AFPとロイター報を基にしたル・モンド記事によると、ロシア軍はいまだにグルジアから撤退していない模様です。
Géorgie : deux jours après l'annonce de leur retrait, les forces russes restent présentes
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ゴリから西に5km地点で、石油輸送貨物列車が地雷によって爆破されています。
たしか7月の時点でBTCパイプラインがトルコ領内で(pkkのものと見られる)攻撃を受けて以来、パイプラインのバブルは閉じられているはず。今回のグルジア攻撃で、地下に埋められたパイプラインも爆撃対象となっていたようだし、ポティの港やその他のグルジアの主要戦略および産業基点、通信および交通基点はロシア“ピース・キーピング”軍によって破壊されているわけだから、たとえロシアが譲歩し、大幅な軍事撤去を行ったとしても、この国のインフラおよび経済回復は難しいだろう。
ロシアが、グルジアでの石油・天然ガス輸送をブロックすれば、秋の始まるグルジアの住民はさらに苦しい状態に置かれるだろうし、それからもちろんその先のヨーロッパもだが、ロシア管理の原油・天然ガスへの依存を強いられることになるんだろうなあ。
米国はミサイル駆逐艦マクファールをトルコのボスポラス海峡を経て黒海に送った。難民援助物資を積んだ旗艦「マウント・ホイットニー」を護衛するという形だが、内海の黒海に米国の駆逐艦ですよ。こりゃ驚く。
ボスポラス海峡は地域でも最大の港を持つイスタンブールに始まり全長約30km、横幅は最短部で800メートルと極めて狭いが、最大型原油タンカーの通り道となっている。管理しているのはイスタンブール市。
FT(ファイナンシャルタイムス)が、紛争を嫌って世界資本がロシアから撤退と報じてるようだけれど、どうもこれはフカシ(アドバルーン)な気もします。ロシアの持つ外貨備蓄総額に比べれば、極めて限定された金額だと思うよ。Investors quit Russia after Georgia war
もひとつル・モンド記事へのリンク追加です。
サルコジが12日にロシア大統領の交渉で獲得した6提案の一部は、ロシアの主導で構想されており、“ロシア軍の自由な行動を一定地域において許容する。難民の帰宅はありえない。”といった内容(つまりグルジアの領土権を侵す権利をロシアに与えている)を始めとして、大幅にロシアサイドのグルジアでの権利を認めた形になっていた。
コンドレサ・ライスが15日サルコジの休暇先に急遽飛んだのも、この提案内容の変更が目的だったと記事は書いています。また、なぜサルコジはロシアとグルジアに出向く前にヨーロッパあるいは米国と協議しなかったのかと記事は批判しています。12日から15日までの詳しい経過、および6協定の内容とその後の変更内容については記事をお読みください(読者がコメント欄に書いてますが、レイモン・アロンを読み返すべきかも+カーの危機の20年もだな)。
グルジア:フランスの賭け、ロシアの獲得したもの
Géorgie : pari français, acquis russes, par Natalie Nougayrède
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今週のクーリエ・インター(Courrrier International)がグルジア;ロシアの勝利という特集をしています。まだちゃんと読んでいないんですが、とくにモスクワの新聞記事やワシントンの記事、エストニアやもちろんグルジアの記事も仏語に翻訳し、地理的また歴史的本紙の解説も加えて紹介している。なお日本の記事はアサヒから歴史を扱ったもの、恒例の漢字紹介は“嫌”、訳語はl'aversion だそうです。残念ながらクーリエの記事の多くはネットでは有料なんですが、今週号はオバマの記事もあったりパキスタンのムシャラフ関連記事もあり、買ってソンはない(3ユーロ)。
表紙の写真がなかなか怖い;ツビリシとゴリの間にある主幹道を装甲車に乗って移動する兵士の写真なんですが、白い腕章をつけています。milice(民兵/義勇軍)です。
クーリエ・インター:Géorgie : La victoire de Moscou
