なんとも世界中大変なことになっておりますが、いくつかル・モンド記事中心に書いて見ます。
これはル・モンドではなくつい先ほど目にしたNHKの報道:サラリーマン 平均年収下がる
国税庁の調査によると、平均年収は409万円だそうですが、この数字は極めて微妙。なにしろ調査対象は4566万人の民間企業の正社員とパートが対象だそうで、つまり公務員・失業者・退職者などは入ってないし、平均値なのでどうしても少数であれ高額所得者の方に平均が引っ張られる。
こちらフランス統計局の発表では、たしか全人口の成人所得中央値が月額1500ユーロぐらいだった(つまり年1800ユーロ=180万円)。カップルで健康な共働きならどうにか生きてける数字。公立教育は基本無料だし、出産費は健康保険が全額負担。子供手当て(二人以上子供がいる家庭に支給)もあるので、全社会層での出生率が高い。
また、NHK報道の映像最後の方でどこかのエコノミストが「円高とデフレが訂正されない限り今後も横ばいが続くだろう」と指摘してると言ってますが、これもねえ。単なる定番言い訳。円高もデフレも関係ないインフレ2パーセントの仏国でも(失業に引っ張られ)賃金は下がり続けてます。
ま、OECDの出した統計とか見てみよう、各国収入統計これかな:Income distribution - Inequality
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さてル・モンド系。まずは北極の氷があと4年ぐらいでなくなるという話。関連記事英ガーディアン←(英語読みの方はこちらをどうぞ)
La banquise arctique pourrait complètement disparaître d'ici à quatre ans
つぎは天候変化によって世界経済が受ける影響の話。
L'économie mondiale ralentie par le changement climatiqueすでに北極海の氷の後退が進み、今では冬季でもロシアからアジアへの海路輸送が可能となっている。参考ウィキjp:北極海航路
追加リンクです。ル・モンド記事《北極海、石油会社の約束の地か?》:L'Arctique, terre promise pour les compagnies pétrolières ?
また、北極周辺の原油・天然ガス・各種鉱石をプーチンロシアが虎視眈々と狙っておりまして、これに対してシベリアでガスプロムと共同で天然ガスプラント経営してるトータル社CEOマルジョリがなんか言ってます(石油はエコロジ的にいくないけど天然ガスはOKなんだそうだ、もうすぐ引退だからか、ヒゲ狸言いたい放題):[FT]仏トタル、北極海での石油掘削に警鐘
いずれにしろ、少なくとも北半球北部での異常気象は明らかで、大西洋赤道付近で発生した台風(ハリケーン)が中米からフロリダ沖を北上、そのままヨーロッパ大陸を横断して暴風雨や集中豪雨を引き起こすようになった。パリ最低気温マイナス16度、最高気温39度とかまともじゃないよ。
ヨーロッパ・アルプスやこの間のヒマラヤでのような雪崩・遭難の増加は、岩石を固定していた万年氷がやわくなったり、大きな氷壁が崩れたりして起きているんだろう。
数年前(つまりサブプライム以前)の論議では、異常気象の拡大が実際の経済・社会に影響を及ぼし始めた場合には、“国際社会”つまり主要発展国はそれに対してドラスティックな政策をとっていくだろう、、てな意見もあったわけですが、、、もう遅すぎる。今は、どこの国も自分の生存維持だけで精一杯だし、中国様とプーチン様は、、、頭が20世紀初頭でとまってるしねえ。北極から万年氷が消えたら、経済影響はひとまず置いといても、まずはホッキョクグマがいなくなり、地球生態系は大きく変容する。
それでも、原油とか天然ガスとかシェールガスとか、ありゃあ(なくてもあるかも知れんから)掘っちゃうのが人間様なんですかねえ。
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ル・モンドで読む極東ジオポリ軍備情報
直接的利害がないからでしょうか、仏御用新聞ル・モンドは尖閣問題に関して良記事を連発しています。(なお、リベラシオンは社会党御用ゴシップ紙に姿を変えてしまったのだった)。
つい訳そうかと思ったのが25日の良記事、Chine-Japon : vers une "guerre" des porte-avions ?
