TVカナル・プリュスで12日夜8時に放映されたインタヴューについての、リベラシオン掲載ピエール・セリジエの記事 翻訳です。
Mondial: Zidane a voulu venger l'honneur de sa mère
ジダンは母親の名誉にかけて復讐したかった(タイトルかなりな意訳なり)
パリ(ロイター) Wカップ決勝戦でのマルコ・マテラッツィに対する頭突きについて、ジネジン・ジダンはイタリアデフォンサーが行った罵倒がどんどんひどくなることを何もしないでなすがままに出来なかったと説明した。特に対戦に見入っていた何百万という子供達にむけて、ジダンは自分を行為をおおやけの場で謝罪すると強調したが、同時に(その行為を)後悔はしていないと表明した。
フランスとイタリアの試合110分の時点で、マテラッツィはフランスチームキャプテンの母と姉妹を複数回にわたり愚弄した。
『ユニホームを引っ張るのをやめて欲しい。欲しいなら試合の後で交換しよう。』 と言ったとジダンはカナル・プリュスで語った。
『そうしたら彼は非常に重大な言葉(複数)を発し、これは私の最も奥深い部分を傷つけた。これはとても深刻でまた大変個人的なことだ。私の母と姉妹に関することだった。始めはそれを聞くまいとし、遠ざかろうと努力した。けれど彼はそれを2・3回繰り返し、事態は早く進展した。』
彼は敵対者を忘れようと努力したが結局は取り返しの効かないことをしてしまった。 突然振り返り、メテラッツィに向かうとその胸に頭の一撃を与えたのだった。
この行為をピッチ横に位置していた四人目の審判が報告し、決定的処罰が下された:レッドカード、速やかな更衣室への退却。
公式の詫び
キャリアー最後の試合で、ジダンは涙してピッチを後にし、試合残り時間を残りのチームメート10名に任せ、結局PK戦はイタリアの勝利に終わった(5-3)。
「顔面に右パンチを受ける方がよかった。」 とジダンは続ける。
「あれはやってはいけない行為だったことは理解できる。これは声をあげて言いたい。」「なぜなら、20億のひとびとが、そして何百万もの子供達が見ていたから。それらの人々のために、私はお詫びする。」と加えた。
「Wカップでの私の最後の試合の終わる10分前にこれが起こったこともすべきではなかったこともわかっている。けれど、私は一人の人間であって他の何者でもない。」
「そして私はこの行為を後悔はしていない。なぜならそうでなければ(=後悔するとは)、マテラッツィがああゆうことを言うのは正しいとなってしまう。」
マテラッツィはすでに愚弄したことを認めているが、SOSラシズムがみなしたようにイスラミスト・テロリストと呼んだことは強く否定している。
FIFAは情況解明のための調査を開始することを決定、セップ・ブラッター会長はジダンはWカップ最優秀選手賞を失う可能性もあるとほのめかした。 「挑発者を罰すべきだ。画像を見て、私に対して彼が何を言ったか調べるべきだ。もし誰かが唇の動きを読めるなら、私の言っていることが正しいとわかるだろう。」とジダンは望んでいる。
「私は挑発にのってしまった。私はやってはいけないことをして処罰を受けた。誰をも攻撃はしたくないが、自分を守りたい。つねに反発は罰せられるが、挑発は決して罰せられない。」 と彼は嘆いた。
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しかし、ジダンはどこまでも真面目な男なんだな、と再認しました。これがティエリ・アンリだったらきわどい冗談のひとつも言ってかわしていたかもしれない(試合当初に頭突きもらってたようですがこの人)。けれど、この6週間を通してチーム各個人の性格がそれぞれ大きく違っているってのがプレイを通して見えてきたように、人間ひとりひとりに「こうじゃなくちゃいけん」といった枠つけが効かない、個性というものがある。もちろんやっていけないことはあるにしろ、この個人差を受け付けない社会は閉鎖した生きてない社会だと猫屋は思う。そして個人個人にはそれぞれの価値体系があって、たとえばジダンにはWカップよりも母や姉妹の名誉の方が重要だったのだ。そういうことでしょう。
別エントリのコメント欄にも書きましたが、イタリアは試合当初からPK戦もちこみを考え、仏PK要因弱体化、さらには排除を狙っていたという印象を持った。その罠にジダンははまってしまったんだ。
また、あの最後のパネンカ・シュートについては、あのPKは絶対はずしたくなかったし、記念に残るようなものにしたかったのであえて試みたと語っています。。。後日チンピラ相手のヘッディングではなくて、こちらのシュートが語られることを願うばかりですな。
追記:ル・モンドの関連記事によると、このインタヴュー内で、ドニゾ(カナル+インタヴューアー)が「BBCでスペシャリストが解読した言葉は、今は誰でも知ってる。tu es le fils d'une pute terroriste だと誰もが知っている、と言われたんですね。」 と聞くとジダンは「んー、そうです。」と答えてます。直訳すると“テロリスト売春婦の息子”となる。(ちなみに猫屋、番組の前半分は見てない。)
なお、該当インタヴュー(期限限定かも知れませんが)現時点ではここで見られます。
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さて明るい話題を、と思いおとといあたりからフランス中に広まっている Coup de Boule という歌を内緒でアップロードしちゃおうと思ったけれど、残念ながらサーバーにスペースなし。これはK夫人がメールで送ってくれたんですが、プロ・ミュージッシャンがTVで現場を見て即録音。スカイロックでも紹介されメールで全国に広まった。この夏の流行り歌になること間違いなしの南洋系のメチャ明るい歌で、『ジダン頭突きしちゃった。トレゼゲ、キック入んなかった。シラクはとっても喋りすぎ、、』といった内容であります。決してジダンやトレゼゲを揶揄してるわけじゃない、と猫屋は感じますがどうでしょう。泣くより冗談化して笑ったほうがまし、というノリでしょうか。
コメント欄常連の方に限りmp3お送りしますので、リクエストしてね。(10名様限定なり)←追記:Imasaru氏のご協力を得て、該当歌の音源ひとつ見つかりました。これも期限付きかもしれませんがここで聞けます。ク・ド・ブウル(頭突きの俗語)
ジダンも早くビーチかなんかでこの曲を聴ききながら、笑って仲間とサッカーできるぐらい元気になればいいよね。
"Coupe de Boule"フランス音楽HPでも紹介されていました。L'express(URL欄にリンクを入れています)のサイトで聴けるようです。
右のスライドショー(国歌斉唱の後ろ姿〜失意のシャンゼリゼ)を見ながら聴くと臨場感が…あまりないけど。
フラ歌詞が聴き取れない私なぞはこっちでよろしいので10名にはカウントしないでいいですー。ちなみにこのサイトからのダウンロードは有料とのことですから猫屋さんへの営業妨害にはならないかと(?)。
で、歌詞がよくわかんなくても楽しさは伝わる。これは愛がなければ歌えない(はず)!
