Séismes et bulles financières : Quelle prévision ? /金融バブル地震:その予測とは?とタイトルされた昨年夏のコンフェロンスのヴィデオを紹介します。この秋ル・モンドの経済記事コメント欄に読者が言及してて、それで探して見つけたもの。2009年夏にパリのIHEST (Institut des Hautes Etudes pour la Science et la Technologie /科学技術高等調査院 ) という国立の研究機関が行ったサマー・セッションの一部の模様。
調査院責任者のChevalier- Le Guyader 女史がイントロと最後に2007年に開設され2008年から活動を始めた当機関の機能と目的について語っています。たとえば経済とか物理や数学、社会学といったような学の枠を取り払って、臨床医学・生物学で行われているように“エティック”を考慮しつつ、世界理解を進めるを科学機関を目指しておるのだそうです(←以上はアタクシの理解したところなり)。
パネラーは、現在チューリッヒのポリテクニクで教えているディディエ・ソネット/Didier Sornette と、社会・民俗学者・ジャーナリストでかつては米国で金融系の仕事もしていたというポール・ジョリオン/Paul Jorion。司会はGerard Bonos でこの人は確かアタクシが雑用しながら聞いてるラジオ・クラシックの局長さん。
内容は、バブル形成と崩壊はいかにして起こるか、これからの経済危機の行方、これからのバブル崩壊は予測しうるのか、またそれは防ぎうるのか、等々であります。
アタクシが2回見ちゃったくらいですから、経済に精通してなくても、たとえば大学の一年生ぐらいの“一般教養”があれば誰でも理解できる。
面白かったのは、まず、ソネット先生が進めている研究内容で、それはバブルの崩壊を予測するモデルつくりなんですが、先生はその研究内容を2010年5月には一般公開するそう。もともとこの教授は物理学の人。今回の金融危機はブラック・スワンではなく予測できたキングギドラだってパワー・ポイントで黒い白鳥と怪獣の絵を出してます。ここは分かりやすくてよろしい。
人文系と自己規定してるジョリオン氏の話もおもしろい。これはアタクシが知らなかっただけで、すでに定説なのかも知れませんが、彼によればサブプライムの時点で、金利を国家が規制できない米国10年もの国債を中国が大量に買っていたのは、中国の米国乗っ取り作戦の一部なんだそうであります。それは柔術で相手の力をうまく利用しより強い相手を壁に叩きつけるのと同じだ。なにしろ中国人は碁をする人々であるわけで、侮(あなど)れませんよ、と言ってる。
また、これはソネット教授の言ですが、2008年の経済バブル崩壊は1975年前後にレーガンやサッチェーによって進められた金融規制緩和後、大量放出されたキャッシュがバブルを形成しやがて崩壊する。崩壊後はそれを収拾させるために次のバブルが形成されると言う繰り返しが起こって、時間が経つにつれその周期は縮まり同時に強度も増してくる。レギュレーションは不可避なんだが、それはここフランスでは当たり前のことと認識されていても、ネオリベ資本主義あるいは原理主義資本主義、言い換えればアナルコ・キャピタリズムの国々ではそんなこと言っただけでスキャンダルになるんだが、なぜなら今現在権力を握ってるのは金融ロビーだからだね、ってな内容のことを言ってる(はず←以上アタクシの理解なり)。
で、さらに暴力的になるこのバブル連鎖から逃れる手段としてソネット先生が提示してるのはリバレッジ(仏語でルヴィエ)の規制で、これは可能だろうって言ってます。
数学・物理・社会・倫理・医学・心理学・経済学といった学枠を超えて仏語ではInterdisciplinaire といいますが、日本では学際的とか総合科学になるのかなあ、そういった交流や研究や公開討論や、ネットでの研究の一般公開がもっと広がるのはいい。それで、アタクシのようなシロウト暇人も「これ面白いじゃん」とかいえる時代なんですなあ。
仏語聞きの方にはお勧めなヴィデオです:Séismes et bulles financières : Quelle prévision ?
ほんと、最近はやりのの安作り仏ビオピクス見るより面白いよ。
*
こちらは1月13日のル・モンド紙から。元社会党系で今はヨーロップ・エコロジー党に参加しているエコノミストのピエール・ラルートゥルーの文です。グラフなんぞも加えて金融危機のメカニズムを解説しています。Crise financière : comment éviter l'explosion ?, par Pierre Larrouturou/金融危機:いかにして爆発を回避するか?
**
次はラジオ、フランス・アンテールでの元仏外相ヴェドリンヌのインタヴュー(2010年1月28日のもの)も貼っておきます。ヴェドリンヌ、欧州外相の役にぴったりなんですけどねえ。なお、ニューヨーク・タイムスのコラムニストであるロジャー・コーエンも電話で参加しています
********
今夜のおまけ。NSvsDDVの仁義なき戦いにカルラ・ブルニ-サルコジが介入いたしまして、ラジオRTLでなにやら発言したらしい。それはどうでもいいんですが、ル・モンドがそれを報道したわけです。これもまあどうでもよろしい。読む価値があるのは読者コメント欄なのであります。品を落とすことなく皮肉・ユーモアも交え正しい憲法解釈論もあったり、みなさんうまく書いてて笑えます←いい意味で「これがフランス風味」なのである、うっふっふ:Carla Bruni "étonnée" par le manque de confiance en la justice
こちらはおまけじゃなくて真面目です。賢人バデンテールのインタヴュー記事です。今のフランスにおいては憲法解釈の第一権威のお言葉。訳そうかとも思ったけど、まあひとまずクリップ。タイトルは《クレアストレーム:“法の勝利”》 ですね。
Clearstream: "une victoire de la justice" pour Robert Badinter
コメント