毎朝の花粉症に重ね、昨日は(ほぼ)一日中(リースリングなんぞ飲みながら)PCにかじりついてたせいでしょう、やたら頭が痛くて、プールで泳ぐ予定は断念。今頃はシャルレッティ競技場でセゴの集会+コンサートが始まったんじゃないかな。
以下夜に追記:-4の夜版猫屋報告は、アスピリン飲んだけどひどく眠いので簡単に、
・ルペンはジャンヌ・ダルク祭(FN 祭り)で、支援者に向かって「第二回選挙では無投票を」と呼びかけた。しかし、ルペン派(前回全投票数の10.44パーセント)の多くはサルコジに投票すると見られている。
Royal Charlety 1/4
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・シャルレッティ競技場で行われたロワイヤル集会では場内に4万、入りきれない聴衆が外部に2万の計6万人が参加。計4時間にわたるコンサートの合間、夕方7時頃から約1時間ロワイヤルが演説。メーデーということもあって、労働運動について多く語り、「トラヴァイユーズ・トラバイユール」というラギーエのボキャやブザンスノーの「la vie vaut mieux que les profits / 人生は利益より価値がある」という言葉も引用、左派のカラーを押し出したものだった。今日のロワイヤルは白のスーツ姿で、穏やかなフランスは“あなた方”を必要としている、と国民の協調を呼びかけた。また、「ドックジネコはマルローではないし、ニコラ・サルコジはド・ゴールではない」という発言をはじめ、68年5月運動批判に対する歴史的意義訂正論を説くなどサルコジに対する諸批判も展開した。
猫屋の印象に残ったのは、はじめの言葉「Je vous salue (, peuple de France, libre, fier, insoumis et qui veut la victoire)」や、生い立ちを語った際に自分を「La fille de Lorraine」 と形容していたことなど。残念ながら猫屋の知識では、そんなに遠くまで解析できないわけですが、先にあげた引用の仕方と並行して、歴史的あるいは共同記憶に関するアルージョンが多くあったのだろうと推測する。サルコジの(非ロジックであっても)エモーションをかきたてる戦士論法とは極めて対照的だ。また対話・協調をテーマとし、たとえば母子家庭への補助や未亡人の年金問題などを語る場合にも、対象者と同じ高さに立っての話法をとっていた。管理・懲罰・努力・成功をキーワードとし、あるいは弱者を守るシェリフを(選挙戦おしまいになって)演じるサルコジの、縦型思考とはまったく逆のシェマをなしてる。
つまり、ネオ資本主義成功バンザイ失敗サヨウナラ縦型と、社会共同家族主義ライシテのマリア横型ね。
追記の追記:昨夜寝ながら考えたんですけど、今回の選挙戦での彼女独特のテンポ・ダウンした話し方も、計算されたとは言わないまでも、すくなくとも意識して用いられているように思う。(ひどい早口→ヴェイユ、など女性を含めた)他の政治家の話法とはまったくちがった語り方だ(ド・ゴール的ではあるな)。これ重要。なお、セゴには特別なヴォイス・トレーナーも(NSとはことなって)特定スピーチ・ライターもいないようです。チームと案を練って彼女自身が決定、という方式らしい。また、原稿を読む形が多いんだけど、原稿を離れアドリヴで話すときのセゴがもっとも説得力というか、なんだろう、habitée と形容する批評家もいるんだけど、要するに感動的。ここらへんは宗教説法専門家である博学チョロリン氏の意見も聞いてみたいところですね。NSとは対照的に、きわめて自己抑制の塊みたいなロワイヤルですが、社会党内選挙後のディスクールで、原稿なしで「母親である私は、ひとりの子供も置き去りにしたくない」という内容を話したときの例がそう。そういう時のロワイヤルは片手あるいは両手を挙げて、これも普段はやらないジェスチャーだから、よりインパクトが強くなるわけだ。Ségolàne, redoutable. 彼女の実名は Marie-Ségolène ですよ。**
ロワイヤル演説はウェブTV(セナ)で見ましたが、今日は休日なため、プレスもTV(20時ニュース見なかった)も大きい反応は見せていない。明日のTVでのサルコジ・ロワイヤル討論から、最後の駆け引き、そして6日日曜の選挙に向けて、メディアは一息ついているといった様相だ。(以上現地の猫屋がリポートしますた)
