Le bilan chiffré de la crise des banlieues
フランスのバンリュウ騒動が治まってから2週間、ド・ヴィルパン首相はこの29日CNNで、92名の死者を出したロサンゼルス暴動(1992年)に比較し、”“フランスでは2週間の混乱の間に一人も死者が出なかった。”と発言。(猫注 パリは燃えている、という言葉を使って報道したのがCNNです。) 首相は、《暴動》ではなく《混乱》であったと反論している。
この発言はクリシ・ス・ボワの少年二人の死亡と、スタンでの住人の死、およびトラップでの高校警備員の死を勘定に入れていない。統一した形での公式発表がないため、ル・モンドはバンリュウを炎に包んだ三週間における、独自の人的および物質的被害レポートを作成する、、、。
10月27日から11月17日に3人の死者があった。27日クリシ・ス・ボワで警官から逃げようとしたと思われる少年2名が感電死。またスタンでは火災を防ごうとした退職者が身元不明者に乱暴を受け死亡したが、被害者の妻は郊外暴力とは直接関係のない報復行為との仮定を重視している。公式に騒乱が収まったとの発表後の11月21日、火の付いた車の消化にあたったトラップの高校警備員は窒息死している。また11月2日、セヴランの住民がバス内でガソリンをかぶり重症、数日の入院の後帰宅している。
ル・モンド紙に12月1日届いた内務相の報告書によれば、治安警察の動員が最も多かったのは11月13-14日の夜で11500人の警官と憲兵が配置され、217名の負傷者が出た(うち10名が10日以上の“病休”)。モンテルメイユ、グリニ、ブレスト、ラ・クールヌーヴ、サン・ドニでは治安警察に対して実弾が発砲されている。
騒乱側の負傷者についての正確な報告はない。CRSと憲兵は催涙弾とフラッシュ・ボール(猫注:サルコジが導入した硬質ゴムボール弾)が多数使用され、トゥルーズでは11月7日投げられた催涙弾を、警察の見解によると警官隊に投げ返そうとした青年(21歳)の手首が吹き飛ばされている。
11月7日、若い青年に暴行を加えた容疑で5人の警官が書類送還された(クールヌーヴ)。またこの時期、セーヌ・サン・ドニでの医療救急は普通時より出動数が少なかったと、緊急医療医責任者は言っている。
物質被害についてのリストアップ。
保険連盟の見積もりによると被害総額は2億ユーロ。うち焼かれた自家用車約一万台の損害は2千3百万ユーロ。自治体保険団体は当初2億5千万ユーロという損害額を発表したが、第一回の監査の結果、最終数字はこれよりも減る見込み。内務相は、300の自治体において233の公共建築物、72の民間建築が破損あるいは焼失されたと言及している。
教育省によると、管轄下の255の学校が11月1日から16日までに被害を受けた。割合を見ると中学が最も大きい被害の対象になっている。また体育館の破壊例も多い。(それぞれ各県での被害額は原文を参照ください)
ポスト(郵便局)に関しては、車100台が焼失、51の建物が損害を受けた(うち6郵便局は一時的に閉鎖)。
RATP(バス・RER)は140車両が黒こげ状態、うちバスおよびRER(郊外電車)10台が燃焼性投下物による被害。損害総額は5百万ユーロ。
文化とコミュニケーション相によると約10の図書館に破損が見られる。
パリ商工会議所の第一次暫定報告によると、パリとその近郊地区で被害にあった企業は約100に上る。オルネー・ス・ボワではルノー・ショールームと繊維関係企業の火災で2万平方メートルが焼失。
内務相によると、18の宗教設備が損害を受けた。ロマン・シュル・セーヌでは(カトリック)教会の屋根と祭壇の一部および家具が火災によって損傷を受けた。カルポントラ、モンベリヤールのモスクに火炎瓶が投げられ、リヨンでのモスク被害は限定的なものだった。ジョルジュ・レス・ゴネスとピエールフィット・シュル・セーヌのふたつのシナゴーグ(ユダヤ教会)が傷められた。10月30日、クリシ・ス・ボワのメスク近くで催涙弾が破裂、祈祷室内にガスが流入した。
