ル・モンド2(週末版) 2005-02-17 プレネル/Edwy Plenel のエディトリアル日本語訳です
《その質問は発せられないだろう/La question ne sera pas posée 》
ジョージ・W・ブッシュは世界を変えたいと願う。我々がそれを理解しなかった場合に備えて、先週はコンドリーザ・ライスがやって来て思い起こさせてくれた。彼のリフレインとは、statu quo/現状維持にNo、VIVA自由 ! である。パリ・ポリティック・サイエンス学院という舞台で、入念な下準備のうえ行われた米国務長官のディスクールは我々の、思慮深く、時として疲労し、しばしばあきらめきったオールド・ヨーロッパを目覚めさせることで魅了しようと試みた。
『我々が現在直面する脅威は、絡まりあったものだと言う点で、我々は同意見である。ならばアメリカ人民とヨーロッパ人民はこの《自由の伝播》のための戦いを共に戦いましょう。』 と国務長官は2月8日に説明している。
治療効果は、診断のよしあしによるという事実は最も無学な医者でさえ良く知っている。今年の《脅威》の仔細リストは無視できるようなものではない。ところが、マダム・ライスのリストは、『テロリズム、大量破壊兵器の拡散、地域紛争、破産国家そして組織犯罪。』 と、厳密に安全保障に限定されている。このようにして、世界の人々の自由を脅かす危険(リスト)から、社会不均衡、無秩序な環境、大陸間・多国間・階級間格差、豪奢、さらには一部の人間の浪費、他者の貧困、そして飢餓の、富める者と貧しいものの格差から引き起こされるすべてが排除されている。コンドリーザ・ライスの自由は平等には憂慮しない。
まったく保守主義の革命
これは、社会不平等と結合する政治的自由そのものであり、それは隠されたものですらない。国務長官のパリでのディスクールの直前、ブッシュ大統領は、2005年10月から執行される2006年年度予算案を公表した。軍備から宇宙関連までを含む安全保障予算のすべてが増額され、社会関係予算は軽減されている。住居と都市計画、司法、環境、交通、鉄道設備、貧民国救済、学校でのドラッグ対策、文盲政策 など.について言えば、12の省と150にわたる特殊プロジェクトからなる徹底的な倹約案でしかないが、同時に2004年度税収入は1959年以来、最も低い額であった! 富める者はますます支払わなくなり、貧しいものに対する援助はますます少なくなる。 社会問題に関して言えば、ブッシュ氏とマダム・ライスは、まったくの保守政策主義者といえる。
美しいディスクールも、他のすべてのニュースソースと変わらない。切り取り、沈黙された部分に対峙し、コンテキストに沿って置き換えられる価値がある。マダムライスの発表ののちの文明的ディスカッションの場にこの矛盾を置いて欲しかった :不平等を憂慮するからほど遠く、逆に悪化させる自由とは何なのか? その名に値する民主主義が、寛容しうる貧困限度とは? もし我々が彼らの貧困をさらに耐え難いものにした場合、我々の高貴な思想/イデーは、貧困を生きる人々の心を長い間ひきつけることができるのか?
かつて世界が経験したことのない不平等
これらはアカデミックな疑問ではない。国連開発プログラムの作成した、南米民主主義に関する2004年レポートによると、21世紀初頭の南米における民主国家は、いまだかつてない数に及ぶが、南米人口の過半数は、不平等問題を解決できる独裁政権ならば支持する用意があると示している。 すくなくとも世界レベルでの比較では、近年の南米貧困問題は、解決に向かう様相を見せるにもかかわらず。 それと同時に社会層間の溝は広がるばかりだ。今日の世界でもっとも貧しい層(総人口の10%)の収入は、最も富んだ10%人口層の40分の一であるが、この差は20年前は24分の一だった。
グローバリ化した我々の世界は確かにより豊かになったが、それにもまして、過去にないほど不平等になった。 南米の例に限って言えば、ウーゴ・チャベスのポピュリズムの成功例や、あるいはカストロの独裁性の人気などは、驚くべきケースなのか? それが国連開発プログラムレポートの提出した人騒がせな疑問である。ここで強調されるのは、社会市民性は贅沢ではないが、民主主義への条件と、不平等に対する政策は、実際は、経済的有効性の結果であるということだ。
パリでは、社会問題に関する質問はコンドリーザ・ライスに対して問われなかった。 これは、某大臣の息子と同姓同名の学生が聞いてみたいと望んだが前もって断られた、中東でのブッシュ大統領の不人気に関する質問と同様、政治学院のジャーナリズム養成校としての評判を傷つけるリスクを負った、場違いの質問であったかとも思われる。 哲学者、アラン・バディウ/Alain Badiou (ソイユ出版社《世紀》)のイメージを借りれば、社会問題は不快を呼ぶ疑問、我々の“第二次復興期” における品のない言葉になったのである。 我らの時代のマエストロたちが世界を変えると主張するとき、逆説的にそれは、現実には何も変えないためである。 安全保障への強迫観念の下には社会保守主義/事なかれ主義が潜んでいる。
訳者解説:ジョルジュ・ブッシュ米大統領欧州来訪を目前に控えて、怒るプレネル編集長エディトリアルの即訳です。ル・モンドにはめずらしく、文法まちがいがいくつかある。なるべく原文から遠くならないように直訳っぽくしてみたが、自分で読み返しても分らないというw まあ、誰も読んではくれないだろうが、誤訳あったら、sorry in advance.
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