アイルランドでの国民投票結果に関するル・モンド社説です。無署名記事なり。
ヨーロッパにとってのチャンス?
ル・モンド 2008年6月14日リスボン条約をめぐるアイルランドの拒否は、ヨーロッパ・ユニオンを過去10年ほど憔悴させてきた制度危機にふたたび追い込んだ。
冷戦と分裂ヨーロッパの終焉は、この地をジレンマに直面させる:同盟国数の増加にともない制度改革がますます必要とされるときに、ヨーロッパは引き続く拡大化にあわせた機能調整ができない状態だ。
当座のところ、ニコラ・サルコジにとって貴重な簡略化条約に対するアイルランド国民の拒絶は、これから欧州理事会議長国となるフランスにとって重荷となる。市民たちの危惧(移民・エネルギー・農業問題など。。)に沿った大共和国大統領のもつ大工事への意志がどんなものであろうと、これからの6ヵ月間は(欧州)制度問題によって侵食されることになる。
そして、“Bプラン”(訳注;代替案)は存在しない。フランスとドイツは、アイルランドのノーという国民投票結果の場合を想定し、共通イニシアティヴを発していた。二国の願望は、リスボン条約批准プロセス継続への呼びかけにとどまっている。
ヨーロッパ人たちに何が出来るのだろうか? 仮定上の26国による批准のあと、2002年のように彼らが思い直すと期待して、アイルランド国民を彼らの責任の前に立たせ、再投票を強いるのだろうか? 欧州連合からアイルランドを“休暇(en congé)”に出すのか? 前倒しに、条約改正を必要としないリスボン本文の項目を適用するのだろうか?(訳者注;アイルランド国民は2001年にニース条約を拒否、2002年に再投票の上批准している)
これらの解決策のいずれも満足できるものではない。2005年ヴァレリー・ジスカールデスタン主幹で準備された憲法条約に対するフランスとオランダの拒絶に続き、アイルランドのノーは全員一致の原則を放棄しない限り連合の改革は不可能だと示している。
この悪循環から抜け出すためには、ひとつの可能性しか残されていない:現在の欧州連合と平行して、統合を進めるための、過半数資格原則を受け入れる用意のある国々から構成される前衛組織(une avant-garde)を創設することだ。
このアイデアは新しい考えではないが、まだ一度も試されていない。そのためには、ヨーロッパ統一は必須な祈願であると確信するリーダーたちの存在が前提とされる。その意識化を促したとしたら、アイルランド投票はヨーロッパにとってのチャンスとなるだろう。
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訳者追記:アイルランド国民投票結果に関する覚書は、別エントリーに書きます。
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