今日のパリは曇り、薄ら寒い天候になっています。日本の被災地では、所によっては最低気温がマイナス4度やマイナス5度にまで下がっているようで心配になります。
多くの情報があり、アタクシが見ている量は限られているし、あくまで個人的視点でのトリアージュですが、クリップします。また友人からもらった情報も入っています(感謝)。中には全部読見切っていない記事やヴィデオもあるし、またアタクシの英語力が足りないせいで読み違いがあるかもしれません。
*
今日見てる情報源
NHK WORLD
NHK 総合TV
BBC News
これはル・モンドの核関係仏語解説:Petit lexique du nucléaire
フランスの報道は、チェックアップ機能が働いてないのかむちゃくちゃで、あまり見ていない。夜8時のニュースよりは遅い時間に放送される専門家も交えた討論ものの方がまだ落ち着いて主題を扱っている。
各国のジャーナリストも、すでに日本を去った、あるいは西日本から報道しているスタッフが多いようですが、その中でBBCはまだ東京と山形にジャーナリストが残ってリポートしていた。
まず福島原発に関する、アタクシの印象を書けば、被害の規模はペンシルバニアのスリーマイルとソ連のチェルノブリイの間、どちらかというとスリーマイルに近いスケールじゃないかと思う。甲状腺への影響が心配される子供や妊婦は、できれば東京を去ったほうがいいのだろうが、それよりも恐ろしいのはパニックによる事故だから、各人が自分のことと人口全体のリスクも考えあわせ、それぞれ各人が判断するしかないのだろう。
いちばんパニクッていたのは、フランスと米国オーソリティで、これは両国とも多くの原子力発電所を持ってるせいだろう。仏政府のスポークスマンが「福島原発危機はチェルノブリイ以上」と発表し、関東地区にマグニチュード7以上の地震が起きる可能性は70パーセント以上と報道したもんだから、ネット等でそれ以上の情報を確認できない人口は、これらをころっと信じてしまう。おまけに日本の地理が分かってないから、(ジャーナリストも含め)富士山近くの地震の映像や被災地の避難所映像をを見て、あれが東京だと思い込んでしまう。
(まあ仏共和国に関しては諸般の事情により来年5月まで休業中なので:あてにしないように。)
いずれにしても、世界中の核専門家はみな同じような認識を持っていると思う。ただ、メディアや政府がそれをどう理解し、どんな風に紹介するかで、イフェクト、つまり一般人の受け取り方は大きく変わってくる。
*
では、リンク集です。
IAEA/国際原子力機関 の天野事務局長が行ったコンフェロンス・ヴィデオさがしたんだけど見つからなかった。彼は福島での事故は大変重大だが、炉の圧力は抑えられている。日本と東電はもっと詳しい情報をIAEAに報告すべきだと言ってた(BBCで見た部分)。
対して米政府の見解はかなりペシミスティックで、米市民だけではなく、軍スタッフも福島を真ん中にした幅80キロ内の地区から退去するよう警告した模様。結果、現地の戦艦・ヘリコプター等も圏外に移動したようだ。日本政府からの原発対策への参加依頼がないため、米軍は介入しないと発表している。つまり、避難民救助・物資輸送はするが、福島原発を中心とした80キロ圏内には入らないのだろう。
ヴィオス・オブ・アメリカ:Japan Admits Time Running Out to Avert Possible Nuclear Catastrophe
アサヒ:米軍、原発80キロ以内に立ち入り禁止 国防総省
BBCによれば、英国政府は、東日本の地震と津波で家を失いお金もない英国人には無料で帰国チャーター便搭乗をオファー、それ以外の帰国志望英人には、民間航空便を使って帰国するよう発表(+民間航空便価格を下げるよう航空会社に依頼)。
*
今回の天皇のtvスピーチは全部ではないにしろ、一部が世界中で放送された。これも国ごと、メディアごとで紹介部分が違ったり、翻訳のしかたが違っていて、映像というのは扱い方ひとつでかなり意味合いが違ってくるなあ、と再確認。なおアタクシは、アサヒに載ってた原文を斜め読み(母国語というのはこれができるからアリガタイ)。
次は、天皇はすでに京都に疎開したとか、核シェルター内だ、とか義捐金詐欺に使われるデマに関するチキ氏による長い記事(計3本:がんばってるなあ):震災に関するデマにご注意ください
