チュニジア→エジプト→? 次はどこだ、ということで今は、政府によるデモ禁止令にも関わらずアルジェリアのアルジェとオマンでおこなわれたる市民抗議運動に注目があつまっています。
12月17日にボアジジが焼死自殺を図ってから2ヵ月もたってないのに、チュニジアとエジプトというアラブ圏でもっとも“安定”した国といわれていたこの2国の長い独裁政治が終わった。特に、エジプトはアラブ圏内で、またアフリカ大陸でも最大の国だし、アラブ連盟(アラブ・リーグ)でももっとも重要な政治役割を果たしている。その大国エジプトで、2週間半という短い期間で独裁政治が終焉した。このインパクトは、アラブ圏あるいはムスリム圏全体ばかりではなく、世界中に広がってる。
もちろんアラブ世界のオーソリティでも、イスラエル外交の内通者でもないアタクシが書くことになんら重みはありませんが、逆に言えば、何故これがこの2国で今起こったかという理由は(少なくともこの段階では)どのエキスパートも説明できないでいるし、それらエキスパートの誰もが、このジャスミン革命とその連鎖を予測しえなかった。運動が始まってからも、このすばやい独裁退陣を予想できなかった。
その意味では、私を含むノン・エキスパートたちの言葉が集まって初めて、何かが変わるんだとアタクシは思う。これはコンセプトに関する話です。権力の座に居る人々は、ここいらが分かっていない。それは権力内部ばかりではない;たとえばムスリム同胞団のヘッドにいる爺さんたちも分かっていない。
パラレルでの印象は、リーマン・ブラッズ崩壊をまったく予知していなかったエコノミストと格付け民間企業が思い起こされます(もちろん各金融機関内部でも分かっている人間は多かったが、彼らの一部はそれをショート売りで利用したし、企業ピラミッド下部に居た人々は口をつぐんだ。)
どちらの分野(経済・地政)でも、“エキスパート”は、自身が作った“モデル”内に閉じ込められ、実際世界;借りた言葉で言えば、普通人のツァイトガイスト/時代精神みたいなもの(地政)、普通人のクレジット経済(エコノミー)を、まったく視野に入れず、目の前で繰り広げられている崩壊が自分たちの信じるモデル崩壊であることに気づかぬまま(あるいは気づいても知らない振りで)、実はもう賞味期限の切れた教条にしがみつこうとする。
では何故それら“エキスパート”たちは過去の教条にしがみつくのか? 理由は簡単明瞭;それが彼らの“飯のタネ”だから。
と、これまでは猫屋前書きでありまして、これからが本題=エジプト状況であります。
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ガーディアンを覗いてみたら、今日もライヴ・アップデイトは続いている。ね式と同じようなタイトルだなあ。
Egypt the day after Mubarak quits - live
いくつか今日のポイントを書いてみる(ニュース元は必ずしもガーディアンではないよ)。
・軍最高評議会は「自由で民主的なエジプトを目指し、自由選挙によって選ばれた民主的政府が確立されるまでの期間、軍は暫定的政府として機能する」と発表した。反政府抗議派は、革命を擁護し評議会とのネゴシエーションにあたる委員会を組織、週一回の定期デモを予定している。なお、次回選挙は引き続き今年9月とされているが、正確なタイム・テーブルはまだ決まっていない。
・軍最高評議会は同様に、イスラエルとのものを含む、エジプトの各国際協定維持を発表。
・ムスリム同胞団は「我々は大統領選挙に代表を送るつもりも、議会で大多数議席を獲得する意志もない」という意味不明なメッセージをインタヴューで発表。
・最高700億ドルと見られるムバラク一族の資産だが、ロンドン・ニューヨーク・パリ・ビバリーヒルズの邸宅と、スイス政府によって凍結された口座、またロンドンの口座とは別に、18日間のエジプト蜂起の間に、所有していた財産の部分をすでに金の延べ棒、あるいは別の資産に換え、湾岸の友好国にトランスファーしていたようだ。参考:Egypt: Hosni Mubarak used last 18 days in power to secure his fortune
・チュニジア・エジプトの熱狂は各地に広がっており、アルジェではデモ禁止令下、千を越える抗議派がデモ、しかしこれに対し千を越える警官の強行弾圧にあたっている。イエメンでも現大統領が現在の任期が終わる2013年には退陣するという発表にもかかわらず、今日抗議運動が展開された。
と、もっと続けたいのですが今夜はここまで(時間切れ)、
大型ノート3ページ分メモした、オマール・スリマンのエキサイティングなキャリアーとか、エジプト軍評議会のヘッドであるTantawi は何のためにいるのか、またワシントンに電話で「市民に向かって銃を撃たない」と宣言した陸軍大将のはなしとか、(CIA長官がおととい「ムバラクは退陣」と早々に予言したのは単にTV報道でそう聞いたからだそうだが)CIAとイスラエルがどう絡んでくるわけ?とかの話は、また今度。
なお以下は自分のメモから、たぶんガーディアンからの抜粋:the day after の見事なレジュメになってる。
"No one should underestimate how powerful a moment this is. The departure of Hosni Mubarak marks the beginning of the fall of the authoritarian wall in the Arab world."
猫へぼ訳「このパワフルな瞬間を過小評価してはいけない。ホスニ・ムバラク退陣は、アラブ世界での独裁の壁崩壊の始まりをしるしづけた。」
ググったら原文が見つかった(インディペンデント発ロンドンエコノミースクール先生の文):Fawaz A Gerges: Egyptians must press on towards the real goal
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