4月5日のユマニテで、トッドは大統領選についてインタヴューに答えています。対サルコジ・レジスタンスが着々と組織されつつある選挙2週間前ですが、しかし。どうなることやら。
Emmanuel Todd :
« Notre société se radicalise » エマニュエル・トッド:「私たちの社会はラディカル化する」 、一部翻訳紹介します。
...もしわたしたちが、この社会の代表者が経済システムに対する-有効で理性的で合理的な道である -意義申し立てと、犠牲の羊(boucs émissaires)のあいだで躊躇しているのに立ち会っているのであれば、ぎりぎりになってナショナル・アイデンティティ議論を組み立てようとするニコラ・サルコジの試みが完璧に怪物的であるのは明らかだ。 (訳注:市長であった)ヌイイ市の外で参加した選挙すべてに敗北した(これは事実である)ニコラ・サルコジを、無意味でばかげた政治家と判断できなくなったのは、これがおそらく初めてである。 サルコジは選挙戦のカタストロフそのものだ。 これまでも、また現在も私はサルコジが高い投票率を取る可能性は少ないだろうと思っている。 2002年のシラクと同率を取ったとしても、それは大きな驚きだろう。 私にとってサルコジは未試験選挙物体なのだ。 しかし、選挙論争の中心にゼノフォビア・エスニー(外国人嫌悪・民俗性)を持ってくるとは信じがたいことだ。 この男は、論議をリアリティの鳥羽口で(アクテュアリティを)主題とする責任を負った。 この意味ではフランス社会での歴史的断絶を身をもって示したといえる。 おまけに彼がやったことはフロン・ナショナルの利益となってしまう危険性がある。。。
。。。ボナパルト(ナポレオン)は、それでも平等によって支配されたフランスの“価値” 権威を具現していた。 サルコジは、まったくもって平等という価値とは無関係だ。彼はブッシュに従属していたし大企業経営者たちの友人だ。 不平等の男だ。この意味ではフランス文化システムの産物なのだ。 この同じ理由から、彼の行く先はそれほど長くないと思える。 彼の前論理段階思想は不気味だ。まずNATO・ブッシュ主義者だった。 そのあと Guaino(訳注、サルコジの演説ライター)が書いた演説では、国民共和派。 つぎは、移民問題でペタン主義者になった。。。こう考えざるを得ない:この男は、すべてをでたらめに語り、プログラムを絶えず変更するスタイルの《解放者》であって、その政治メソッドはヨーロッパ史におけるファシストたちによって教授されたのだ。
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トッド風には、サルコは独裁者の見習い魔術師ですか。オンフレイのブログ、アクトII では、サルコジ精神分析されちゃって、おまけにオンフレイに憐憫されてました。
また、辞任したベガグ相(Azouz Begag)の本が話題になっています。一部は雑誌 Marianne で読むことができますが、サルコジ氏のダーティ・ワード語録になってる。ここ。
しかし、NSが大統領になっちゃったらどうするんだろう。トッドもオンフレイもベガグも、france3 のキャスターお姉さんも、島流しでしょうか。郊外大暴動が起きても、誰も止める人がいなくなりますね(←いつもの悪い冗談です、スミマセン)。
追加:ボーっと復活祭日曜の仏ウェブ界を見回してましたら、テレラマでトッドのインタヴュー発見(3月3日)。ヨーロッパ経済保護の可能性を訴えていますが、本論とは関係のない最後のところ(が個人的に面白かったので)紹介します。
研究調査への嗜好はどこから来るのですか?
受けた専門教育から。私は歴史学者です。歴史の続きを知りたいと思うのは普通じゃあありませんか? イランに行ったことはないし、私がそのシステム崩壊を予言する以前のソ連にも、18世紀にだって一度も行ってみたことはないのです。これらの国に関して、私は歴史家として文献・資料・統計を調べる。そして傾向を延長する。。。すべての歴史家が近未来に散策するわけではないですが。。。人は、しばしば現在から逃れるために歴史に向かう。かつて起こった騒ぎや熱狂の中に避難する。けれど中世研究家と話していると、彼らが現在について鋭い洞察力を持っているのに気づかされる。単純に、彼らがそれを好んでいるわけではない。現在がかなり危惧される状態なのです。今、私は過去における家族システムについて調べていますが、自分の小さな仕事部屋で小さなカードをもとに中国での家族共同体の発達時期を限定しようとしている時、自分は保護されていると感じるのです。
トッドって、ポールニザンの孫でお爺さんとおんなじ共産党員ですね。サルコジは確かに相当危うい。でも、それなりにプラグマチックな独裁者。ロワイヤルはスターリン的偏執狂。バイローの支持率上昇はアンチ・サルコ、アンチ・ロワイヤルがいかに多いかのバロメータに過ぎない。フランスも後五年たいへんだ。
投稿情報: 田川 | 2007-04-08 13:20
田川さん、はじめまして。んーと、統計学者トッドはニザンの孫だけど、現在でも共産党員カード持ってるかどうかは疑わしい。EU憲法国民投票では、賛成票を出していますし、いかがか。大体ニザンの時代と今とでは、党自体の性格も位置づけもかなり違ってますね。
猫屋評では、サルコジは某小泉と同じアメリカン・プラグマティズム・コピペの自己権力志向者。ロワイヤルについての評価は、実際には中央での政治経験が長くないから、つけにくいわけですし、(いちおうロワイヤル支持移民のひとりとしては)“スターリン的偏執狂”というのは、ちと“マチズム”的表現じゃないかと思われ。まあ、その伝で言えばメルケルもかつてのサッチャーも、あるいはヒラリー・クリントンも“スターリン的偏執狂”になるな。ところでヒットラーとスターリンの犯罪は比較しうるとお考えですか?
