本日の夜8時、ニコラ・サルコジは、PPDA(tf1)とシャボー(france2)2人のジャーナリストを前に、エリゼ宮で45分間(tr1とfrance2の生中継)フランス内政について語った。主題は“購買力”であるはずだった。
サルコの提案したいくつかの政策の、---アタクシの耳には、いくつかの“ブリコラージュ/日曜大工仕事”としか聞こえかったんだが---内容と問題点については、これからメディアに出てくる専門家の論も読んでから紹介するとして、ひとまず気がついた点を指摘しK夫人のリクエストにお答えしたい(だって、ブログ書きで寝不足気味の猫屋宅に、K夫人からのアラームアラート・コールが毎日かかってくるんですよお)。
まあ、サルコの発言を全部聞いたわけじゃなくて、最初のほうの一部は台所のラジオで聞いていて、あと10分間ぐらいTV見てみただけなんで、たいしたことは言えない。
おまけにライヴでのサルコ・トーク、過去に見たのはたぶん選挙前のロワイヤルとの討論だけだったような気がする。だとすると2度目か。。しかしひどい。あれがフランスの大統領なのかね。
だいたいエリゼ宮に、外国要人は別としても、人を呼びつけるのはどうかと思う。なんか大統領、エリゼ宮にヒキコモリじゃん。あとは北京だ上海だモロッコだアルジェリアだと飛び回っておるが、たとえばパトカーとの事故で死亡した少年たちへの追悼の意を表すのであれば、親をパリまで呼びつけるんじゃなくて、少年たちの家に出向くのが本筋ってもんじゃあござんせんか?よくわからん。
コミュニケーション能力抜群のはずが、対話者の話聞いてない。ジャーナリストの質問に答えてない。あれだったらインタヴュアーいらない。ゲノの書いた原稿読んだほうがまだましだ。少なくともvoyou(ちんぴら)だとか、形容詞ではとって付けたような remarquable (注目すべき)、主語ではon (会話体仏語の主語、主体がだれだか不明)とかの乱用しすぎは避けられるだろう。orateur (雄弁家)としての資質ゼロ。要にあれは喧嘩語法であるね。
あのチック・落ち着きのなさは別としても、番組始めのサルコジの眼は、はっきりあの男の恐れを表していた。
これは細部なんだが、RERのD線で殺害された女子学生が病院で死亡したのは12時40分。終着駅で発見されたのは12時少し前。数個前の駅時点で殺傷されたと推定されるから、サルコが言うように「若い女性が日曜日の10時に郊外電車に乗るのは無謀だ(←記憶で書いてるから正確さにかけるかもしれないけど)」って、大きなお世話だ。だいたい彼女は死んじゃったのだよ。
ヴェリエ・ル・ベルで負傷した警官については賛辞を大盛り、チンピラ制裁への意志も大盛りだったけど、死んだ15歳と16歳の少年たちへのオマージュはなし、サルコによればバンリュウ暴力と社会問題に関連はないんだそうだ。マッチ・ポンプ健在なり。
もう一点の間違いは「オランド(社会党書記長)が言うのは月給3000ユーロもらってれば金持ちだそうだがウンヌン」。オランドが言ったのは4000で3000ユーロじゃござんせん。ビンボウ人には1000ユーロちゅーたら大金である。17万円である。スミック手取り(最低賃金)は1000ユーロに満たないんだよ。ボケ。
会社側と労組の話し合いがつけば、給与上昇の条件で35時間という労働時間を延長できるようにするんだそうだが、労組のない、あるいは力のない企業では経営者が好きにできるってことですか?民間では労組の力はどんどん落ちている。だいたいMEDEF(仏経団連)のパリゾは、勤務時間制限を取っ払えと提言しているわけで、サルコの言ってた日曜勤務(サルコが給与2倍にするそうだが、、誰が払いの?)を一般化して、結局のところサービス業(低賃金・容易な解雇・フレキシビリティ・パートタイム)人口を増やして、労働年数を引き伸ばす、つまり企業家の望む労働市場提供への布石じゃございませんか。。。
公務員も含めた全サラリー人口の時間外超過勤務税抜きとRTT(残休暇日数)の現金での支払いが、購買力向上に直結する政策だそうだが、さて財源がどこにあるのか?運び込まれたER患者ケアやってる看護婦・夫や、答案添削やカリキュラムについて行けない子供の課外授業やってる教師の無料超過勤務の支払能力が、国家にあるのか?
今まで、60歳以上無料だったtv視聴料(116ユーロ)を年寄りから取り立てなきゃならないほど困ってる国家公庫に、そんな財源ないでしょうが。。。大統領給与は上げたけど、、、、(なお大統領のひとりだけ賃上げ140パーセント・168パーセント・204パーセントなど多説があり、トランスパロンス目的の賃上げだったが極めて不透明なり)。
家賃高騰に対しては、法の規制する家賃上昇率を、現在の新住宅建設費用上昇率ではなく、物価変動に呼応させるといってた。これは悪くないかもしれない。でも入居の際支払う敷金・保証金の引き下げについては疑問。結局、賃貸しが家主にとってペイしなくなったら、家主は不動産高値が続いてる間に(つまりサブプライムの余波がマジ及ぶ前に)持ちアパートを売っちゃったほうがトクって計算になるかもしれない。
その他のブリコラージュは、この10月から実施された「超過勤務手当てに社会保障税をかけない」(これは経営サイドから「毒ガス室」だと不評をかってる)政策と同様、すでに複雑なフランス行政システムに新しい仕事・パイプ役・税計算etc.を付け加えるだけで、“経済成長率上昇” “国家赤字減少” “購買力増強” 等に悪い影響はあっても、よいニュースとよべるだけの材料は見当たらない。
たとえば、元来はスタートアップ企業が、有能な社員を引き止めるため持ち株をオファーするはずのストック・オプションが、フランスでは大企業幹部お手盛りボーナスとして機能しちゃってる。ストック・オプションへの課税は収入税だけで、企業サイドにも受け取りサイドにも社会保障税がかからないから、企業は、給与ではなく、お得で内緒なストック・オプションで幹部に“報奨”をばら撒く。だったらストック・オプションに課税し、国民健康保険の赤字や年金の赤字埋めしたっていい。これはセガンが提案したけど、サルコはストック・オプションには一切触れない。Medef の楽しい仲間たちに受けるはずはないもんね。
あとEDFの株3%売却して大学改革にあてる、って言ってたけど、元来EDF民営化プランには批判が多くて、国家持ち株キープするって約束で民営化すすめてるんではなかったか?
