ル・モンドによるサルコジの減税政策に関する記事です。エリゼ宮の発表によると合計11ミリヤール、つまり110億ユーロの減税だそう。これはあくまで政府の出してる額でありますね。猫屋計算機ではゼロが多すぎて円換算でけまへん。筆算してみたら1兆7930億円になりましたが、あってんのかなあ、まったく自信なし。
ニコラ・サルコジ、自家税改正案を課す
フランス世帯にあてた110億ユーロの減税
景気と購買力の上昇を狙ったニコラ・サルコジの意図を具体的に述べた、これから五年にわたる大統領任期にでの最初の大型プロジェクトが、6月6日水曜に国務院(le Conseil d'Etat )に提出され、14日にはその判断が公表される。勤労再評価をスローガンとして選挙キャンペーンを行ってきた共和国大統領は、減税と野心的政策:超過勤務の非課税化、学生の労働に対する非課税化、本居購入借り入れ金利額の所得税控除、また企業家の巨額退職金の制限枠付けおよびストック・オプション授与の明確化など、を打ち出した。
この膨大な戦略軍備配置には、年間に値して110億ユーロの経費がかかるとエリゼ大統領宮は評価しているが、これは最小値であろう。大統領選キャンペーンでの公約のほとんどを、元首は鉋がけ(経費節約)なしのままにしている。例をあげれば相続税、および一挙に社会税(les contributions sociales)も上限内に含まれることになった資産税上限盾である。大統領選挙での賭けは無傷のままである:支出増大のおかげで、フランスに欠けている経済成長を促進し、結果としての経済成長が改革をファイナンスするというものだ。
超過勤務
官・民の被雇用者の超過勤務手当ては、上限なしに社会税を免れる。この減税策は35時間法を排除することなく、超過勤務希望者に限り現法による220時間超過勤務に適用される。
これはパートタイム勤労者の各労働契約時間数の10%まで、時間給被雇用者また多くの管理職に適用される。CSG ・ CRDSを含む社会税全体が免除される。被雇用者20人までの企業の超過勤務加算は、10月1日より、10パーセントから25パーセントに引き上げられ、 被雇用者20名以上の企業と同等になる。
フランソワ・フィヨン首相は水曜の朝、25億から30億ユーロの数字を出していたが、水曜夜の説明によれば、この改革だけで60億ユーロまでの出費となる。実際の出費額は行われた超過勤務の時間全体数によって決まり、見積もりは現在の年間9億時間を基にして計算されていると考えられる。社会保障税の免除などに関わる数値については政令で決められる。
学生勤労者
税法プロジェクト第2条によれば、学費を捻出するために働く若年者層への支援として、スミック/最低賃金の3倍を上限として、労働収入に対する所得税が免除される。
現行の、21歳以下の学生の夏季およびヴァカンス時のアルバイトに関する所得税免除が、勤労学生、つまり全学生の二分の一に(両親の税申告にその収入が加算されるか否かを問わない百十万人を可能対象として)適応される。年齢上限は現在の21歳から25歳に引き上げられる。持ち家促進
自宅購入のための不動産借入を有するものは、カップルの場合1500ユーロ、独身者の場合750ユーロ、また扶養者一人あたま100ユーロが、五年間の間、毎年の所得税から控除される。
これは、借入金の金利20パーセントに値し、年間金利上限は独身者が3750ユーロ、同一所得税申告するカップルの場合7500ユーロ、扶養者一人あたり500ユーロが加算される。/ この減税は、新規の貸し付け契約にも、またすでに返済中の契約に関しても該当法の実施日から適用されるが、結局のところ住宅購入より5年の間に限定される。
相続税
フランス国民の95パーセントにあたる人口の相続税を免除するこの法案について、大統領は根本的政策を決めた:これまでの相続税免除額上限76000ユーロに代えて、婚姻関係あるいはパクスでの配偶者への相続税全額免除。欧州の多くの国がこの方法を適用している。贈与に関しては、各子女は両親双方から6年ごとに、現在の5万ユーロに代えて、15万ユーロの贈与を無税で受け取ることができる。同様に、相続税に関しては、控除上限額は現行の3倍の15ユーロとなる。
反対に、相続積極資産(l'actif net successoral)全体への5万ユーロの控除は撤廃される。5万ユーロの控除は、甥と姪に適用される。最後に、生存贈与は簡素化され、子女・孫あるいはひ孫、また以上の相続人がいない場合は甥あるいは姪への、現金贈与は2万ユーロまで譲与税が免除される。
2000年において、相続額(net)平均は10ユーロであったと国税庁は見積もっているが、当時この金額は、法の性格上、税金免除で相続されている。2005年において、相続税は73億3千万ユーロ、贈与税は14億2千万ユーロを国庫にもたらしている。
税額上限盾(タテ/bouclier)とISF(高資産税)
2008年1月1日より、所得税・高資産税(ISF)・地方税および不動産税からなる直接税の全体と、社会税(CSGとCRDS)の合計は、税支払い者の収入の50パーセントを上限とする。
