というわけで、なんだかひどく疲れたわけですが、何故こんなに疲れなあかんのかといろいろ考えながら、方々のブログやサイトコメント欄ながめておったわけです。
ね式講釈はこういうことだ。
今から23年目のことでありますが、ソルボンヌに通っておった頃、ルノー先生(マダム)が生徒たち(すべて非フランス人)に言ったよ。
「ダーティ・ワードを使ってはいけません。フランス人があなたたちに向かって言ったとしても、同様の言語レベルで答えてはいけません。ただ、それらの言葉が何を意味するのかは知らねばいけない。con という単語の語源はカント、すなわち女性のセックスのことです。でも多くの人々はその語源を知らずに使っています。それが女性蔑視につながる言葉だとは知らないのです。」
というわけで、もうすぐ4半世紀をこの土地で生きているわけですが、アタクシはCasse-toi(これはひどい、育ち悪すぎ)も、pouvre con も使ったことはない。例外としては、誰かがそれらの言葉をアタクシに発したならば、その言葉を?マークつきで、発言者に送り返したことはあったように思います。
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つまり、少なくともアタクシががーんと疲れたのは、
ムッシュX:さわらんでくれ。
フランス共和国大統領:だったら、消えうせろつーの。
ムッシュX:あんたがさわったら、わし汚れる。
フランス共和国大統領:消えうせやがれ、貧相なオXXX野郎!
で、よくよく考えてみたら、現在の(アンケートによる)サルコジ非支持率は大体60%なわけで、この60%に猫屋が入ってるのか否かは分かりませんが、アタクシだってサルコと握手は決してしたくない。
つまり、このヴィデオを見た(少なくとも仏国内の)半数以上の人間は、自分自身がダーディ・ワードで仏国大統領に“歓待”された、と感じたんだね。もちろん背景には、サルコ政治全般およびサルコ・ブリングブリング・メディア出すぎでこっちも疲れた問題等に対する批判があるわけだ。
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そんでもって、上のヴィデオの発祥紙であるパリジャン編集部が昨日月曜朝、読者8人と共にエリゼ宮に招かれた。直接、仏共和国大統領に一般市民がインタヴューするという企画なんだそうだ。
読者の一人が、土曜日のパリ農業フェアでの“pauvre con”発言は、サッカーワールド・カップでのジダンの頭突き、と比較しうるか?と聞いたんですね。これに対する仏共和国大統領の回答と、次のハイパーアクティヴィティに関する質問への答えの部分、パリジャン紙の記事:« Au Salon, j'aurais mieux fait de ne pas lui répondre » から抜粋・荒訳してみましょう。
Il est difficile même quand on est président de ne pas répondre à une insulte, j'ai sans doute les défauts de mes qualités. Ce n'est pas parce qu'on est le président qu'on devient quelqu'un sur lequel on peut s'essuyer les pieds. Cela étant, j'aurais mieux fait de ne pas lui répondre.
Hyperactif, c'est mon devoir pour réveiller un pays qui sommeillait. Je ne porte pas de jugement critique sur ce qu'ont fait, ou pas, les autres. Hyperactif, je le dois à la France parce que, si le président ne s'engage pas, ça ne bouge pas. ..
大統領であっても、罵倒に対して答えないでいるのは難しくて、これは多分私の価値の欠点なのだろう。大統領であるからといって、その人物の上で汚れた靴をふき取るべきではない。しかし、あのように答えるべきではなかった。
ハイパーアクティヴ、これは眠り込んだ国を目覚めさせるという、私に課せられた任務である。他の人々の行う、あるいは行わないことを私は批判・非難はしない。私はフランス国のためにハイパーアクティヴなのであって、もしも大統領が行動しないなら、なにも変わらない。。。。
ただ問題なのは、大統領回答の太字部分は、昨日夕方エリゼ宮の要請で付け加えられた、とパリジャン編集長が証言しています。つまりパリジャンの記事タイトルって、単なるエリゼ宮の意見であって、仏共和国大統領が“反省”したわけでもなんでもない、というオソマツ(あ、書き忘れましたが当エントリー・タイトルの mea culpa とは反省という意味でございます)。
以下は、ル・モンド関連記事です。ニコラ・サルコジ、そのやり方を肯定し 農業フェアでの口論に言及
LEMONDE.FR | 26.02.08
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というわけで、pauvre con も、si tu reviens, j'annule tout (サルコジからセシリアに送られたとする、メッセージ)が今ではハヤリ歌になったように、ダーティ・ワードから歴史的発言録入りしそうな雰囲気です。
なお、法専門家の皆様に参考:Casse-toi,pauvre con という発言は犯罪となりえる、という一弁護士の意見です。"Casse-toi, pauvre con" : un délit
またこれは、ル・モンド記事へのコメントにありましたが、実にハイパーアクティヴィティというのは病気なのであります。子供の症例が多いですが、これを抱えたまま大人になってる例も少なくはない。ただ、大人になってからの治療は難しいそうでありますな。さもありなん。
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そんなこんなで、一大事の“rétention de sûreté” と憲法委員会のエントリーはいまだ終わらず仕舞い、遅れとります、すんません。
最後に、猫屋今日の一言 “Casse-toi alors, pauv' petit con ! va ”
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3月4日に追加 Casse-toi , pouvre con / キャス・トワ・ポヴ・コン 翻訳集
サルコジ仏共和国大統領のおかげで、アタクシもこの汚い言葉が平気で言えてしまうようになりました(世界文化レベルの低下に、ね式ブログもおおいに貢献しているわけです)。
ル・モンド記事 "What does : "casse-toi pauvre con" mean in english ?" に、サルコ該当発言の外国紙による各国語翻訳が紹介されてて、コメント欄では読者の翻訳案も寄せられています。これは面白いのでいくつか拾ってみる。
Yahoo ! レクターからの提案 :
"Piss off, poor idiot" (piss off, dégage, mais en vraiment vulgaire) "Get lost, asshole" (asshole, littéralement trouduc, mais bonne traduction de con) "*****, you ***** !"