以下は今日のクリップ。
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セゴレンヌ・ロヤイヤル、女性と政治:フランスで女性参政権が確立されたのは世界でもかなり遅い1944年なんですね。現在でも仏議会で女性の占める割合は12.3パーセントで世界第88位だそうだ!詳しい数字を出しながらフランス政治と女性の関係を書いています。
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こちらは、1986年パリの5月運動を現在のフランス衰退の根源だと(40年たった今)言い切ったサルコジ候補に対する、ダニー・ザ・レッドの返答。インタヴューです。
LE TEMPS.CH | 01.05.07
下はサルコジ発言に関する記事。68年5月の隠された犠牲者
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笑っていいのかどうか悩んじゃうトピックですが、米国のケーブルTV用サルコ演説翻訳に "J'invite les Français à rallier mon ego surdimensionné"と訳してしまって職を失った在仏米国人翻訳者の話。ニコラ・サルコジの “超特大サイズエゴ” と翻訳者
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アンチ・サルコブログから拾ってきました。短いけど サルコの英語力(音声です)。
なお各候補のプライベートライフについての情報は、ちょこちょこコメント欄に書いてますのでよろしく(ググッテね)。
ロワイヤルのクリップ見ましたよー。まず聴衆の数に圧倒ですねぇ。肝心のロワイヤルの演説、じっくり視聴したわけではありませんが、フランスの3大国是の一つたる fraternité に至る形で話を随所に持っていく印象をもちました(もちろんそれに結びつく「連帯」へと)。「連帯」の旗手ロワイヤルという印象でしょうか。あと、細かく見ると、猫屋氏もご指摘の通り、ゆっくりとしたテンポ、白とオレンジの服、両手を広げる身振り、声も低めで、どっしりとした安定感を与える感じですよね。それと、大事なところでは類似した言葉を選んで、それを積み重ねるような形で述べていくのも、盛り上がりを演出する効果があるように思えます。いずれにせよ、フランスの歴史、美徳にロワイヤルと聴衆を収斂させていくような語り方で、これは厖大な聴衆を飲み込んだ場の状況と合わさって、かなりボルテージを上げさせたイヴェントになったのでは。
まあ、TVで視聴してた人達の反応はどうかわかりませんが。さすがに中世の説教とは趣向が違ってますよね。フランス政治史上、歴代の雄弁家の語り口っていうのにふと興味が出てきちゃいました。アメリカ歴代大統領のスピーチの比較とか。研究ありそうですが。
投稿情報: chorolyn | 2007-05-03 20:23
おお教授、お体の具合はどうですか?
シャルレッティはフランス左派運動でも過去に大きなイベントが行われた“記憶の場”であるようです。嵐の予想もあったけど、セゴがどうしてもあそこでやりたいと主張した。まあ、ただのコンサートに釣られていった少年少女も多かったようですが、それにしても凄い動員です。たしかに演説というのは、ケネディ・ルーサーキング・ドゴール・チャーチル・ブレア・ミッテラン等々歴史的大物がいるわけで、ヒットラーも含めて語るべきは多いだろう(多杉)。日本ではないよなあ。頭に浮かぶのは、天皇の敗戦宣言ぐらいだ、政治的ディスクールって。あとは石X、X泉の暴言とかだし。
猫屋選挙サポート歴もジョスパン、ゴア、ケリー、欧州憲法、日本民主党等々と敗戦続きなんですが、今回はこの流れを展開したい。だってどの選挙でも、その後の政治は悪くなってるわけだし、マンガイチ、ロワイヤルが選ばれたら、これはデモクラシーの勝利だと考えます。
関係ないですが、中世カリスマ宗教家とか騎士団が十字軍に出かける前とか、ロベスピエールやダントンの演説リアルDVD、、あるわけないけど見てみたいですねえ。
投稿情報: 猫屋 | 2007-05-03 23:13