日を追うごとに肋骨の一本でも折ってやったらよかったのに!って気が増してくる自分は教育者向きでない、ならなくて正解だあ。ジズーよ、金球賞なんか返上しちゃえ!
投稿情報: imasaru | 2006-07-13 02:00
おお、しかしImasaru氏もかなりな仏オタ。てか、猫屋の“お仕事”を軽減していただき、まことに感謝いたします。エントリ本文にurl書いちゃいます。
なんだかこの歌、始めは Zidane, il va marquer /ジダン、彼ゴールするぞ!という歌で巷に広まってたんだけど、頭突きにリミックスしたら爆発的に繁殖しちゃったそう。これを携帯の着信音にするのが定番だそうです。この夏中頭の中でブルブルしそうな歌であります。南洋系アクセントがすてきです。
投稿情報: 猫屋 | 2006-07-13 02:20
はじめまして。shibaさんのブログと共に、昨年10月頃から愛読させていただいております。
最近はジダンのことが気がかりでそのニュースばかり毎日追ってます。フランス人の友達からのメールは“しょうがない”とすっかり立ち直りが早くて羨ましい…。"Coupe de Boule"がすっかり気にいったので引用させてただいてもよろしいでしょうか?本当に、悲しみを笑いで吹き飛ばしてしまうこのリズム!そして、猫屋さんがチラッと紹介した歌詞の内容にやられました!早くこの騒動が終わって、ジダンとみんなに楽しいバカンスが来ますように。
投稿情報: fumix | 2006-07-13 13:12
fumix さん、こんにちは。
"Coupe de Boule"、たとえばk夫人は“トレゼゲがかわいそすぎるから、一回しか聴いてない”って言ってた。それもそうですねえ。可哀想だ。(引用はどうぞどうぞ。)
先ほど日本の老父に電話したら、TVvでジダンのことばかり放映してると言ってた。(どこのメディアもネタさがしで大変だ。)自分でもネタ化しながらこういうのはアレなんですが、ジネジン・ジダンに“静かな生活”が早くやってくるといい、と思います。
投稿情報: 猫屋 | 2006-07-13 15:48
なんだか納得しました。ジダンにとっては母や姉の名誉のほうがW杯決勝より重要だったのだわ。。。
そしてそれを堂々と表明するのは人間として素敵ですね。
それにフランスは日本と違って、そういう価値観を受け入れますよね。
もちろん元々は「フランスのために!」闘って、実績あげて決勝にまで行って点も入れていたわけですし。
ジダン、確かにカナルプリュスのインタビューでBBCの解読について聞かれて「ウ~~ウィ。」とためらいながらも肯定してました。
最後の自分はいつもhonneteでありたいという言葉が響きました。。
ほんと、ジダンに静かな日々が来ますように。。。 インタビューで直接語ったから静まるのも早いと願います。
投稿情報: リヨン学生日記 | 2006-07-13 19:14
あと、インタヴュー見ててもわかるけどジダンは言葉の人ではない。マテラッツィみたいにあることない事考えもせず口に出す人間の逆だ。たぶん、このコミュニュケーションの弱さから、少年時の彼はサッカーを自分の表現とする方向に行ったんだろう。そしてあのジダンのプレイの華麗さが生まれた。(家族を含めた)自分の世界を守るためにフットやってる彼は、一瞬の衝動で、自分の世界を守るために、あの行為に及んだ。
こうやって考えると、スポーツってのはオートマティズム(自動化)の“アート/芸”であるわけだし、その上しゃべるかわりに動く人間のジダンがああやって全部ひっくり返してしまうわけで、これもまた一種の“美学”であるな、とも思います。するってーと、この“まれびと”ジダンはいくら平静な引退を望んでもなかなかそこに到達できない宿命なのかも、、などとロマネスクなことも考えたり。
投稿情報: 猫屋 | 2006-07-14 02:10
忘れてはいけない、ジダンはすごく家族を大切にするひとです。 日韓 開催w杯を覚えていますか? 3番目の子供が出生するまで、動けないからといって他のフランスチームより、遅れての日本入りでした。そのときも、はっきり「サッカーよりも、もっと大切なことがある!」と言い切っていました。
アルジェリアの人には、家族というのは第一なんですよね。
投稿情報: k | 2006-07-17 11:32