これは在パリの邦人作家のかたに送っていただいた、放射能医学の専門家(御本人も肺がんを患っていらっしゃる)のブログから最新記事:国際放射線防護委員会(ICRP)勧告に基づく福島第一原発事故の放射線リスクの目安
東芝で核格納コックの設計に携わっていた工学博士 後藤さんはじめ民間の専門家が行った原子力資料情報室(CNIC)の外国人記者に対して行った会見ヴィデオはここ:録画:3/16原子力資料情報室(第6回)記者会見←長いよ。
通訳が入ってまだ未編集なのでトリプルに長いから見るのに時間食いますが、政府あるいは東電発表とは別なONGの報告ですので、重要。また、崎山比早子さん(元放射線医学総合研究所主任研究官、医学博士、現高木学校)の被爆やヨウ素剤の使用方法解説ヴィデオもサイトにあります:
これは1記事からの抜粋 ←、これだけ読むとなんか恐いんですが、要に政府+東電の発表する情報ははっきりしない、これをどうにかせいという政府批判サイドの警告として読むべき。
地震・事故:福島原発:放射線被爆を考える
モニタリングのデータが公表されるようになった。一時、公開が止められていたとの報道もあった。ただ、公開と同時に添付されている被ばくの影響に関する説明は誤解を招くものだ。また、報道で専門家が「直ちに人体に影響を与えるものでない」と説明することに憤りを感じる。
そこで、放射線被ばくの考え方を整理してみた。
被ばく線量の推定には、本来ならどのような放射能がどれだけ放出されたのかという基礎的なデータが必要だが、これが公開されていない。そこで、今の段階では、かなり粗いものであっても、各個人が自分の被ばくを推測して、判断する目安を得ることは有益だろう。
①単純に被ばくを計算する
例えば、住んでいる地域で20マイクロシーベルト/時の線量が測定されたと仮定しよう。
この線量の状態が続くと仮定して、時間を掛けると、とりあえず被ばく線量が出てくる。24時間では480マイクロシーベルトとなる(20×24=480)
②内部被ばくを計算しよう
人 間は呼吸をしているのだから放射能を体内に取り込む。この線量を計算することは難しいが無視することはできない。初めに書いたようにどの放射能がどれくら い出ているか分からないからだ。ここでは大まかに2倍とする。そうすると、24時間で960マイクロシーベルトとなる(480×2=960)
③乳幼児や子供は放射線への感受性が高い
乳幼児や子供、成長期の若者は放射線への感受性が高いと考えられている。ここでは2倍とする(ヨウ素131では10倍になるとの評価もある)。
乳幼児や子供は、24時間で1,920マイクロシーベルトとなる(960×2=1920)。
④被ばくの影響を考えよう
専 門家がいう「直ちに人体に影響を与える量」とは急性障害を与える量250ミリシーベルト(250,000マイクロシーベルト)のことを意味しているよう だ。あるいは、人によっては100ミリシーベル トの被ばくのことを意味しているように思われる。これを基準に考えることは高い被ばくを容認することになる。
微量は被ばくでも発がんのリ スクを高める。発がんのリスクは被ばくの量に応じて高くなる。例えば、国際放射線防護委員会は1ミリシーベル トの被ばくで、将来10,000人に1人のガン発生が考えられるとしている。この評価には、倍くらい厳しく見るべ きとの意見もあり、その場合5,000人に1人となる。
⑤被ばくは極力避ける方が望ましい。が、少しの被ばくで大慌てする必要もない。
被 ばくを低く抑えるには、①離れる、②時間を短くする、③身に付かない(吸入しない)ようにすることが原則。モニターの値が高い時にはできるだけ外出を控え る、外出は短くする、マスクなどで防護する、などの対策 が考えられる。屋内は屋外に比べて、被ばくは2~3倍くらい少なくなる。
モニターの数値は首相官邸「平成23年東北地方太平洋沖地震への対応」で得ることができる。
http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/jisin/20110311miyagi/index.html
なお後藤さんの17日ヴィデオはここ:福島原発の現状をどう見るか