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こちらは、アフガニスタンでのNATO部隊タリバンの待ち伏せにあい10兵士が死亡事件、に関して、先日サルコジと同時にカブールに飛んだフロランス・オーブナがオプス・ウェブで読者の質問に答えています。イラクで人質となっていたオーブナは現在ヌーベル・オプスのルポルタージュ記者。
アフガニスタンの状況/La situation en Afghanistan
以下は、気になった部分のみのレジュネ、
同盟軍からの仏部隊への誤銃撃については、確認が取れていない。だが少なくとも同胞軍の空からの援護に効果がなかったことはたしかだ。
ジャック・シラク前大統領はアフガニスタンへの派兵に対して消極的だったが、アフガン戦争へのより積極的参加がNATO内部でのフランスの発言権拡大につながると判断したサルコジ大統領は、アフガン派兵増員(700名)とともに、カブールや他国の基地外での戦闘地における仏兵任務参加を決定した。この新路線は大きく批判されているが、いったん決定された以上、いかにそれが非合理なものであっても翻すことはできない。
問題は、現在の米国型空爆攻撃では、アフガニスタンの一般市民への損害が大きすぎること。8月22日には子供や女性をおおく含むアフガン市民76人が米主導連合軍(ISAF)の爆撃で殺されている。
現地住民にとって連合軍は単なる占領勢力と見られているし、戦争が長引けば長引くほど、アフガニスタンの生産・経済システム、そして現存の社会構造も破壊される。そんななかでアヘン栽培が再開し、その収益がタリバンの財源になっている。
アフガンの部族社会に欧米概念である民主主義を根付かせるという意図はまったく間違っている。少なくとも数世代という長い時間が必要。
2004年の時点で5000だったコアリション外国人兵士数は現在7万人だ。15万人の兵士を送り込んだソヴィエト連邦は8年間の戦闘の後に撤退している。この戦争に勝つことは出来ない。
欧米メディアが伝えるアフガンでの教育復興なども、実際の状態とはかけはなれた状態である。オーブナが前回のアフガン訪問(7月)にインタヴューしたアフガン女性は「ただひとつの願いは、夫が戦いに参加しないこと」と語っていた。
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追加クリップです。AFPの速報から:アフガニスタン・コアリション(ISAF)の総司令官David McKiernan将軍(米)は、フランスがNATOへの軍特別部隊を更に送るのであれば、歓迎すると発表しています。 なお、10名の仏兵士の死亡に対する調査は行わないと言明。戦争で死亡者がでるのは普通なんだそうだ。
Afghanistan: l'Isaf favorable au retour des forces spéciales françaises
上にリンクしたオブスの記事でオーブナは「フランスは罠にはまった」と答えていますが、なんとも、フランスは“意図的に”アフガンの泥沼という罠にはまったということになる。
天然ガスをめぐって政治不安定が続くボリビアでも、エヴォ・モラレス大統領が天然ガス・石油設備に対し軍を送っています。まさに、石油・天然ガスという呪われた“黒いダイアモンド”をめぐって、世界が極めていやな具合に動いてる。
いずれにしろ、化石エネルギー源は枯渇する運命にあるわけであって、その利権をめぐって戦争を始めるよりは、長期的に考えて、代替となるよりクリーンなエネルギー開発と、無駄なエネルギー消費および環境破壊そして人間破壊の大いなる原因である紛争・戦争を限定する方向に思考を転換する、ってな提案は、誰もしないのかね。。。これは、あんまり儲かりそうにないからなあ、だめかなあ。
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すっかり秋となり雨が降る日曜をネット情報収集で過ごした。なにやら無性に腹が立つ。てなわけで今夜の夕食はカンタン納豆飯である。夕食後は冷蔵庫に残ってる夏野菜を使ってラタトゥイユでも作ろう。料理するってのには、神経冷却効果があるのだよ。
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