リビアで危機脱出に向けた動きがあるようなんで、メモ。
まず主なニュースソース
ガーディアン:Libya uprising - live updates
その続き:Assault on Zawiyah - live updates
アルジャジーラ英語版:Al Jazeera English: Live Stream
これはアルジャのライヴ・ブログ:Libya Live Blog - March 8
NYTによる蜂起戦マップ:Map of How the Rebellion Is Unfolding in Libya
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リビアのNational Council はカダフィーに対して72時間以内に政権を去るよう勧告。条件は、即時の戦闘中止、国内でのカダフィの責任追及はない、など。
問題はICC(国際刑事裁判所)が、すでにカダフィの“犯罪”に関しての調査を始めている以上、(リビアからの脱出を考えているはずの)カダフィが簡単にナショナル・カウンシルからの申し入れを受け入れるとは思えない。現時点では、リビア国内ばかりではなく、国連、米国、EU、先週カダフィーとの仲介を申し出たベネズエラのチャベス大統領、アラブ連合、アフリア諸国、もちろんロシアや中国も含めたアクターたちの間で活発な交渉が行われているはずだ。オイルが絡んでいるから、チュニジアやエジプトに比べて、事はさらに複雑である。
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リビアで起きていることも調べれば調べるほど分からなくなる。アタクシの英語力では、外交や各メディア内でのパワー・バランスが働く磁場での“発言”の如何さじ具合の読み方はかなり難しい。
おまけに自分が読んでるのは、膨大な“情報”のごく一部でしかない(まあ元ネタは同じだったりするが、扱いようでどうにでも加工も可なり)。そんなわけで、極めて私的チョイスの報告であります。
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OK. リビアは市民戦状態にある。
砂漠地帯での戦闘では、リビア空軍が戦闘機あるいはヘリコプターで爆撃すれば地上にいる反政府派は簡単に標的となってしまう。同時に、リビア軍を脱退した職業軍人が反政府派に占める割合もかなり低く、彼らが即効で訓練した反政府派戦闘員の戦闘力には限りがある(フレンドリー・ファイアや誤操作も多いとした報道もある)。
軍の下部兵を多く占めるのが傭兵だ。彼らにとって雇い主であるカダフィ失脚が意味するのは、まず失業と戦いが終わってからの粛清可能性がある。貧しい母国に帰れたとしても未来は明るくない。軍内のリビア兵が反政府軍に寝返っても、傭兵にはその選択がない。
また政府軍の爆撃には誤爆が多いという報道もある。この誤爆は、イラクやアフガニスタンの誤爆とは正反対だ。眼下の人々を撃てという命令に従わなかったパイロットは不服従の罪で処刑され、その画像が放映されている。やむなく出撃した爆撃機・ヘリコプターは、標的を避けて爆撃する:これも誤爆なんだね。
拷問が広く行われたアルジェリア独立戦争で、独立派の間で語られていたひどい話を思い出した。“黙っていてもお前は殺される。しゃべってもお前は殺される。だからお前はしゃべらないまま死ね”。これも日常の悪/あるいは戦争の不条理=ばかばかしさの一部だろう。Masters of war はブンカー内部で声をひそめている。
下のヴィデオは、2・3日前に見たフランス2とフランス24の映像。フランス24ジャーナリストJean-Marie Lemaire がリビアのBrega で撮影したもの(3月4日)、この映像が撮られた直後ジャーナリストは負傷、病院に収容されている。
下はsky news から今日のヴィデオ。これも女性ジャーナリスト、Alex Crawford による報道。
ガーディアンによれば、カダフィは首都トリポリから50キロほど離れた町Zawiyah に、空軍での攻撃の後、50の戦車と兵士を乗せたピック・アップからなる部隊を投入した。この無差別攻撃で対象となったのは、モスク・病院を含む町全体や救急車。女性や子供も首・顔・胸部を撃たれている。また政府軍は外国ジャーナリストも攻撃している。
Gaddafi deploys tanks and hundreds of troops in all-out effort to take Zawiyah
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英プレスによれば英国と米国(仏プレスによれば英国とフランスの)主導で、ノン・フライ・ゾーンを設定しようとする動きがあるが、実際にリビア上空の航空機飛行を制御するために不可避な軍事力行使には、国連安全保障理事会の承認が必要だ(UN決議を無視して行われたコソボ爆撃、イラク攻撃はいまだに大きな論争の的になっている)。
