エジプト蜂起も3週間目に入りました。このブログのエジプト速報も、な、なんとこれが13本目です。我ながらあきれる。
しかし、チュニジア・エジプトで(そして他の地区でも次々と、、)起きていることは、ネットとソシアル・ネットワークがあって初めて可能になったし、アルジャジーラやガーディアンの報道や、我々ネット市民の支持があるからこそビッグ・パワーに潰されることなくここまで進んだ。
で、今日の主要ニュース・ソース
アルジャジーラ英語版:Live Stream
ガーディアン・アップデイト:Egypt protests - Wednesday 9 February
アルジャジーラのライヴ映像を見ると、暗くなったタハリール広場には今も多くの人々が集まっています。昨日はジャーナリストのいないカイロ以外の都市で警察保安隊と抗議派のクラッシュがあり犠牲者が出た模様ですが、詳しいことはちゃんと調べてから書く。以上GMT 17:15
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多くのジャーナリストはこの2月9日はエジプト蜂起の転換ポイントだったと書いています。すでに2週間の間に少なく見積もっても300以上の死者と、500からの逮捕者(いまだ解放されていない人は150と想定されている)、多くの負傷者を出したこの運動も新しいフェイズに入ったというわけです。
・カイロでの抗議運動は、タハリール広場ばかりではなく、8日夜からエジプト議会(2議会+首相オフィス)前でも展開されています。議会は広場から500メートルほど離れ、議会前の道路はさほど広くない。そこにかなりの人がテントを張り、また近隣の商店が貸した毛布に包まって夜を明かしている。リベの記事によるとアレキサンドリアから両親の許可を得て、バスを乗りついで友達とふたりでやって来たという20代の小児科医(女性)は、他のサポーターと一緒だし、毛布も借り、近所の人々が飲み物や食べ物を差し入れてくれる。全然心配はしていません、と語っている。タハリール広場もそうですが、カイロで未婚の女性が路上で夜を明かせる、それが今のエジプトの雰囲気なのだと思う。
またタハリール広場には、これまでムバラク支持だった人々、あるいはムバラク・システム内部の人々(官僚等)もやってくるようになった。最初は好奇心で、やがて納得して広場に居残る。(←猫:沈む船を去るねずみか)
エジプト議会をガードしているのは軍隊で、通りの警備でもチェックなく人々を通しているが、もし何らかの原因で、抗議派が軍と衝突しそうになった場合、軍の真のポジションが明らかになるだろう。
また、軍設備の中でエレクトロ・ショックなどの拷問を受けたと、逮捕されていた抗議派の証言があり、軍のニュートラル性に疑問が投げかけられている。地方であった警察による抗議派への攻撃にも、軍はまったく動かなかった。
・先週作られた反ムバラク派も入れた新政府から、教育相(文学教授)が健康の理由から早くも辞任。また、プロ・デモクラシー派の多くがこの新政府を否定している。新政府も効き目はなかったということだ。
・運動の拡大:スト状況をリストにします。なお学生・青年(かつては青年知識人)がまず抗議運動を開始し、労働者・農民がストで運動にジョイント、という定石です。
- スエズ:メンテナンス部門などの5000名がストに入った。運河航行には今のところ問題はない。
- Mahalla: 1500名 テキスタイル
- Quesna: 2000名 Sigma 医療・薬品
- エジプト鉄道 3000名 バスもあしたからストに入る
- ジャーナリズム:Al Ahram (国営放送)報道の自由と殺害されたふたりのジャーナリストのため放送局1階のホールで集会を開いた。すでに、女性人気キャスターが「表現の自由がない」と先日辞職している。
- また、(どの土地においても)最も保守的といわれる農民もカイロから遠い田舎(エジプト国土の75パーセントは田舎)で抗議運動を始めた。生活苦を訴え、ムバラク退陣を望んでいる。Assanan では農民と失業者からなる約5000人がデモ。
地方にはジャーナリストが入っていないので正確な情報は得られていないが、各地で負傷者および死者が出た模様(地元責任者の死者数は3名。医療関係者によると5名)。
下のヴィデオは、2月8日としかタイトルされてないが、マハラ。警察隊のトラックが抗議派集団に突っ込むところが写されています(猫:これはまるっきりひどい)。警察保安隊は、カイロ市内から地方に活動フィールドを移した模様。
