ますます盛り上がるアンチCPE運動なんですが、今日のル・モンドを読むと土曜日のデモ全国参加者数、警察の数字が53万人になってました。
今のル・モンドウェブ版特集ページを眺めても、どれを紹介したらいいやら分からない。たとえばAttention danger ! (危険注意!)とタイトルされた今日のエディトリアルは、実際の若・青年雇用問題よりも、来年に迫る大統領選が頭にあるヴィルパンは後に引けないのだろうと書いている。なんとも手厳しい批判ですが、たしかにこれだけ動員数があっても、もっとも政府よりのはずのCFDTまで含んだ労組プラス学生・高校生の反対があっても、該当法をいったん凍結するなりして各団体との交渉にかかる意向のないヴィルパンの態度には、国民のカンにさわる何かがあるようです。
今日夕方ラジオで、土曜日のパリデモ終了場所ナシオンで怪我をした郵便局職員(38歳)が頭蓋骨骨折でコーマ状態だという情報を聞きました。なにやら、広場に座りこんでいたところを後ろから警官隊あるいは機動隊に踏みつけられた可能性があるらしい。今のところ真相は分かっていませんが(何故月曜までこのニュースが流れなかったことも含め)この事件が今回の運動の流れを変えるかも知れない。ルモンド記事 Un syndicaliste du SUD-PTT dans le coma(郵便-南労組員コーマ状態)
土曜日20時前後のナシオンでは、解散する参加者と対する警察・機動隊の衝突があり、同時に“壊し屋”が周囲の商店を破壊したり、車が燃やされたりしたわけだ。これら“壊し屋”につられて熱くなる危険を知っている各団体は、行進内部に外部者が入り込めないようにするとか、各グループごとに内部保安員を確保するとかしてるはずなんだけれど、コンサートが開けるほど(クラヴィッツのフリーコンサートがここであった)のナシオン広場での解散は、混乱の原因のひとつだったのだろう。
今回のムーヴメントは、本来の新雇用法の枠を超えて『社会観』自体を問う運動になった。それで子供づれや祖父母世代の参加者まであったわけなんだが、同時に『とにかくポリスを叩きたい』 『とにかく何かを壊したい』さらには『とにかく他人が集まってやってることを壊したい』人間をも集めることにもなったのだと思います。
ヴィルパンは『対話を求める』と言いながら『議会を通ったこの法を撤回することは法制度の無視である』とも言っていたけれど、当ブログでも扱った学校休暇中の閑散とした夜の議会で可決された『植民地関連法』は、いつの間にかシラクがチャラにしている。CPEに関連してヴィルパンは今日(月曜)の朝に経済界大物たちと会談、午後には何人かの『青年たち』と会談していますが、テレビニュース(fr3)では、この青年達はいかなる団体にも属さないし、会談内容はCPEに影響なしだろうとコメントされていた。これではヴィルパン広報作戦効果に期待を持てません。
確かに若年者・青年の雇用問題は深刻だし、フランス高等教育が職業に直に結びつくプラグマチックなものではないのは事実だが、根本にあるのはオファーされる“堅い”就職先絶対数と雇用を求める若青年者数の間の乖離だろう。26歳以下に適応される2年間の雇用試験期間が、企業に安く簡単に更新しうる労働力を供給し、フランス経済への負荷をいったんは軽減するかもしれない。しかしCPEは安定した絶対雇用数を増やしはしない。保証のないアルバイト・パートタイムが一般化した国々での社会問題を見ればそれは明らかだと思える。
運動拡大化にともなって、実際には就職に困らないはずのグランゼコル学生団体も参加し始めたようです。湾岸戦争後の経済不振までは、エリートは数年ごとに会社を替わり、そのたびに給料を吊り上げていたのだが、今ではどの企業であってもM&Aや企業内再編成、プロジェクトの打ち切りなどで何時職を失うか分からない。普通の大学を卒業しても、研修・短期採用・失業を繰り返す若者は多いし、例外的に生涯雇用が期待できた公務員も、大きな国家財政赤字に伴う経費削減・人員整理、民営化に脅かされている。そういったバックグラウンドと、同時に定期的に街場に出て“反対!”と叫ばないとなにやら元気がうせる“国民性”のことも頭に入れないと、なんでこんなに大騒ぎしてるのか理解できないかもしれません。
参考:ル・モンドウェブのこのページで日付別の写真が見られます。
Pourquoi je casse なんで壊すのか、現場での写真とインタヴュー。