今のところ、英国とフランスはこの件に賛成の立場を表明しているが、(財源歳出を議会にかけても結果は難しいし、中東オイル圏での立場も難しい)米国は未決定で、中国とロシアは拒否権を行使すると見られている。中国はリビアに対し多くの軍備を輸出しており、同時に、国内での市民運動展開を恐れるロシア・中国とも北アフリカで引き続く蜂起に対して敏感になっている。なお、リビアへの軍備輸出関与には元宗主国のイタリアを筆頭にフランスなど多くの欧州国家も上げられている。
そういった多くの障害と、実際にノン・フライ・ゾーンを設置するためのロジスティックの準備期間がかかることも考えると、この計画も、カダフィに対する精神的プレッシャー作戦=神経戦としての性格のほうが強いんだろう。だが、ウィキリークスがリークしたカダフィ政府に関する米外交筋の今年初めの評価を見ても、米国がカダフィの性格を正しく把握しているとは思えない。
この米国の情報度のあやうさは、(もちろんイラク・アフガン戦開始時にも、)エジプト蜂起時のムバラク後継者選びの失敗にも見受けられたが、カダフィが継続して展開していた反米キャンペーンとは別に、リビア市民全体の反米(+反英、あるいは反欧州)意識を過小評価すべきではないだろう。
また、オイル・マネーによって豊かだったリビアでは、サウジ・アラビアと同様、多くの移民労働者が働いていた。隣国であるエジプト・チュニジア人はもちろんだが、3万人と言われる中国人労働者、多くのバングラデッシュ労働者、フィリピン人、さらに多いブラック・アフリカからの、傭兵も含む労働者たちだ。
エジプト・チュニジア国境にちかい国連が設置した難民キャンプに、多くの避難移民労働者がいまだにリビア脱出を待っているわけだが、一番悲惨なのは、帰国のための飛行機あるいはフェリーをチャーターできない国々、つまりマリやバングラデッシュからの移民だろう:帰りたい帰れない。
EU諸国がリビアでのノン・フライ・ゾーンに積極的である理由のひとつは、彼ら移民労働者とさらにリビア解体後のリビア人難民化で、彼らが大勢でヨーロッパにやってくるという(大きな声では語れない)可能性だろう。ユーロ危機がさらに悪化する欧州では、失業問題にからみ極右政治勢力の拡大が起こっている。欧州政治家にとって、移民問題は自らの政治生命がかかった選挙問題なのだ。
なお、同国人脱出のためリビアに渡ったオランダ兵3人はいまだ勾留されたままだ。
ヘリコプターでリビアに上陸したジュニア外交官とともに行動した英国SAS 6人とM16の2人の秘密情報員は、上陸後すぐ地元の農民に捕まった。農民は反政府勢力に連絡。勾留後たしか3日目に“愛すべき英スパイ”たちは解放され英国に戻った。この不始末は英国でもかなりのスキャンダルとなっている。ショーン・コネリーが演ずる007の時代が、ある意味懐かしい。
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ここからは、猫屋が拾ったリンク集。時間と興味がある方は御参照ください。
arrêt sur image から案外長いヴィデオ(無料記事ですがヴィデオ・ナンバー1はさして見る必要なし)。エマニュエル・トッドが、いつもの出生率と婚姻システムの移行統計にそって、アラブ圏諸国の革命度を語っています。
"Pour la modernisation d'une société, l'islam n'est pas le problème"
こちらは、サル様に近しいペーパー・メディアであるジュルナル・デュ・ディモンシュ/JDDが、カダフィ・インタヴューのため送ったジャーナリスト2人に同行したフィクサーZiad Takieddine (本業は武器商、副業はいろいろ仲買人)が、パリ郊外の空港に帰還の際、リビアのチャーターした飛行機からおりたとたん税関に捕まった話。なんと、150万ユーロのキャッシュをリビアから持ち帰ったそうだ:ル・モンド記事。
L'étrange voyage de journalistes du "JDD" en Libye avec l'intermédiaire Ziad Takkiedine
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忘れるトコだった。重要追加
インディペンデントから中東のベテラン、ロバート・フィスク3月5日の記事:さすが読みが深い。
Robert Fisk: The Tunisian whose jihad was for the people, not God
と、まだまだ情報はあるのですが、まとまらないし時間もないので今夜はここまで。(翌朝、若干追記いたしました)
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