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Wael Ghonim/ワエル・ゴネム は今日CNNのインタヴューを受けたようです(エジプト人の彼が拘束中拷問を受けないですんだのはグーグル勤務だからだろうと推測される)。
ワエルは、アラブ首長国連邦にあるグーグル・オフィスで働いていたんだけど、エジプト蜂起が始まってすぐカイロに戻って運動に参加。でも2日目に逮捕されてしまう。30歳の彼はfacebookとTwitter でKhaled Saidにささげるアカウントを作りネット反抗運動を展開した。それが逮捕となった理由です。12日間拘束されている間、自分がどこに居るのかも外で何が起きているのかもまったく知らなかった。家族は彼が殺害されたかと懸念していた。
カハエル・サイードは、昨年6月アレキサンドリアのネットカフェから出てきたところを2警官に逮捕され、街中で殴り殺された26歳の青年。彼は警官が取締りで押収した麻薬を分け合っている映像をネットに載せていた。
昨日8日のタハリール広場ではアレキサンドリアからやって来たカハエルの母親をワエル・ゴネムが抱擁している写真がありましたが、カハエルはチュニジアのムハメッド・ブアジジと同様、サイバー・プロテストのシンボルだったわけだ。
また、facebook のWe are all Khaled Said には50万人の“友達”がいて、これはエジプトネット人口の10%にあたるのだそうだ。
また#Jan25というタグもtwitter に多くのメッセージが送られている。これは今年1月25日(金曜)を示してる。この日、15歳の少年Ahmed Saidはタハリール広場近くでバイクにひかれ死亡した。
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次回の大型集会はこの金曜ですが、あした10日も盛り上がりそうです。
しかし、プロ・デモクラシー派逮捕は今も続いている。
昨日、今エジプトが正常化しないと大変なことが起こると警告していたスリマン副大統領、今日はこんな非常事態が続くと軍がCOUP を起こすだろう、とクーデタをほのめかしました。(猫:アホカ、タコ。エジプトの非常事態はもう何十年も続いている。その非常事態をどうにかするために、プロ・デモクラシー抗議運動が起こったんでしょうが。)
いすれにしろ、エジプトの市民が望んでいるのはムバラク政権のゲーム・オヴァーと、それを支えるシステムのセット・アップなのです。クーデタは起こらないよ(それはスリナムがムバラクに対して先週もうやった;軍政府内クーデタ)。
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今夜のジョーク、でもこれホントの話:スーダン大統領アル・バシールはスーダンの青少年がPCでネットを使えるように、スーダンの電力網を強化すると発表。同時に政府facebookアカウントを設置したんだと。また「スーダンはチュニジアやエジプトとは違い、自由でオープンな国だから抗議運動は起こらない」 と言ったそうな。独裁者というフカカイな人間のカテゴリーってあるのだ(サル・サル!)。
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参考
ガーディアン今日の写真集:Egypt protests enter their 16th day – in pictures
リベのリポート: «J'ai découvert une Egypte magnifique ici»
同じくリベ、スリマンの“クーデタ”:Egypte: le gouvernement évoque une intervention de l'armée en cas de chaos
カイロ生まれのエジプト人Aalam Wassef の仏語ブログから:Egypte: Omar Suleiman menace. Pure folie.
エジプト動向、毎日拝見させて頂いています。ありがとうございます!!
投稿情報: Y | 2011-02-10 03:57
Y氏、
そういっていただくとうれしいです。
今が肝心なときなのに、大手メディアはどんどんエジプトからの報道を少なくしています。ガーディアンのライヴ・アップデイトも(今日10日)打ち止めのようです。それでも今日の夜に速報書きます。エジプトのこれからの動きに、世界中の抗議派の将来も大きく作用されるでしょうから。
投稿情報: 猫屋寅八 | 2011-02-10 14:20