**
金融市場では一時1ドル=76円までの円高を記録。現時点では78円台にあるようです。過去の神戸地震直後に円高に振れたことから、円高傾向にビッグ・バンクとヘッジ・ファンドがショートをかけたんだろう。つまりFEDEXに投資していた個人や、外国や国内で保有していたドル資産を売り、国内に円を戻す日本大手企業などの円買いを機に、金融営利団体はショートでより多い利潤を狙っているわけで、この円高がどこでストップするのかはゴールドマンとかの中の人に聞いてみないと分からない。。。
ニッケイから参考、と思ったけど昨日までの全記事無料は終わってた。読めるのは東京市場の焦り、やや落ち着く:東京市場ドキュメントくらい。別記事(有料会員用):投機筋、FX個人を「狙い撃ち」か 1ドル76円の裏側
***
えーっと、もう一度原発関係に話を戻します。
昨日は約300人。今日は180人(BBCの数字)が福島第1原発で働いていたそうですが、通常時原子炉に近い場所で働くのは臨時職員(つまり電気会社社員ではなく下請け)だそうです。これは日本もフランスも同様。NYTが事故直後、原子炉近くに残っていた50人の職員をSAMURAIと称していましたが、それら職員の名簿リストは、個人情報だからという理由で東電は公開していない。それは「派遣職員」だから、と考えてもいいだろうと思います。
チェルノブイリ事故の当時は、ソ連軍は確か2000に及ぶ兵士と消防を(後記;炭鉱夫や事故後の作業まで含めれば送られた若い衆の総数は50万人だと言う)、建物屋根に積もった瓦礫や灰の削除、それからヘリコプターによるセメント投下のために送った。その時の、またその後の正確な死者や負傷者数・病人の発生率などのはっきりした数字は分かっていない。当時そういった過酷な作業が行えたのは、危険性がわかっていなかった事もあるし、旧ソヴィエト体制内だから強制的に人員確保ができたのであって、25年後の日本で同じような動員は不可能だろう。
アタクシの理解で言えば、福島原発の原子炉は地震当時に活動が自動にシャットダウンした。つまり核分裂は止まっているんだがブツの熱気を下げるための冷水供給システムが起動せず発熱が続いた。反してチェルノブイリは事故後も核分裂を続けていた。またチェルノでは福島のように炉を囲む5重の構造がなかったし、コア部分を囲む重金属のコックもなかった。比較の仕様がない。
チェルノブイリでは、最初事故をひた隠しにしていたソ連政府だが、被害が抑えられないと判断したゴルバチェフは情報公開を決断している。また、アフガン戦争とともに、この原発事故がのちのソ連崩壊を招く要因のひとつになった。ここいらのいきさつは仏・独TVアルテだったかが放映したドキュメンタリーで見た。これ、残念ながらヴィデオはないけど、たぶんこれと思われるアルテ仏文レジュメが読める:Sécurité nucléaire : où en est-on ? 独語版は:Atomare Sicherheit – wo stehen wir?
さて、これは15日での情報なんですが、15日在東京英国大使館の説明会で受けた情報を英国市民トム・ビンセント氏が日本語訳しフェイス・ブックに載せたもの。これも友人の作家氏からメールでもらった情報です(アタクシはfacebookアカウント削除しててないのだった、でソースなし)。もちろん17日の英国政府の判断は、(上に書いたように)変化していると思いますが、15日の時点での冷静な判断が伺えます。
さきほど東京の英国大使館の会見から戻ってきました。日本の原発の現状についてでした。英国政府主席科学顧問(Chief Scientific Adviser)ジョン・ベディントン (Sir John Beddington)が代弁者をつとめ、数名の原子力発電の専門家も同席しました。日本の現状について、彼らの状況判断は下記の通り:
●比較的悪い場合(1個の原子炉の完全メルトダウンとそれに基づく放射性爆発の場合)、避難エリアの50キロは人の健康の安全を守るために十分な 距離でしょう。もっと最悪な状況でも、(2個以上の原子炉がメルトダウンする場合)1つの原子炉のメルトダウンのときと比べ、被害にさほど変わりはないで しょう。
