さて秋の芸術シリーズ第3弾であります。今日は映画。
気になってたんだけど、映画館まで出かけるチャンスを逸していた問題の映画“Tokyo !”なんですが、こちらでの封切りは10月15日、アタクシが観にいったのは先週の金曜ですから封切りから3週間後。でも上映してる映画館はパリ中でたったの3館というなさけない状況で、こりゃ失敗作なのかなーと疑いながら出向いたんですが、上映室は小さいながらもほぼ満員でありました(なお見渡したところではアタクシがたった一人の東京生まれ、あるいは日本人だったみたい)。
面白かったよ、この映画。
これは、非日本人監督3名による東京を巡るオムニパス映画である。第一作はフランス映像作家Michel Gondry による『インテリア・デザイン』。俳優はすべて日本人で、ストーリーは地方から東京にやってきた若いカップルが、住宅・就職問題とかにぶつかって、“彼が映画監督となる”という本来の上京目的の影で彼女が次第にアイデンティティを失い、最後は椅子に変身してしまう、という話。不思議なハッピーエンドなんだけど、前半部の長さに比べて空想部がどんどん拡大する後半部の加速さ加減がすばらしい。ミニマリズムの勝利。
第二部は、悪い血やポン・ナフの愛人、ポーラXを撮ったあのレオ・カラックス。なんとタイトルは『Merde』、つまり『糞』であります。変わらんやつだカラックス。どっかのインタヴューで読んだけど彼は「あとになってから、人はカラックスのメルド/糞とこの映画のことを語るだろう。うふふふふ」と答えてる。アタクシはカラックス・フリークでもなんでもないし、観た作品も悪い血だけなんでなんとも彼の資質を評価しえないんだけど、イントロがもろ円谷映画のリメイクだったのには感銘を受けたよ。あと、彼は続編をニューヨークで作りたがってて、タイトルは『Merde in USA』だって。彼に冗談の才能があるとは知らなんだ。
配役には、昔からのカラックスチーム参加で、メルド=Denis Lavant、メルドを弁護するこれまた怪人弁護士がJean-François Balmer など。東京で無差別殺人を犯して死刑を宣告され最後には絞首刑になるんだけど、裁判でサディックな検事を演じてるのが石橋蓮二なんでオヤマと思った。
第三部は韓国のJoon-ho Bong 監督によるShaking Tokyo。ポエティックな作品でこれは気に入った。10年間家に閉じこもった(元)青年と、機械になりたがってるガーター・ベルトのピザ宅配少女の純愛物語である。カメラがいい。主要出演者は、完璧なHIkikomori(仏語字幕でもこの表現を使ってる)主人公と宅配少女とピザ屋主人の竹中直人の三人だけ。いや、なかなか感動的であった。Hikikomori 氏が、食事は台所の流し台の前で立ったまま食べるとか、トイレのドアは閉めないとか、なんか身につまされるシーンも多いのだった。宅配少女が、腕や腿にリセットとかコーマとかのボタンを描いていて、ここらの細部の使い方もよし。
残念ながら、年寄り以外の俳優がだれなんだか、ウラシマなアタクシには分からないので紹介は省略いたします。
あとからよくよく考えると、3作の間にはつながる部分がそれでもあって、たとえばMerdeのあとに来る冒頭はHikikomri氏がトイレでウンコしてるシーンだったり、Hikikomi氏が引き込んでた期間が10年なんだけど、カラックスは10年間映画を作ってなかったとか、気がついただけでもいろいろある。
なお、これはアタクシのカラックスに関する個人的印象なんだけど、あの人のオプセション/強迫観念ってやっぱ宗教と父親像なんじゃないかと感じた。Merde が警察隊に連行される時の裸体とか、裁判での母親に関する発言とか、最後に彼が言う言葉とそのあととか。まあ、3作通じて女性(あるいは女性の不在)ってのが、このオムニパスに通じる救済を表してるといえば、それもそうなんだけどね。
映画情報については、アロー・シネを参照ください。ヴィデオも計6本あり:Tokyo !
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これもTokyo 関連で。偶然今日見つけたヴィデオです:タイトルはTokyo リアリティ。
どうもCanonが企画して、若手映像作家がCanon 機材を使ったコラボのようである。今月5日にアップされた仏系デイリー・モーションでもう20万回以上観られてるからたいしたもの。映像は最大レベルに拡大しても驚くほど質がいいよ(重すぎたら小さいヴァージョンで観てね)。
撮ったのは仏人かと思われるけどニュートラルな切込みがいい。なんだか一週間でもいいから帰りたくなっちゃった。6分間のシアワセである。なお、アゴヒゲのKei君は日系メティス/ミクスチャー/ハーフあるいはダブル/ の人と思う:眼が日本してる。
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