るのでしょうか。
更新がなくて寂しいなと思っていたら、帰国してらしたのですね。
お父様、お元気でなによりでした。
次のご帰国の際にもまた京都にいらしてくださいね。なんたって阿闍梨餅は世界一のお菓子ですもの♪
どうでもいいコメントですみません。
投稿情報: midi | 2010-05-04 11:12
すっごい充実した日本だったのですね!
おいしそうだな~~。
春は桜も美しいし、おいしいものもいろいろありますものね。
タケノコ食べたいなぁ。
豪華新幹線お弁当に妄想中です。老舗のおいしいものをあれだけ取り合わせても25ユーロかぁ~。(遠い目)
桃ラー買ってこられました?(桃屋のラー油)
投稿情報: ねむりぐま | 2010-05-05 20:56
midi氏、
伊勢丹の阿闍梨餅の売り場、相変わらず人が並んでて、アタクシも2回並んじゃいました:値段も手ごろだし、バラで買えるからいいです。「世界一」は、んー、難しい問題でありまして、まず「京都一」の予選大会しないと、、、名前忘れたけど東寺のそばのやたらデカイボタモチも大衆派インパクト強いし、銘柄は指定できないけどわらび餅は最高だし、ああ京都!中学の修学旅行以来、もう30回ぐらい通ってると思う。3年ぐらい前に一人で行った時は、(東京とかのメガタウンじゃないサイズが)うれしくてjr京都駅から三条河原町まで歩いちゃって「にしんそば」食べてきた。ははは。今回は錦市場見物には行けなかったけど、伊勢丹地下の京野菜眺めてるだけで幸福になれます。。。
ねむりぐま氏、
日本旅行の最初に、近畿とか九州とかに行っちゃうと、あと東京地区の食事にがっかりするのが難点です:なお、桃ラーっておいしいんですか?自宅では8年ぐらい前の賞味期限切れ使ってます。。。なんか、ラー油ににんにくとかねぎとか入ってるのラーメン屋にあったけど、あれ中華モノで簡単に作れそうだよ。
なお、相変わらずギリシャ・ユーロ危機追っかけてるんだけど、円の手持ちがないアタクシ、もう当分日本には帰れなさそう。。。かなり無理して帰っといてよかったです。
まだ熊野にも行ってないし、四国のお遍路さんも(部分だけでも)回りたいんだけどねえ。。浄瑠璃時も行きそこなったしさ。
投稿情報: 猫屋 | 2010-05-06 11:00
ご無沙汰でした、しばらくご無沙汰でした
パソコンクラッシュで情報失ったけどドーと言う事は無い、ところでお仕事で5月31〜6月5日まで、パリに居ます、出来れば全仏一緒に行きたいです。
連絡とれませんか?
投稿情報: M/KUNO | 2010-05-24 16:50
KUNO氏。
ロラン・ギャロスはねえ。モンフィス負けちゃったし。。
ツオンガの試合を(ほどほど天気がいいときに)VIPのボックス席で観戦できるんだったら行ってみたい。でも、シャンペンつきチケットは、大手企業がキープしてんですよねえ。貧乏人はTVでいいっす。
投稿情報: 猫屋 | 2010-05-28 04:00