この週末に中田秀夫監督米国映画《THE RING 2 /LE CERCLE 2 》 を観た。鈴木光司の原作も読んでないし、日本版本家本元リング・シリーズも観てないし、ハリウッド版リメイク RING も観てない私が無責任に感想など書く。とても書きたいのである。
日本のウェブ見たら、この映画まだ日本では公開されていない。米国では興行経過なかなかいい線行ってるらしいが、同時にアメリカで見た邦人だと思うけど、彼らの書き込みではかなり評価が悪い。これって面白い。たぶん米ホラー映画大好き人にとっては今回の映画はつまらないのだろう。逆に、“スクリーム”とかが大嫌いであった nekoyanagi にとってはなかなかの秀作である。以下は、そのね式グルグル解説。
“スクリーム”は何故最悪か。
連続殺人に因果関係が見えない。つまり必然性がない。最終的には、シリアル・キラーは精神異常者なので人を殺してた、だけ。この映画が世界中のティーンエイジャーに受けちゃったのは、たぶん世界中のティーンエイジャーが理由もなく人を殺してみたいわけなのだろう、てのは言い過ぎだが、あんなに簡単に人が殺せるという“フィクション”と、人を殺してはいけないという“現実”の間を行き来する、スペース・マウンテンみたいな感覚をあの映画は映像にしてくれたわけ、と思う。何故か最後まで見てしまった非ティーンエイジャーの私はかなり気分が悪くなった。(仏語では acte gratuite/動機のない行為、 という)
“ザ・リング 2”は何故面白いか。
まず(今は有料化して一部しかお目にかかれない)3月20日付けル・モンドの1ページまるまる、この映画について書かれていた。中田監督へのインタヴューも、フィリップ・ポンス氏の日本お化け紹介記事も、映画評も大変好意的。短いけれど、リベでの記事もかなりポジティヴである。ちなみに2003年にこちらで公開された同監督の《Dark Water/仄暗い水の底から》も映画通には評判がよい。
映像がいい。以前エントリであつかった、《エレファント》のガス・ヴァン・サント監督が雲専門なら、中田監督は水専門。海の波映像の捉え方もだが、圧巻は風呂場のシーン。インタヴューによればハリウッド・スタッフが用意したシナリオ部分だそうだが、洗礼→再生のテーマを田中監督はうまく、というよりうますぎに処理している。浮き上がった水が一挙に落ちる、、、わけだが、ここはタルコフスキーのノスタルジアを想起させる。水だらけ。
ダイハードなシングルおっかさんを演じるナオミ・ワッツは、いつも母親をファーストネームでしか呼ばない息子が“マミー”とかいって擦り寄ってくるもんだから、息子に“貞子”じゃない“Samara” がのりうつってると分る。そこで息子を水死させようとするんですが(しかしひどい話だね、、)、その時 『I'm not your fucking mother !』 とナオミちゃんは叫ぶのであった。うっうっ。
肝心の呪いのカセット映像もなにやら良い。ひどく洋風であるがやはり陰湿に怖い。音はちと重たいか。
元作では“貞子”を殺した母親にあたる役をなんと、あの キャリーの Sissy Spacek が演じている。ウッシシ。
テンポが遅いのが良い。愛情も、憎悪だ、呪いだの、報復/リベンチだのも実に時間がかかるのは道理。“スクリーム”風早撮り、早回転シナリオになれたホラーファンには喰い足りないだろうが、スロー・ホラー、というよりもスロー・ドラマが情念の重さを上手く描くのだ、という、これがこの映画が米国・欧州で流行る原因と思う。ファースト・フードが飽きられて、スロー・フードが流行るのもこの流れ。スクリームのお手軽精神異常者犯罪ではなく、サイコのヒッチコック的犯罪謎解きに近いのだ、この映画。
映像も配役もとてもハリウッドなのだが、井戸と、水に濡れた貞子/Samara の黒い髪が日本的ではある。また、表向きはハリウッドでも、村上春樹用法にもある井戸の歴史的側面や、能にも見られる母と子というきわめて日本古典的関係が、オイディプス説に支配されそして崩壊した西洋家族像をトラウマする西欧人にとってはきわめて新鮮である。父親はとっくに消滅したが、ナオミ・ワッツの虐待母ぶりは21世紀的に頼もしいのだ。
参考:the Ring 2 オフィシャル・サイト
こんばんは。遅ればせながら初めてお邪魔します。ペンネーム、使わせていただきます(笑)。
リング2、ホラーホラーしてました?見に行きたいけれど連れがなんと言うか…で、ちょっと躊躇しています。
「シックス・センス」くらいなら大丈夫なんですけれど。
投稿情報: メディ | 2005-04-08 00:03
メディさん、こんばんわ。勝手に名前付けてゴメンナサイ(これは仏人風に発音)。案外かわいいでしょ。メディテラネアンのメディです。
「シックス・センス」が大丈夫ならOKでしょう。センスのほうが映像的には恐かった。ミリオンダラー・ベイビーは『明日のジョー』みたいだそうで(内田教授)、イーストウッド苦手なんだけど見てみようかとか思ってます。うちのブログ、映画専門にしようかな、、、とか思う春の夜。
投稿情報: nekoyanagi | 2005-04-08 00:41
え、真っ白に燃え尽きてしまうんですか!
うう、そう言われると迷いますね~。クリント・イーストウッド好きなので(なのにミスティック・リバーもまだ見ていませんが)。シックス・センスより怖くないということならリングも見に行きたいし・・・<両方行けって(笑)
投稿情報: メディ | 2005-04-08 23:14