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2009-09-05

コメント

みみみ

お久し振りです猫屋さん。充実した夏をお過ごしの様で何より。
31日のルモンドオピニオン欄は結構豪華(?)でしたよね。editoは日本の選挙だし、コーエン先生のこの記事と、アシュケナジ先生の危機下の若者状況、というか最後は学歴デフレ・インフレの話になってたけど、の記事。コーエン先生のこれは取っておいて「後で読む」に回してました。(先生obsにもインタヴューがあるし)訳出ありがとうございます。
「断絶」と言えば、若者世代は将来への展望も何もぶちぶちぶっちぎられているのじゃないか、現実世界に参戦する以前に敗者復活戦みたい、なんて思ってしまいます。知り合いの若者たちが「大学とは専門教育によって就職を有利にする場だ」などと言うのを聞くと、「つまらないやつらだなー」と思うけれど、今現実の大学が「教養主義」じゃどうにもならないのでしょう。
では、教養なんてあったのか?  全くなかったら、やはりつまらないなーと。

猫屋

おひさしぶりです。
このコーエン教授の見方は極めて面白いのに、あんまり読んでくれる方は多くなくて、腐っていたところです(まあ、うちのブログがマイナーなだけなんだけどさ)。
マリアンヌにも成長率マイナス論のブロガーによる記事がありまして、ラジオでのダニエル・コーエンのトーク映像にチャチャを入れてる。映像だけ見てみてください。
http://www.marianne2.fr/Daniel-Cohen,-teleconomiste-de-la-Terre-Plate_a181999.html
オプスの記事も読んだです。クルッグマンより説得力あるよね。

実は上の翻訳を終えた時点で、ググってたらコーエン教授の新刊が出たことを知り、翌日に本屋に出向いて買いました。いや、なかなかパンチのきいた良本で、全部翻訳したいぐらいなんだけど、アタクシ、日本の出版社とのコネクションないからなあ。。。こういうとき無名人は弱い。

まだ半分も終えてないんだけど、今夜あたり、この本の紹介文をアップしたいと思ってます:よろしく。

就職戦線がきわめて厳しいのはいずこも同様で、卒業生たちがいっせいに労働市場に出る今年の秋はかなりムゴイことになりそうです。教育システムを、生産システムにあわせて変えるには最低5-10年はかかるんだろうと想像できますが、実際の世界経済の変化スパンがドンドン短くなっているし、たとえば2年後の経済モデルさえ見通しができない。同時に、成長率が若干上がってもそれは失業率を下げる効果をもたらさない。米国と欧州の数字としての失業率が10パーセントをこすのも時間の問題のようです。

ただ、現在のような状況では、かえって“教養”つまり一般的savoir をより多く持っているほうが、それは少なくとも“生き残る”力になると思う。これは“いかにしてより多くの金を稼ぐか”という意味ではまったくないですが。

たとえばコーエン教授は数学をやって、ノルマル・シュップに入り経済に進んだ。フランスでは数学の天才の多くが、年間7000ユーロとかかかるエコノミー系グラン・ゼコルののち、イギリスか米国で留学もこなしてMBA取って、金融界あるいは企業のコンサルタントになるっていう“王道”を進むわけですが、はじけた現行金融システムを創り出したのは、彼らです。これが英国ではロンドン・ビジネススクールだったり米国のMITやハーヴァードだったりする。

けど、ノルマル・シュップでは複雑系の数式ばかり学ぶわけじゃなくて、思想史や社会学もやってるんだと思います。経済とはマネージングだけじゃない。そこいらへんから言って、コーエン教授やピケティ先生のやってる研究や一般者向けの著作がもっと読まれていいと思うんですよね。経済とは金を生み出すビジネスというマジック・ボックスではなく、人間社会を構成する枠であり、金とは本来、人間と人間をつなぐ媒介としての交換製品だったことをも一度思い起こすべきなんだと考えています。

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