以上の行為のうちの一部は法的対処の対象となる。11月30日の内務相報告によると、4770件の尋問が行われたが、その半数近くは出来事の後であり、4402件の一時拘束があった。763人が勾留処分を受けたが未成年者は100人を越す。
法務相によると、422人の成人が即時法廷出頭の後、有罪宣告を受けた。法廷は加えて、45人の成人を禁錮以外の罰則(猶予、公的労働)宣告し、また59人を釈放。法務相は最後に、152名が10日から2ヶ月間内の出頭命令の対象であると述べた。さらに重大な行為に対しては、135件の法的調査が始められた(意図的火災および暴力行為など)。
リュック・ブロネール パスカル・ソー/ Luc Bronner et Pascal Ceaux ル・モンド 05/12/02 より
お疲れさま。事実認識に徹した記事ですね。私は、初期のころ会話の中で「死人も出ていないのに車が燃やされたくらいでなにをがたがた...」というような発言でひんしゅくをかいました。若者たちの暴行で殺された人間がいるという情報でたしなめられながら。その後、前にtemjinusさんが訳してくれたトッドの文で少し意を強くしたのですが。重要なことは、機動隊と若者たちの直接な武装対決はみられないことだと思います。フランス騒乱史お得意のバリケードもない。組織的な略奪もなければ、やはり最初から組織的に人身を狙った行為もない。人の乗っているバスに対する放火があって(これも細部の解釈はいろいろ)、フィンケルクロートもグリュックスマンも、これをアポカリプスの図にしていますが、これも単発的なものです。学校が焼かれていますが、公権力を象徴する他の場所が狙われたわけではなく、コルシカの連中がロケット弾で税務署を狙うというようなものに比べれば、公権力に対する挑戦という意味合いは薄いです。それにしても、ヴィルパンの説明は、外国向けには騒動をミニマイズしようとしながら、それに対し非常事態を発令するというところで、一貫性という意味ではかなり苦しい。
投稿情報: fenestrae | 2005-12-02 02:09
そうですね。本来、フランスでの(あるいは欧州での)犯罪率は高いんだが、今回のようにまとめて燃えるとそこだけ見てしまう。TVで誰かが言っていたけれど、実際どこかで隠されていいるだろうTNTとかカラシニコフは登場しなかったし、16区やヌイイに出てきてメルセデスも燃やさなかった。ある意味、かわいいもんです。愛情不足の子供が軽犯罪を起こして人の注意を引きたがるのと同じでしょう。これは16区の子供もやっていることです。ただ、その時点で大人、あるいは政府がきちっとした“愛情を含んだオーソリティ”を示せないと、子供はとんでもないところに行ってしまう。この点はサルコジには分からない部分です。
まあ、フィンケルクロートもグリュックスマンがやってるのも子供の愛情不足と同じようなものだ。個人主義の果て、と見ます。
投稿情報: 猫屋 | 2005-12-02 03:29
>16区やヌイイに出てきてメルセデスも燃やさなかった
6,7年前東部ストラスブールの車焼き討ちが問題になったとき、確か車種の分析をした人がいて、やはり、一番被害にあったのはメルセデスなどの高級車ではなく、フィアット・パンダクラスだったとか...話してくれたのはシアンスポの学生で、やはり気後れして手が触れられないのだろうか?というような笑い話でしたが、標的は、自分の生活圏に属する財であり、生活圏外のもの(この場合メルセデス)には手が触れられない、というのは何か意味がありそうです。もっともそのシェーマが崩れるとすごいことになりますが。
投稿情報: fenestrae | 2005-12-02 04:00
そんなようなことはネグリも書いてて、シテのドラッグディラーの高価な車はちゃんと車庫に入ってるから燃えないんだそうで。ネグリとジジェクの文章面白いです。
投稿情報: 猫屋 | 2005-12-02 04:10