ロシア・グルジア紛争およびNATO系で10日ほど目いっぱい情報集めて、読み込んで、かなり疲れた(結果=家中新聞・雑誌・図鑑だらけ)。
ぐったりしてたら、(なぜか)片付いてない用事がたまってることに“突然”気付き、あのフランス名物:書類集めプラス各種役所・銀行・郵便局・コピー屋通いで8月が終わってしまったのだった。
8月中はどこに行っても学生アルバイトしかいないので、何をするにもやたら時間がかかる。しかし、9月1日になってヴァカンス帰りの住人たちがドット街に繰り出してこれまた大騒ぎであるね。休暇で出費のあと、各種税金払って、おまけに新学期でみんなカネナイ。プラス、メトロ・鉄道・ガス代等、何でも値上げでどこも行列、ストレス満杯。
こうなると観光客と学生アルバイトばかりの脳天気かつ交通渋滞なしの8月がなつかしい。
天気も悪いしね。あーあ。
*
グルジア・ロシア関係メモ
ロシア国内の、たとえば天然ガス料金というのはかなり安い。御多分にもれずロシアでもインフレ率は高いのだが、政府はガス料金を上げられない。上げたら、あそこ寒いし革命が起きかねんわけ。
でもって、ロシアは天然ガス・石油を輸出してドル・ユーロを稼ぐ以外に選択肢がない。ロシア・オリガルシーは(アジアやアメリカではどうだか知らないけど)イスラエル・英国・ヨーロッパで外貨をばら撒いているわけで、たぶんロシアの税制度ってのも、調べてないけどかなり不均等なものだと想像できるから、税収入のないぶん、ロシア政府はますます天然ガスおよび石油輸出に頼ることになる(なんか論理が悪循環してるけど、これはロシア国内状況が悪循環だから、、と理解していただきたい)。
軍力とエネルギー輸出での外貨稼ぎに依存しすぎるロシアの問題点は、国内産業技術開発が停滞していること。それに出生率がやたら低いことだろう(+ウオッカ・アル中問題もあるしさ)。いくら軍事力で“敵対国”を威嚇しても、たとえば天然ガスの冷却貯蔵設備技術では、どうしたってドイツや英国・米国などとの技術提携が必要となる。もちろんハイテク製品の輸入も止められない。ご存知のように、どの文化地域においてもヌーボー・リッチの好きなのは同一ブランドであるね:プラダにシャネル、ベンツにアウディとBMW、ソニーにレイバン、スイス時計にシャンペン。。。(って、これサルコじゃん。関係ないけど)
まあ、これが古典的政治学での“独裁政治”の弱さであるね。強気に出れば出るほど、弱点が目立つ。やりすぎで、貧民が亡民化する。この点では中国も似てるかも(でも中国の強い点は、全世界に点在する華僑の力かなあ、でもロシアにはそれがいまのところない:つまりイスラエルや英国や欧州に出た人口が本国に再資本投下するだけの産業基盤がまだないわけね、で使いっぱなし)。
*
南仏のいつも借りてるアパートに、今年はロシア人の若夫婦(30代、赤ん坊ひとり)と英国夫婦(40代、子供2人)が引っ越してきてた。いままでは仏リタイヤ組がほとんどだったけど、世代交代だろう。あそこは普通の勤め人が買える物件ではない。オイリーと、シティ売り逃げだよねえ。この夏、オクスフォードで英語研修受けてた若い友人が、夏休み中のオクスフォードでもロシア人がバンバン買い物しまくりで凄かった、といってた。イスラエルの死海沿いリゾートも同様(シャンペン・キャビア・ヨットにウオッカね)。
*
関係ないんですが、だいぶ前にル・モンドに掲載されたクルーグマン教授のコラム抜粋仏語記事:いつものクルーグマン節ですが、仏語で読むと不思議に新鮮:米国の相続税廃止ウンヌンなんて、アレ?これってサルコおフランスのシナリオとおんなじじゃんと思ったよ。タイトルは“私たちの望む米国”、新しいニューディールのために
"L'Amérique que nous voulons", pour un nouveau New Deal
*
ついでにこれも:仏映画『Inju』のル・モンド評
"Inju, la bête dans l'ombre" : un thriller déroutant