中国-日本:空母“戦争”へ向かう?というタイトルで、中国がウクライナから購入した空母Liaoning(全長304メートル、67000トン)と、日本のデストロイヤーDDH(全長248メートル、19500トン;原則的つか憲法的にはヘリ空母)を比較しております。まあ、中国は昭和日本での「大きいことはいいことだ!」的発想段階にあるからねえ。どっちもどっちかなあ。
ちなみに仏国のシャルル・ド・ゴールは全長261.5メートル、36600トン;ってことは和製デストロイヤー、シャルル・ド・ゴールと比べても大して変わんないのかあ。。。下に追記したエンタープライズが336メートル、75770トンでいちばん大きいけど今年一杯で引退だそうです。
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今日(27日)ル・モンドにはフィリップ・ポンス紙の記事がありました:La droite japonaise se radicalise face à la colère chinoise
「中国の怒りに対して日本の右派が過激化」ですか、タイトル。握りこぶしの元首相ミスター・アベの写真つきですが、あまりコワソじゃないところがなんというか。。。
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オマケですが、ググってたらこんなフォーラム見つけた。在日仏人が2009年横浜で撮ったイージス艦こんごうの写真を(軍オタ)フォーラムにアップしてます:コレ
うーむ。1) 軍オタに国境はない 2) 軍艦とか戦闘機とか核もだけど、持ってるだけの間は高価なjoujou(おもちゃ)なんだけど、もと取ろうと思って売ったり、持ってるとどうも使いたくなる傾向もあったりして始末が悪い。使っちゃうと、現在の戦争では軍人だけではなく市民に大きな被害が出るです。アフガニスタンでは仏兵士だけでもこれまで88人の戦死者が出ていますから人事じゃない。
中国「ディズニーランド型」空母にしても、和製ハイテク・ヘリ輸送艦デストロイヤーにしても、joujouレベルでの“見せびらかし”で終わって欲しい。
おまけに、いくらハイテク度を高めても、結局のところ実戦になったら人的被害は免れない。欧州からナチスドイツを駆逐したのも、実は連合軍ではなくソヴィエトの送った膨大な数の陸軍兵だったし(死者数も膨大)、もっと昔ですがソフィスティケイトしたローマ軍を打ち破ったのも、“蛮族”ゲルマンだったです。桑原・桑原。
“センソ”の話も絡みますが、カネがあるべきところにないってのがどこでも今一番の問題かと思います。←民主主義停滞のしるし
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追記:本件には直接関係ありませんが、ヴァカンス先のカンヌで米空母エンタープライズが湾沖に停泊してるの見た。調べたらあれは2006年:うちのブログ2006年8月の記事探したら写真あるはずだ。カンヌには米籍軍用船が時々寄航する。中東での威嚇演習軍務の後、2・3日カンヌで乗組員が交代休暇上陸するためと思う。シンガポールにいた時は、地下鉄で第一次イラク戦争帰りの若いGIを見かけたが、ひどくおびえてた。カンヌで見かける彼らも田舎の若い連中だが、態度もいいし屈託がない:もちろんMPがしっかり見張っている。←よく見たら原子力空母の写真ブログ1ページ目の右にあるコート・ダジュール写真集に貼ってあった。もう四年あそこには行ってない、、、懐かしいなあ。
軍オタ参上。
仏海軍の<シャルル・ド・ゴール>は蒸気カタパルト(米製)や着艦支援装置(ワイヤーでひっかける)がついており、戦闘機や攻撃機、早期警戒機を運用できます。
海自のDDHはヘリコプターしか搭載しておらず、当然戦闘機などは運用できません。
中国の空母<遼寧>は蒸気カタパルトがなく、スキージャンプ式に航空機を発艦させます。着艦支援装置は<シャルル・ド・ゴール>と同様に搭載しているはずですが、「ワイヤーが買えなかった」という報道もありました。
スキージャンプ式ですと発艦できる重量が限られますので、兵器や燃料をフルに搭載しての運用は難しくなります。
このため<遼寧>は「鳥なき里の蝙蝠」と言えますが、アジアで空母を持っているのはタイだけです。砲艦外交には十分使えると思われます。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2012-09-29 09:40
どうも、
いや、まだ読んでくれてる人がいたのかと、単純にウレシです。
あの記事は、うちのゲームオタが教えてくれたです。彼も「中国には乗せるヒコーキあらへんで」と言ってた(仏口語を翻訳するとなぜか関西弁になる)。
あと、ウクライナからカジノ船として売却前に、構造部に穴あけてたって噂もあるようで。。。まあ、ハリボテネズミーランド空母なんだけど、用は威嚇が目的だしねえ。。。実用化はこまります。でも攻撃だったら、F1の4号機格納プールか日本海側の原発に工作員送るとか、無人偵察機で小型ミサイルのほうが安上がりな気がする。まあアタクシが考えるようなことはアチラのかたも考えておるよなあ。。。
軍備系はうといんですが、時間あったらル・モンド記事翻訳してみます。良い週末をお送りください。
投稿情報: 猫屋 | 2012-09-29 12:30