中国-日本:空母“戦争”へ向かうのか?
Chine-Japon : vers une "guerre" des porte-avions ?
ル・モンド 2012年9月25日
Edouard PflimlinSenkaku/Diaoyu 諸島をめぐる強い緊張の中、中国はその史上初の空母を9月25日に就役させた。この船舶は、1998年にウクライナから売却されたヴァリャーグ;全長304メートル・67000トン空母をベースにして造られている。“Liaoning/リアオニングは公式に就航した” と中国防衛省は発表し、元ソヴィエト製船体から築造された空母の名は中国北西部の地名にちなんで選ばれたと告げた。
防衛大臣はこの空母が中国「海軍の戦闘能力を最新レベルにまで向上し、防衛力をかさ上げする」と明言し、さらに「国家の利益を守る大きな役割を果たす」と述べた。独立エキスパートによれば、北京政府が完璧に稼動しうる空母艦隊を持つためにはさらに数年が必要とされる。,また彼らは、中国は極秘のうち一艘あるいは複数の空母建造計画を始めたと認識している。また海軍はちかく、エキスパートの意見では2015年には、自国製空母を持つあろう。
米国議会における年間防衛白書の“中華人民共和国にかかわる軍事および防衛開発”(2012年5月)レポートによると、「中国初オリジナル空母の複数部分はすでに建造中の可能性があり、2015年以降には就航できうるレベルとなるだろう。中国は、来る10年間に複数の空母とその護衛艦を築造すると推測される」
中国防衛優先課題のひとつ
この計画は、数年前から中国防衛の優先課題であった中国海軍の急速な発展を示すひとつの例証だ。
2010年、中国海軍は総勢22万5千人の兵士、6艘の原子力潜水艦を含む少なくとも58の潜水艦、50以上のフリゲート艦、そして27デストロイヤーを有していた。この規模は、太平洋の米海軍を除外すれば、日本をしのぎアジア一のものだ。また総トン数では世界第3位である。船舶専門家のフィリップ・ラングロワ/Philippe Langloit によれば、GDPに対して防衛費比率の低い中国は、これからさらに大規模で急速な海軍備を展開しうる。彼はこうも見積もる:「歴史的に言って海軍はつねに植民地拡大の手段だ。」「この海軍は、今では母港から次第に遠距離にまで航海している。」
この脅威は何年も前から日本によって明確に認識されている。最新2012年の日本防衛白書(pdf;30ページ)では、「中国海軍はその開発と近代化により、遠距離でのオペレーションを行う能力を持つと推定される」と危惧を示している。
中国海軍の威嚇
この脅威を目前に東京が対応した。日本も海軍を拡大、特に潜水艦数を増やし数年後には22に達する。しかし、あまり知られてはいないが、日本は大型ヘリ空母を開発している。
2月9日、IHS(著名な防衛専門誌Jane's Defence Review発行者)は、日本の横浜にあるIHI Marine United(猫屋リンク)造船所で建造中の最新“ヘリ空母デストロイヤー” の“キール/竜骨の設置セレモニー”が行われたとレポートしている。この儀式は船舶界での伝統で、船舶第一ブロックがドックに移される時おこなう。各部施工はすすんでおり、これが無意味なこととはいえない。事実この新しい船舶は、第二次世界大戦終了以降日本で造船されてきた最も巨大な軍艦だからだ。2011年に建設が始まり、海上自衛隊(FAD)- 日本海軍 - にへの参入は2014-2015年と考えられている。当初、2010年度防衛予算に組み込まれていた最新「ヘリ搭載デストロイヤー」22DDH - これは隣国からの再軍備批判を懸念する東京の口実によれば“空母”ではない - “Helicopter-carrying Destroyer”としてのこれまでの16DDHヒューガのタイプよりかなり大きい。ヒューガとイセの2艘でさえ、2011年ミリタリー・バランスではヘリ空母と認識されている。では、建設中の新しい船舶をどう理解すべきなのか?