江戸川乱歩の小説『陰獣』(←当時婦人グラフ掲載ってのもすごい)がモト本らしいですけど、日本在住の若いフランス青年がシナリオ書いて、Barbet Schroeder(バルベ・シュレデール;イラン生まれの仏人)が監督、映画『ピアニスト』に出た Benoît Magimel(La vie est un fleuve tranquil で子役してた)が主人公の作家役。芸子役はLika Minamotoだそうですが、アタクシ誰だか知らない。
ヴェニス映画祭での受けはよくなかったようです。まあ、難しいなあ。。。(仏で案外多いらしい)日活ロマンポルノオタには受けるかもだが、乱歩のサド・マゾ偏愛を、ミシマ風美学と解釈するか、アラーキ風に喝采すべきか、あるいはキル・ビル的に笑い飛ばすかってのは、ヨーロッパ・アダルト・インテリには微妙なところだろう。
アタクシも厨房のころアラン・ポーも乱歩もファンでいくつか読んだけど、今考えるとアレ?とか思うもん。
ほぼ全部東京で撮影され、お茶屋のシーンとかSMシーンとかそれぞれの“プロ”が立ち会って監修したと言う映画でございます。
なるほど、ニースの高級アパートも成金アパートに変わって行くのね。
フランスににとっては、馬鹿が落とす金もそうじゃない人が落とす金も、国籍や資産状況が書いてある訳ではないからどっちでもいい訳だよね、日本バブルの頃にお城まで買っちゃったお馬鹿な日本人がたくさん居た訳で、何時の時代もお馬鹿が居てくれなければ困るものね。頑張れお馬鹿。
バブルの頃プチプチプチお馬鹿を経験した僕としては、結局借金しか残らないと言う事実をしっかり見た訳で、全然ないと困るけど、最低の暮らしこそ最高であると居直れる最低の思想と最低限度の価値観をプチプチバブルで学んだ訳で、もう怖いものは何にも無いぞ完全居直り状態です。北京オリンピックの開閉会式も、中国よ恥ずかしくないのかと言いたいくらい、ハリウッド映像のコピーばかりだし、コピーの為に金を使いまくる中国もやっぱりバブルそのもの,はじける時は何も残らないのではなく、思いっきり未来への負債が残るのよね。
いいじゃないの、中国人にもロシア人にもいずれはじける、いい思いを味わってもらったら。
投稿情報: しんちゃん | 2008-09-04 02:23
猫屋さんこんにちは。
夏の間ちょっと大学生に戻り、都下をぐるっと通学したり若い子たちとおベンキョしたりしてました。(あの内容でおベンキョだったかっと言うのもあったけど)
朝も早よから6時の電車に乗ろうと娘のアパート(居候したのです)を出ると、やっぱり早くからわらわらわらと出てくる人たち。自動車にたくさん詰め込まれて、自転車で、歩きで。建設労働者の皆さんでした。田舎だと工場労働者なのだけど、田舎の事情だと思ってました。ナイーヴにもショックでした。昼間はテニスラケットを抱えた奥様方がゆるゆるしている町の朝早くの光景。階層の住み分けはされてないけど、全く関係ない人たち。
電車は4線乗り継いでいました。毎日毎日人身事故が起きて、1線止まったり遅れると果ての線までどんどん影響が出る。大雨が降っても雷でも大混乱。毎日人死にに遭って電車が遅れていたら人の死より運行状況の方が気になってしまうのではと思うくらい…
今、日本の人口の10人に1人は東京住まいということになるそうですが、インフラは追いついてないでしょ。人間はくたびれてるでしょ。田舎はまだましとも言えませんし…どうしよう?です。
紀伊国屋をのぞいてみたら、アメリカンのもの以外新聞も雑誌もない。諸般の事情により、という張り紙があって… 鈍いもので後で気がつく、YOHANが倒産したんですね。
田舎に引っ込んで浦島太郎になってしまっってたかなあ、と。
剥げちょろけの竜宮城でも東京もう少しなんとかしろよ。表側だけきれいきれいしときゃいいのかよ。なんちゃって、頑張ってばかりいられませんよね。
帰ってからもずっと考えてばかり。(大学でも引っかかることがあったし…)