投稿情報: 猫屋 | 2007-04-08 14:15
ちょと調べてみたんですが、歴史家サイト:http://www.herodote.net/personneTodd.htm
などによると、トッドは17歳のとき(1968年)共産党青年部に所属したが、その後は党を離れたとあります。以上ご参考まで。
投稿情報: 猫屋、続き | 2007-04-08 14:59
猫屋さん、いつも精力的な翻訳に感謝・関心しています。トッドの件、不確かな情報ごめんなさい。
ヒットラーとスターリンの犯罪比較はフランスでは井戸端会議でいつも聞かされますね。南京虐殺なんかの議論と同じで、どうしても政治的なプロパガンダにならざるを得ない。ロワイヤル嫌いの移民のひとりとして、「スターリン的変質狂」もプロパガンダでした(笑)。
投稿情報: 田川 | 2007-04-08 17:49
どうもSRのポールの数字が(また)落ちてるんで、気が荒くなってる猫屋にレスいただきましてかたじけない。ヒットラー・スターリンの話は、リテルの本でも出てきましたですよ。なかなかここいらの、“共産主義”との“シメ”のつけ方がうまく行ってない、ってのが左派の難しいところだよな、と感じます。
しかし、どうなるんでしょうかねえ、大統領選。もう一度ル・ペンが上昇してくる可能性もあるし、バイルー票は浮動してますし、移民としては気が気じゃない。
投稿情報: 猫屋 | 2007-04-08 18:41
隠れル・ペン支持は意外と多いですね。普通に話していても、比較的進歩的な意見を言っている人の中にも、ル・ペンへのシンパーシが見え隠れしている人もいる。こういう人は、アンケートでは絶対本当のことは言わない気がする。また、地方に行くと、郷土愛・愛国心と反欧州・反移民が分かち難く結びついている人達がいる。フランス人のパリ嫌いは、左右問わず根強い。余談だけど、マルセイユで75番の車には乗らないほうがいい(笑)。これも、潜在的なル・ペン票。でも、今回は批判票の受け皿としてパイルーもいるから、茶番の再現はないと思いますが、、、。
でも、ロワイヤル贔屓の猫屋さんには申し訳ないですが、移民として、正直に言って、彼女の移民政策の破綻とその反動の方が怖い。
投稿情報: 田川 | 2007-04-08 23:15
なんだか、以前に(今は日本にいると想定される)fenestrae 氏に猫屋は典型的パリのboboだと言われちゃったのを思い出しました。ソウカモネ。
確かに、マルセイユは(ここからは)別天地であるな。パリ人が地方で運転するときは“なんだあのペクノ!”とか“プロヴァンシオー、ゴラ!”とはいらいらしながら言うですね。
でもって、猫屋はロワイヤル贔屓ではなく、どっちかというと生まれついての左派にして、仏ではロカール派ののちDSKサポーターだった。ただ、サルコジ・ストップ路線としてのセゴレンヌ(を生暖かく)支持という位置におります、はい。しかし、確か190万人の新規投票リスト登録者と従来の白票層、そしていまだ投票対象を確信してない層(たとえばトッドとかオンフレイ)がどこに流れるのか、、、自分が在仏移民でなければ、賭けでもして大いに楽しめるいい機会なんすけどねえ。
投稿情報: 猫屋 | 2007-04-09 01:41
後だしジャンケンぽいけど、今までの経緯を見ると、DSKだったら勝算は十分ありましたね。極左へ5%流れるけど、バイルー票から10%くらい取り戻せるし、サルコ票からだって数%取れるから、状況は逆転していたかもしれない。
こんな井戸端政談も世論調査のお陰ですが、昨日のF2ではその世論調査の恣意性と功罪について、面白い議論をしていましたね。まっ、ひと月たったら嫌でも結果に直面するわけですから、在仏移民としてまたその時考えましょう(笑)。
投稿情報: 田川 | 2007-04-10 10:29
ああ、アタクシもその番組ちょっとだけ見ました。たしかに、今回の選挙への注目度は高いし、同時に投票人の意見もまだまだ変わる可能性もあるし、かなりフロー度の高い選挙ですねえ。
第一回選挙まであと12日ですが、また面白い話があったら拾って紹介いたします。あと、ノラの難しい話を翻訳して、よきも悪しきも、選挙フィーヴァーを目撃して、なんとなく“選挙”というのも“歴史の節目”作る作業だよな、とか思っています。
投稿情報: 猫屋 | 2007-04-11 01:09