あっという間に帰国、これまたあっという間に帰宅しました。
肝心の用事も無事すませ、ついでに巣鴨の母の墓にも挨拶し、ついでのついでに旧友たちと酒を飲み、いくつか食材を購入。残念ながら今回、温泉行きは企画する暇もなく断念。本屋には一回も足を踏み入れなかった。
デジカメ持って行かなかったから写真もなし。
急に決まった帰国だったけれど、今帰っておいてよかった。航空券はギリギリ直前の予約でも800ユーロちょっとの金額ですんだし、これは再確認したんだけど“会いたい人には会える時会っておいた方がいい”。物や金は、まったくなくては大いに困る(ありすぎてもこれまた困ったことになる)が、人の生のあやうさは(大江健三郎後期のキーワードを借りればフラジャイルだが)、計り知れない。
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帰った実家で時折目にしたTV報道はニュージーランド地震がメインだった。
今回ビックリしたのは、駅やスーパー・マーケットで無言で体当たりしてくる人たち(一週間で3回経験)。それから、これはフランスでも、いや世界中どこでも同じだろう、就職活動中の大学生が抱えるこれまた無言の失望。
日本では、TVや駅や商店街やパソコン屋やパチンコ屋やで繰り返される音とスローガンの洪水にかき消されて、言葉が見つからない。
地元の商店街ではショパンのピアノ曲を流していた。タバコ屋と八百屋とまだ潰れずがんばってる豆腐屋と定食屋と100円ショップと、横道でガンガン工事中のトラックと、それでなんでショパンなんだ?。都心の、中年以上ばかりが客だった鰻屋にかかっていたのはマイルス初期のジャズだったよ。よくわからん。。。
日本では相変わらず陰謀説が大流行(おおはやり)であるらしい。あれも陰謀だよ。つまりさ、お上(お神)が仕切る社会では、何でも誰かが知らないうちに決めてくれるんだ。こーしなさい、あーしなさい。で、お上(お神)の威力が失せつつあると思ったら、お金がお上(お神)になった。あれ買いなさい、これ買いなさい。金なくて物買えないからエコロジーに鞍替えしても、やっぱりこれ買いなさい、あれ買いなさいでしょが:貧乏暇なし。
で、世界レベルでおかしくなっちゃって、オーソリティーもエキスパートも、何がなんだか分からないまま、えらそうなことを言う。えらそうなことを言うのが商売だからしょうがない。公(おおやけ)的には説明のしようがないから、誰もが知ってる分かりやすい原因を持ってきて説明する。ギリシャが、とかユ印とか中国とかアルカイダとか自然現象とか、さ。
自分もシステムの中の人だからワタシにも責任あるんです、とは言わない。言えない。おまけにワールドワイドに複雑系な現象を2分で説明できるワケもなく、ついついなんでも陰謀説で誤魔化そうとする。付け加えれば、因果関係が明確に提示できれば、それは陰謀ではないだろう。まあ、陰謀を“陰謀”という言葉のなかに封印するテクニック(ほら、手紙は手紙箱に隠す探偵もの小説)もあるので、事は複雑であるが。
不況を乗り切るために職業フレキシビリティを促進するそうだ。コストダウンを目的としたロボット工学が注目されている。年々高まる犯罪を防止するため警察力を強化するそうだ。監視カメラはゴロが悪いので保安カメラと名前を変えるそうだ。
突然気温が20度を越した日の2日後、東京にミゾレが降った。雨宿りのつもりで入ったムジの入り口横では、週中だというのに3人の叔父さんがベンチで居眠りしていた:広い店内の客はアタクシだけ。
以前は無愛想だったはずのソフマップ店員にいちゃんとマック・エアをめぐって30分も立ち話した(←にいちゃんもアタクシが買いたいけど買えないことは重々承知)。
“京浜東北線東京駅で人身事故があり、京浜東北線および山手線両線が整備のため一時(45分)普通となりました。御迷惑をおかけしたことをお詫びします。”
これはいつものことだが、日本に戻るたびにめまい(眩暈)がする。
東京の冬の晴れた空は薄い青で、パリの冬、一ヶ月に一度か二度目にする強烈な青ではない。
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中東事情は、情報不足と、情報があっても論理的構図が誰にも見えてない。オイル・ビジネスがショートをかけ、在庫は充分あるのに、ガソリン・天然ガス・灯油価格が急騰している。おちついたら“何が起こっているか”シリーズも再開します。
リビアではすでに6000人の犠牲者が出たと予想され、チュニジアとの国境を越えようとする人々の数は毎日約7000人。思わず、日本での自殺者数は年間3万人を越すという話を思い出した。ハンナ・アレント(←読んだことない)のbanalité du mal という言葉も思い出した:日常の悪。
関係ない話:アメリカ合衆国というのは、まだ政教分離/ライシテ化してない国なんだ、と思いっきり思い出した。
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追記:FTの数字によると2010年後半期にヘッジファンド10社が計上した利潤は280億ドル。同期のメガバンク利潤は250億ドル。ヘッジにしても大手銀行にしてもそれら収益の多くは、小麦・とうもろこし・原油・諸金属などの食料・原料への投資から出ている。スペキュレーションだ。米国secなどによる規制を避け、メガバンクの有力トレイダーは自らヘッジファンドを立ち上げ、ジョージ・ソロスやジョン・ポールソンを筆頭とするヘッジファンド界に移った。大手メガバンク6社の抱える従業員数は百万を越えるが、ヘッジファンドの雇用数は多くても100人程度だ。G20などで語られた、投機と金融業のボーナス、投機目的のヘッジファンドの対する規制という3つの目的は語られたのみでなんら効果を上げていないわけだ。
金は金を呼び、暴力は暴力を呼ぶ。
メンバー(無料あり)じゃないと読めないがFTから
ゼロヘッジのこの記事も追加:リビアに武器を売却した国々の種別リスト
Complete List Of Which Countries Sold Weapons To Libya
元になったガーディアン記事は以下、
EU arms exports to Libya: who armed Gaddafi?
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