22 DDHは16 DDH ヒューガタイプの全長197メートルより25%長い。248メートル(813フィート)、これはヨーロッパではイタリア艦カヴールの244メートルに比較しうる。基準排水量は19500トンで16DDHより44%多い。満搭載排水量では27000トンのイタリア空母カヴールに匹敵すると思われる。建造費20億4千ドルの22DDH には、14ヘリコプターと兵士4000、50台の車両が搭載できる。
なぜ軽空母に類似する船舶を投入するのか?
新しいDDHは「和平[維持]と災害時援助オペレーションも含む各種任務において、“遠地基地”として機能すべきデストロイヤーの運搬能力を向上する」と日本防衛大臣は語っている。
したがってこれは、ますます最新設備をそなえ、日本沿岸とくに沖縄沿岸で海域侵入を繰り返す中国海軍脅威拡大に対する返答だ。もうひとつの(建造)理由には国際平和維持の任務と、自然災害援助活動へのさらに大きくなる要望があげられている。
日本憲法を逸脱する“攻撃的空母”建造と言う非難に対し日本は抗弁している。第9条- 日本は陸軍・海軍・空軍、あるいは他の潜在的な軍備を持つことは許されない(←訳注;筆者の仏語からの訳)-にてらし、政府は1988年にこう宣言している:「なぜなら攻撃的空母は、自己防衛の最小レベル確保に必要とされる軍事潜在性を越えるので、これら船舶の保持は憲法によって禁止されている」
しかしながら、日本戦略海軍力の増大が観察されている。16DDHと 22DDH以前、日本は2002年と2003年に納入されたOsumiタイプのヘリ搭載迎撃艦、シモキタとクミサキ;基本排出量11600トン・全長178メートルを投入しており、それらはFADの最も大きな船舶と認識されていた。
日本再軍備化についての著作もあるエキスパートChristopher W. Huguesによれば、この“巨大化競争”によって、日本は「空母開発技術のポテンシャル復活を現している。」
中国の懸念は、日本防衛大臣もFADもその可能性を言及してはいないものの、日本がたとえば垂直離陸型ステルス戦闘機F- 35の購入でこれら艦体を容易に空母へとトランフォームさせうることだ。例をあげれば、元中国海軍大将Yin Zhuoは、200メートル甲板を持つ22DDHは6機の戦闘機、特にF-35を搭載し離陸させることができると論じているが、日本サイドはこれを否定している。
この点から、何人かの中国エキスパートは、少なくとも3艘の空母所有が利すると推奨している。北京軍科学アカデミーのメンバーである将軍Luo Yuanの場合がそうだが、彼は以下を言い忘れている;(中国)3艘の空母全体が185000トンだが、ヒューガクラス2艘と22DDHの合計は60000トンにしかならないのだ!
威嚇機能
現実には、これら中国戦艦はいまだ実戦可能性から程遠いもので、日本艦隊、ましてや米国空母に立ち向かう許容力を持つ船団グループ形成には何年もかかるだろう。しかしながら、北京政府にとって重要な所有権返還要求と国域紛争問題にかかわる中国海周辺諸国に対し、これら戦艦は威嚇機能と優位性誇示の役割をになう。
したがって、北京が主権的権利とは矛盾する境界域獲得目的で軍備威嚇行為に出た場合には、日本は中国の(海軍拡大)計画を理由として、自らの空母建造再生という願いを正当化できる。現在の緊張にともなって、このようなプログラムが特に必要とされる。
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9月25日のル・モンド記事翻訳してみました。筆者エドワール・フリムランはル・モンド記者ですが、同時にIRIS/国際関係とストラテジー研究所の研究者。なお、なるべく意訳はさけましたが、最後の文は明確ではないし、できはよくありませんけどまずはアップします。(しかし、久しぶりに翻訳したら目が回る。昨今とんと頭脳使ってなかったことに気がついた。)