コルシカで知事を殺害した容疑でイヴォン・コロナが逮捕された時、当時の警察のオヤビンつまり内務相サルコはジャーナリスト集めて「殺人者を逮捕した!」と大喜びで宣言したのだった。けど、今行われてるコロナ裁判では容疑確定できていない。証拠がないんだ。これはヴィリエ・ル・ベルでの事件でも同様。サルコは「国家公務員に対して発砲するものは殺人罪で裁かれる!」と宣言。でも担当検事がたてた容疑は「過失致死」なんだよね。
サルコは大統領なんであって、司法検事でも裁判官でもない。、長年の夢どおり自分の給料は大企業CEOなみに上げたわけだけど、サルコは企業家ではない。EDFの株売却を決めるのは企業上部と株主ではないんですか?
ヌイイという極めてアーティフィシャルで歴史のない成金街の行政管理と、RPR・UMP という保守党乗っ取り大作戦と、それから一国を統治する大統領職とは、まったく性格も重要さも違うのだ。
サルコジへの支持率は50パーセントを切ったそうだ。
参考
リベによる抜粋 Nicolas Sarkozy: «J'ai été élu pour cela, je fais le travail»
フィガロによるサルコ支持率下がるの記事 La popularité de Nicolas Sarkozy sous les 50 %
以下はブログVive le Feu ! から。
"S’agissant de la situation dans les banlieues (...). Sur les ruines de la démocratie s’installe la voyoucratie". (Jean-Marie Le Pen, dimanche 26 septembre 1999.)
"Ce qui s'est passé à Villiers-le-Bel n'a rien à voir avec une crise sociale, ça a tout à voir avec la voyoucratie". (Nicolas Sarkozy, jeudi 29 novembre 2007.)
見るんじゃなかった、、、。 期待してなかったけど、あそこまでとは。
まず、わたしもvoyou(与太者)発言に、ビックリ!大国の大統領が、公の放送で発言なさるとは、まあ御下品な! 2番目に、アナウンサーの質問に、リディキュルと答えたのには、目が飛び出そうになってしまいました。 質問してる2人も、最後はあきれて物が言えない状態だったと、確信。
とにかく、猿ちゃん、『Il faut aimer les francais』です。
どんな、オリジナルでも、フランス人はフランス人で権利があるのだから、その点シラクの博愛は、一国の大統領のそのものだったなあ。
abbe pierre も言ってたように、人の道は<aprendre aimer >という事なのだ。
投稿情報: k | 2007-11-30 10:02
そろそろ巷のフランス人も、壊れてないバイクの写真とか見て、やらせ、を察しているようです。きょうベルサイユを通ったら、警官が旗持って、シュプレヒコールしながらデモってました。
トッドが明快なわけは、数学的発想だからかも?定理ってシンプルだし、数学は美しいと誰かが言っていましたね。
ラシダ嬢と再婚するのではという噂を聞きました。そういうのってあり?
投稿情報: ラム | 2007-11-30 21:40
この番組、本当にひどかったですねぇ。
フランスの大統領とは認めたくない。。 フランス人はどう思って見てたのでしょう。
やっぱり「営業部長」って感じです。
しかし死亡した少年たちの親族をエリゼ宮に呼びつけたのは開いた口がふさがりません。。
インタビューもですよねぇ。なのに最後に「Merci de m'avoir invite」 え?? 強制的に番組設定して、インタビュアー呼びつけて、これ?
シャボーはよかったですが、PPDA、特に前半、愛しの恋人をみつめるような目だと思ったのは、私だけでしょうか。。
投稿情報: ねむりぐま | 2007-12-01 00:31
もうねえ、なんでアタクシたちは遠いおフランスまで来たんだか、、、高い税金払ってんだか、よくわからんですよねえ。
ヴァンドームで法曹界デモもありました。学生のほうは納まりつつあるようです。でも、鉄道系は交渉がうまくいかなかったら18日からストかも、あとエアフラはクリスマス直前にストするとか。。まあ、金なくて家から出ないアタクシは案外平静であります。出ると管理人に顔あわせる。すってーと年末の礼金ださなアカンわけであります。
投稿情報: 猫屋 | 2007-12-01 03:39
Toddをぐぐってみたら、沢山。写真も見て納得。彼の文章は大意は掴み易いですが、全くわからないタイプの仏文があります。帝国以後は読んでいませんが、http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?ItemID=11551
トッドが朝日編集者と対談していて、日本とイランが核を持てば、世界は安定すると言ってました、、、解之articleは私にはお手上げでした。天変地異も日々の事件も心配のタネにはこと欠きませんネ。
投稿情報: ラム | 2007-12-02 19:24