●現状の20キロ退避指示区は現状の放射能レベルにたいして適切な範囲でしょう。このまま炉心への海水注入を続くことができれば、大きな事件を防ぐ ことができるでしょう。これからさらなる地震と津波が起きた場合、海水注入ができなくなる可能があり、その場合上記のメルトダウンが起こる可能性があるで しょう。
●基本的に、専門家は東京住人の健康への悪影響はありませんと予想してる。健康に悪影響を起こすために現状の放射能の何百倍のレベルが必要。専門家 はそのような状況にはならないと言う。(しかも、専門家は妊婦や子供へ影響するほどの放射能を基準にしていた。健康な大人にとってはさらに放射能のレベル が高くならないと影響はないという。)
●専門家は風向きは関係ないと言う。東京は現場から十分離れてるので、影響はないでしょう。
●海水注入を続けることができれば、原子炉が冷え、10日間後に状態は大きく上向くでしょう。
●日本政府からの情報は複数の独立した団体によりモニタリングされつづけ、放射能のレベルに関しての情報は的確と判断されてる。
●チェルノブイリとは全く別な状況です。チェルノブイリの場合、原子炉が完全メルトダウンし、手を付けずに何週間も燃え続けた。チェルノブイリでさ え、50キロに避難ゾーンがもしできたら、十分に人の健康を守ることはできたでしょう。チェルノブイリの場合、事件から何年も後まで現地の食料や水に含ま れた放射能は一切モニタリングされなかったと、危険性についての情報も全く知らせなかったせい、汚された食品、麦、牛乳や水などを食べ続けた現地の人々が 病気になった。事実は隠されたチェルノブイリの事件とくらべ、今回の非常に開かれた福島の事件もその意味でも大きく異なるでしょう。
●ブリティシュスクールの学長が、休校をつづけるべきかどうかを尋ねた。専門家の答えは、放射能に関する恐れのためならば休校は必要ない。余震や建物の状態などに関する理由はありえるかもしれないですが、科学的に放射能の恐れは 子供にとっても全くありません。
●ヨード剤の補充に関して、専門家はヨード剤は現場で放射能を体内に吸収した場合や汚れた食料を食べた場合だけ必要と説明した。それに、ヨード剤の長期的利用は健康によくないと話した。
会見は驚くほどフランクで正確でした。専門家の判断によれば、原発からの放射能の恐れよりも、地震と津波からの被害はもっと大きな問題でしょう。
専門家の判断を信じましょう!
(荒い翻訳を許しください。間違えなどが見つかった場合、連絡ください。トム)
***
昨日のfrance 5 の番組C dans l'air 15日のものですができは悪くなかった。長さは1時間ちょっと、地震学者、日本に詳しい社会学者、経済紙記者にくわえ、日本に家族・友人がいるという放射能医学専門家、核開発専門家などが、日本に押し寄せた複合危機と日本の未来について語っています:Japon : la fusion des drames
****
というわけで、状況は難しいが、パニックに陥ることなく、できることをしていく、というのが賢明だと思います。同時に、寒波が戻ってきた被災地には何もない多くの避難者がいる事実を忘れず、すべてを一瞬に成し遂げることは無理でも、少しずつでも明るいほうに向かって進むのが重要だと考えます。
*****
なお、BBCが報道をしてるけど、リビアの方がまた大変になってる。強い軍力を持つカダフィ政府軍が、ベンガジに逃げ込んだ反政府派を攻撃。ノン・フライゾーン設置がまた話し合われてる(いつものごとく、ロシア・中国、それにドイツが反対)。コート・ジボワールでも昨年の選挙以来の紛争が続いているが、メディアは扱ってない。われらが地球上にはブラック・スワンがあちこちでプカプカ漂流中。。。
******
遠地難民(ジョギング上下、着のみ着のまま、食事は一日せいぜい1.5回、おかげで日本滞在中最高7キロ増えた体重が元に戻った)猫屋は物資調達のあと本文一部加筆訂正いたしました。これから再度ネット巡回の後、炊き出し体制に入ります。
追記、これ貼るの忘れてた、アジア圏での地震発生の記録:Earthquake List for Map of Asia Region USGS(米政府機関)がイランとかインドなども含む広いアジア地帯での地震発生を記録・発表していますが、いまだに本州東部で地震が続いているのが分かります。17日にも最高マグニチュード6.1の地震が続いている。。。。