2006年に設定された税額上限盾は、社会税を含めて60%だった。この減税の効果に浴するのは、より裕福な人口である。平行して、ISF(高資産税)の全額あるいは一部を、年間5万ユーロまでPME(中小企業)、あるいは公益組織(パブリックの研究・高等教育・あるいは同化アソシエーションまたは企業)に投資できる。
Rémi Barroux et Claire Guélaud レミ・バルー、クレール・ゲロー
翻訳後記:ヤット訳し終わりましたが、専門用語が多くて、、いや貧乏猫屋には根本関係ない政策ばかりなんで、いまいち本気になれない翻訳でした lol 。
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こちらはリベによるサルコジ税改革の概要と、それに対するリアクション記事です。
Les mesures phares du «choc fiscal» de Fillon / フィヨンの「税制ショック」の主要策Sarkozy met en place la croissance de classe / サルコジは階級経済成長を稼動
オプスのサルコジ帝国構造図;経済界との結びつきについての記事。
Les amis de Nicolas / ニコラの友人たち
ロイターの健康保険改革に関する記事。
Fillon confirme sur les fonctionnaires et la franchise médicale
翌日記:一つ前のエントリコメント欄に書こうと思ったんですが、ブログ主筆のコメント書き込みがエントリ本文より長いってのも、ナンカナーなので、ここに:ル・モンド経済記者エリック・ル・ブッシェの記事は、時としてFT(ファイナンシャル・タイムス)ばりに仏政治の経済感覚のなさを批判して社会派読者からキツイコメントもらったりしてたんですが、ここのところサルコジ政策には極めて辛口だ(あくまで猫屋の読んだ記事についての印象ですが)。サルコジ路線はリベラル経済専門家に批判される(リベラルなはずの)保守政策なんですね。やはりレーガン(リーガン)のことを思いだします。なお、エリック・ル・ブッシェの記事2本スクラップしておきます。
いつも貴重な情報を提供いただき感謝しています。ELBの記事、とても興味深く読ませていただきました。そうなんですね、現政権の経済政策は、実際は迎合的な施策満載で、とてもリベラルと呼ぶにはおこがましいものでしょうね。でもそれがフランスの現実だと思います。世界的な競争に抗するためのリベラルな政策を迎合的な政策と組み合わせることなく打ち出せば、1995年のジュッペの二の舞になる。本当の目的は巧みに隠蔽されている。サルコ政権のその巧みさは「目的は手段を正当化する」という欺瞞的な方法論に裏打ちされた危うさを内包していると思います。フランスの多くの有権者は実はそれに気付いて知らん振りをする程度には成熟している、、、、と思うのは読みすぎでしょうか?彼の「目的」が欺瞞的な手法を正当化するほど「フランス」と「フランス人」の将来にとって有益かどうかに賭けている、意識的にせよ無意識的にせよ、そんな気がします。駄目だったら、次に替えればいいや、って。
投稿情報: 田川 | 2007-06-09 09:14
たしかに、フランスの必要とする“改革”をサルコジだったらバッサリ実行できるんじゃないか、という期待は理解できないこともありません。任務を果たして5年たったら退場していただく、と言うシナリオですね。ただ、そう考えてサルコジあるいはUMPに投票する選挙民はあまり多いとは思えない。
まず、ELBの記事でも出てくるけど、サルコジの“思想性”、あるいは危険性でもいいんですが、大統領選挙のときにアンチ・サルコというのが、日本の“左翼”囲い込み(レッド・パージ)と同様に、カリカチュア化からマイナス視され、いつのまにか消えていった。逆にメディアがつくりあげたサルコ神話にのってサルコ信仰ができあがっちゃった。ふたつ目は、ル・モンドのこういった記事の影響力(読者数)が10年前とは比べ物にならないくらい減ったことがあります。アシェット・ブイグがトップになってやってるメディア統合が進んで、(日本でのアサヒバッシングを思い起こしてください)、批判的メディア媒体は日に日に少なくなっています。
天気の好いパリの午後に、カフェのテラスでル・モンドを読む人間は、今では本当に少なくなりました。メトロの中でも珍しい(みんなあのヨットの持ち主のタダ新聞ですよ)。EUもあるので、実際の大統領の政治権限って国家マネージャー程度でいいのに、と思うんですが、ナニガナンデモ自分の自由(自由は自分用だけ、想像力も自分様のだけ)にしたい人がオヤビンになっちゃった。今のアタクシが望むのは、なるべく最小損害でこの5年が終わってくれることです。一番先に痛手をこうむるのはもっとも弱い人間です。
投稿情報: 猫屋 | 2007-06-09 13:20