l'International Herald Tribune : "Then get lost, you poor jerk !" ("Dégage, pauvre idiot")
BBC: "Get lost then you bloody idiot, just get lost !" (bloody, littéralement : saignant. Ici : foutu).
AFP英語版: "Get lost, you stupid bastard !"
イタリア語/La Stampa : "Vai via, vai via, allora, povero coglione" ("Va t'en, va t'en, alors, pauvre con")
スペイン語/アルゼンティンの Clarin : "Rajá, pobre pelotudo" ("Taille-toi, pauvre con") / スペインの El Pais:"¡ Lárgate, pobre imbecil !" (Largate, tire-toi)" また読者からの書き込みでは"¡pírate, pobre gilipollas!"
ドイツ語です/ Die Welt: "Dann hau doch ab, Du armseliger Dummkopf" ("Alors tire-toi, misérable crétin !"), Spiegel: "Dann hau'doch ab, du Idiot
Tagesspiegel: "Dann hau doch ab, du Blödmann" (Blödmann, connard). また読者のひとりは"Hau doch ab, du Arsch!"を提案。
ポーランドでは、すでに "Spieprzaj dziadu !" と2002年11月に、仏語での "Casse-toi, pauvre con !"に比較しうる文句を使ったワルシャワ市長の Lech Kaczynski が著名でありまして、この言葉を印刷したTシャツやマグカップが大いに売れたとか。
なお、コメント欄でも多数の翻訳例があるわけですが、アルザス地方では: scherr'di weg, du arschloch であるとか、アスホールのスペリングが英国と米国とではちがうんだとか、con の英語版は意味合いが強すぎて使えないとか、知らなかった"Beat it, punk !" とか、デイリー・メール版は"Drop dead, you little cretin"だったとか、アラブ語では"maboul"、モロッコ版では"Tkaoud alhmar !"だとか、bloody ってのがマリア様に関連するとか、ふむ、勉強になるなあ。
日本在住のAlexandre+L氏は、日本人はたいへん育ちがいいので過激な訳文が見当たらないとしながら、 sassa to doké yo, kono bakayarô ! と訳しておりました。
なおヌイイ語での大統領発言翻訳は "Veuillez, Mon Cher Martinon, laisser votre place... rapidement, très rapidement" だそうであります。
猫は文明講座上がりか。サルコジネタはもう飽きたなー
投稿情報: ka | 2008-02-27 12:10
何と言っても大統領がこの言語レベルというのが...悲しい。悲しすぎる。
普段使ってないと出てきませんからねぇ~。。
友人でmerde!って言って、すぐにpardonと言う人がいますが、なんかほっとします。せめてこのぐらいの。。
いや。ダメ。やっぱり大統領はダメ。
言葉遣いもそうですけれど、その前に心に余裕がないと。。フランス人の風下にもおけないわ。(あれ?何か間違えたかしらん。笑)
投稿情報: ねむりぐま | 2008-02-27 22:13
33%。ふんばるぞっと!
投稿情報: Amina en résistance | 2008-02-28 00:25
エンタメご希望の方は、アサヒとかAFPとかのただ購読をお勧めいたしたいわけですが、あるいはバディウの新刊なら高くもないし、サルコばかりではない現在の権力構造っつーのがかなりタイートに分析されております。
放っておいたら、腐るのが人間。社会・共同体・インスティツーションも同様。
ところで、カナル・プリュスの風向き変更は、ラガルデール資本投入の結果だったようで、やっと気がついた。ふんばりませう。生活(というより人生)かかってるもんね。
投稿情報: 猫屋 | 2008-02-28 00:55