Euro 2008 でフランスがオランダに 1-4 という大差で負けた。実はアタクシ、TVでの生中継も見てなかった。
フランス・リーグや親善試合での仏サッカー状況の停滞もあったし、ドメネックの“官僚的”管理にも、かつてのような仏サッカーのダイナミズムというか、あのなんでもあり流動感が感じられない。そんなわけで試合は観戦する気にならなかった。
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アイルランドが国民投票は、53パーセントを越す結果で、リスボン条約批准を拒否した。むむ。
いやこれは、ある意味予想どうりである。アイルランドには“今の時点で”EUになんら期待するものがない。たしかに、アイルランドはEUからの税・経済補助政策を後 ろ盾にし、国内政治問題の解決もあって、順調に経済成長を続けていた。
ここで、たとえば東欧の“あとから来た国々”とおなじ条件で、同一経済圏内で競争を するとなると、賃金体制や税法で不利な立場におかれうる。
アイルランドでの今の実際の社会状況、つまり生活水準・物価・労働状況などは分からないから、下手なこと は言えないが、アイルランド有権者の投票結果には驚かないし、投票に対する動機も理解できる。
根本にあるのは、要するに市民の実際の生活と実際の危惧(たとえば物価や家賃・住宅危機やガソリン・灯油価格の急上昇や将来の雇用不安、世界レベルでの経済・エネルギー・金融・政治危機など)と、複雑きまわりない高級官僚的欧州連合制度の仕組みと機能との間の乖離感だろう。
具体的にいえば、本来は中の人々(欧州住人)を保護するはずだった欧州連合が、単なる高いユーロのサンクチュアリとしてしか機能していない、という感情だ。ユ-ロにシンボライズされる経済圏としての欧州連合、つまりエアバスやメルセデス・ベンツやアレヴァの欧州は、社会・文化圏としての欧州、言い換えれば貧乏生活人の欧州と乖離してしまった、と感じる人口が今日の現状ではより多いということだ。
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しかし、残念な結果ではある。欧州連合の本格的起動はまた遅れた(フランスのNATOへの復帰を、ヨーロッパ軍実現のためへの回り道だ、とか言ってたサルコのトラヌタヌキ勘定もひとまずオハコである、、はは)。
とんでもないニース条約に比べれば、リスボン条約はまだましなものなんだが、だいたい関係者以外誰もちゃんと読んでない(あるいは読めない)300ぺージ近くもあるぜんぜん簡素化されてないリスボン簡素化条約を批准するかどうか国民に問うこと自体が、あまりに非現実的とも言える。
まあ、27カ国の利害のずれを、訂正・置き換え・書きかえを繰り返して、どうにか同意に達した結果の文章であるから、複雑化は避けられなかったとしても、それなら何故仏憲法のように30ぺージほどの欧州人なら誰でも理解できる“ヨーロッパの骨組み”的条約をまず立ち上げ、それを27カ国の国民投票にかけなかったのか。
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でも、多くのアイルランドの人々が感じてるだろうように、ヨーロッパは確かに存在し、ヨーロッパ人というのも存在している。
些細なことになるが、たとえば今欧州議会では米国産安価チキンの欧州への輸入を許可すべきかどうか検討しているそうだ。フランスでのラベル・ルージュがいい例だが、ヨーロッパでの食品管理(流通トレース機能や遺伝子組み換え食料などに対する危機予防原則等々)のやり方に対して、米国ではニワトリのえさの内容やや飼育衛生状況を管理規制するかわりに、出荷前のニワトリ肉をザブンと殺菌ジャヴェルのプールに漬けるんだそうである。まあ、次亜塩素酸ナトリウムは水道水にも使われてるからトリのジャブン自体に問題があるわけじゃあないんだろうが、それにしても、である。米国産の米などの穀物も発芽をさけるためにX線を通してるはずだ(以上、C dans l'air からの仕入れ情報)。
話はそれたが、要するにヨーロッパ的なるものは、この食料に関する観念にしても、たとえば死刑撤廃に関する観念にしても、労働や社会や戦争に関する概念にしても、確かに存在するとアタクシは考える。
それを、世界グロバリ経済に生き残れる欧州大企業のための欧州なのであれば、そりゃ困る。だったら米国にでも、あるいはこれから伸びるはずのインドや中国、あるいはオイル・ダラーで盛り上がるサウジとかロシアとかイランに行ったほうがいい。
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フランスを御覧あれ。小ブッシュ・サルコが君臨する仏国のサッカー・チームは、個々の選手の力はあるとしても試合に勝てない。チームを統一するところのアイデンティティが見つけ出せないで苦戦している。
個々の違いを比べて、差異の上下関係を測るばかりでは何も前に進まない。それより、共通項を見出し、共通のプロジェクト(未来)を掲げ、それを言語化してから細部の構築にかかるのが道理ではなかろうか。
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15日付ル・モンド社説翻訳版:ヨーロッパにとってのチャンス?
また2005年欧州憲法批准仏国民投票時に多くの記事を書いております。代表2本:天気と欧州憲法批准国民投票 nekoyanagi の復帰と、EU憲法国民投票結果ボー感
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