でも止まらないで動きつつ。です。
投稿情報: みみみ | 2008-09-04 09:27
どもどーも、
しんゃん氏、
いやニースじゃないですってば。まあもう行くこともないだろうからいいんだけども。
てか、今回の話はちょいとバブルがはじけるぐらいでは収まらないでしょう。ヤバイよ。
みみみ氏、
お久しぶりです。
アタクシなんざ、いい加減に生き延びりゃいいわけだし、それなりに親から聞いた戦争の話とか、いろんな国やいろんな人間やいろんな本も読んでみたりしてある意味での免疫(経験でも同じか、、)あるけど、冷戦を知らない(TVとかゲームがベビー・シッターだった)新人類の生きてく社会はどうなんるんだろう、と考えてみてもいかんせん想像できない。人間自体がヒューマン・リソースであり同時に市場であって、数でしかない。日本は先端を行っているわけです。こちらでのダライ・ラマ人気も、そんなマテリアル社会への反発なんだろう。でも自分にはダライ・ラマほどの徳も信念も根性もないからなあ。
とにかく、これからどうなっていくか、見極めてやろうじゃないのとは思ってます。まずは健康第一、ご自愛ください。
投稿情報: 猫屋 | 2008-09-04 16:32
猫屋様
一見やわだけど硬派で知的。フランスの香り漂う猫屋さんのブログ。いつもありがたや、と拝見してます。実は私も若かりし頃、1968年L'evenement de mai直後のパリに行き、それから一年半、学生としてCartier Latinで暮らしました。その後も5年程パリで生活しましたがフランス語がさびついてしまったのと、目が不自由になったため、Le Monde を初めとする仏誌の翻訳&レジュメ、ホントご苦労様、奇特なお方、と感謝!
ところでこの年になって初めて本を出版しました。日本もこれじゃどうにもならない。少し未来志向、理想主義で考えてみようではないの、とシコシコ書き始めた訳ですが、まぁせっかく若い頃フランスとヨーロッパ文明にかぶれたんだからフランス人の目を借りて日本と(少しばかり)世界の過去と現在と未来を考えてみようじゃないの、と思い立ち、一部小説風にちょっと奇妙なものを書いてみました。猫屋さんに満足していただけるような水準に達しているかどうかは疑問ですが、もし読んでいただけたら嬉しい、と思い立った次第。お差し支えなければ送付先を教えていただければ幸いです。
平野園子
投稿情報: 平野園子 | 2008-09-05 11:52
園子氏、
えっと、作業が終わった時点でちゃんとお返事します(メールも)。許してね。
投稿情報: 猫屋 | 2008-09-06 01:19
作業、ほぼ終了いたしました。
68年直後のパリですか。見たかった。アタクシはこちらに来たのは1984年で、こっちの先輩は、コレージュ・ド・フランスでフーコー、またデリダ、アルチュセール、ラカン、バルトの講演に行ってる。すごい時代でした。今のカルチエ・ラタンはファーストフードと洋服やばかり。まだ学生相手の専門書店とシネマテークはどうにか営業してるけど雰囲気はかなり変わりました。リュクサンブール公園と学校、若い学生たちがたむろしてるのは変わってないか。。
日本語がとにかく好きなんで、忘れないように、それに考えるいい訓練だからってんでどうにか続けてます。でもこのごろはTVばかりじゃなく、仏プレスもラジオもサルコ広報化しちゃってて、なかなか力の入った記事が少なく(こっちの体力衰えもあるかな)翻訳はご無沙汰になっています。まあ伊達や酔狂のブログであります(笑)
本出したんですか。。パワーあるなあ。アタクシもまとまったものは書きたいんだけど、どうも真っ白の紙を前にすると一行も進まないという、情けない人間でございまして、腹たつとブログに書く、ってのがブログ続けてる本当の理由かもしれません。
貴書、喜んで読まさせて頂きます。後ほどメールにて住所ご連絡します。
投稿情報: 猫屋 | 2008-09-06 23:41