右の写真は熊本さんの「着物を着たうさぎ」ですが、本文とは一切関係ありません。
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一週間前のデモは、開催労組側の発表で250万人、警察発表は100万でしたがこれはどう考えても逆サバ読んでると言う声が高く、妥当な線は約200万人、ってのが政府以外の各オーソリティーが認めている数字です。
すごいよね。
で、今のところ、政府サイドはフィヨン首相が「政府は改革の方針を変えない」と断言。われらがニコラス一世は、市民の怒りを恐れてか、いつものハイパー・アクティヴ度を必至に抑えているようであります。
18日の政府と労組の話し合いってのも、実はだいぶ前からアジェンダに入ってたんだそうで、つまりは政府サイドからのスト・デモサイドへのオファーは何もなし。
フィヨン首相は不況対策として260億ユーロをかける「1000の計画」を発表しましたが、実はその内容の多くはすでに過去に決まってものなんだって。その投入額を、他国の経済復帰策の金額などとも比べ、動画図で説明してるのが下のル・モンド記事。
ニコラス一世が君臨なさってから、すでにエコロジー系の環境グルネルが長い時間と多くの専門家による討論の結果発表された、のはいいがその案はまったく実施されてないし、ジャック・アタリの300ページのレポートにリストアップされた「フランスの経済成長を促す諸策」のほうもすっかり忘れられている。この1000の対策も同じ運命じゃないか。。。だいたい、歴史的モニュメントの補修工事自体はいいんだけど、さらにフランスは世界第一の観光国であるにしろ、こう誰も金使わん(正確には、使えん)時代に「これは経済復興策」ですなんて言えるのかねえ。
どうせならドーンと、台風が来るたびに倒れる(これまでのところ8年に一回;サイクルは短くなってる)高圧電線塔を、たとえば電線の地下埋蔵長期計画起こして地上からなくすとか、SNCFの使ってる老朽化した架線を一気に新しくするとか、ニュー・ディールとはまでは行かないまでも、目玉計画を練って欲しいです。まあ、EDFも民営化されたし、SNCFはいまだに国営でも架線管理はいつの間にか下請け企業がやってるんで、そう簡単には国家が入れない仕組みになってるんだろう。
しかしなあ、ネオリベラル経済金融システムが崩れつつある今に、何もネオリベラルな改革進める必要はないでしょが。はい、すいませんとお手盛りベアした大統領給与を元に戻して、首相から取り上げたヴェルサイユの別荘も返して、それから改革内容方向変換するほうが賢くないのかねえ。。。
ひとまず教育とか裁判所での人員整理を一時的にでも凍結する。人口過密でおまけに人権団体からクレームついてる刑務所の建て直しなり、修繕したっていい。社会住宅の建築だっていいだろう。
巨額所得者に対して行った減税策を凍結し、雇用促進の枷になってる超過勤務への社会保障負担なし策も取り消すべきだろう。これから続く企業破産、大型解雇、失業率上昇に立ち向かっていくこの国に必要なのは、何本かの高速道路建築ではない。
選挙運動中に公約したサルコのフランス共和国改造計画を今になっても維持するというのは、まったくもって説得力がないわけなんだ。「もっと働いて、もっと稼ぐ」はずが、絶対的雇用数がどんどん破壊されている今では、「もっと働きたくたって、職がない」。
実際には、昨年の9月に始まった世界経済危機に先立ってフランスは不況に入っていた。多国籍大型企業が、世界的不況を理由に大幅な解雇を行い、工場移転を行い、利潤を守ろうとするのと同じ理屈で、サルコジは自分の行っている政治の問題点をはぐらかして、不況に立ち向かうには改革を進めるしかない、と言う。
シカゴで企業相手の弁護士事務所を持ってたとか、セネガル生まれの美形だとか、両親がモロッコとアルジェリア人で兄弟は11人いてディオール着てるとか、元フランス代表ラグビー・チームの監督だったとか、かなりゴリゴリのカトリックだとか、サルコジの高校生時代の友人だとか、元ヒューマニタリアンだったとか、なんとかのアトリビュー、つまり属性とサルコへのグルーピー度でリクルートされた大臣たちが作るサルコ・ゴールデンチームには、お笑い大賞ですら取れないだろう。
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また別枠で、サルコは第三世代原子炉 EPR(Réacteur pressurisé européen / European Pressurized Reactor )の新しい開発計画も発表した。本来はフランスのアレヴァとドイツのジーメンスの共同プロジェクトだったんだが、ドイツのエネルギー経済計画は対露ジョイントが主流になりつつあり、ジーメンスは当プロジェクトから手を引くことになった。その穴埋めには、たぶんアフター・ペトロールに核を想定するトータルあたりが参入するような気がする。サルコは政治界引退後は核開発企業に再就職(これはゴールデン・パラシュートといいますね)を狙ってると言う噂も流れてるですよ。もちろん、エコロジー団体は非難の声を上げてるけど、設置場所に選ばれたダンケルクは、かなりな失業率になやむ土地で、共産党のダンケルク市長もこの選択を大歓迎してるんだって。。。。いいのかなあ。以下はル・モンド関連記事。
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29日大型デモの話題を書こうと思ったんだけど、関連報道が極めて少ない。これは一種の緘口令だと思っていい。バンリュウ事件の際、報道がそれをフランス全国に広める役割を果たしてしまった。そこいらへんから、メディア封じの技が使われてるんだろう。
政府サイドはスト・デモ当日には、「市民たちの経済危機への不安がこの行動の動機である。各団体の要求に共通項はない。」と声をそろえて発言していたが、この読みはまったく間違っている。参加者たちの共通の要求は、単にニコラ・サルコジの辞任だったんだよね。
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これは本文とは直接の関係はないんですが、フランスにおける拘留率が上がったという恐い話を、拘留経験者たちの証言で伝えた4日のル・モンド記事です。
猫屋さんこんばんは。今年初めてです。(今年もよろしくお願いします)フランススト・デモの記事、確かに少ない、盛り上がっていないかの様で、いつもより手応えが感じられません。
朝日新聞で、今の危機を、ド・ヴィルパンに聞くなんてやってましたが、???(昨年6月、京大で、ド・ヴィルパンと、加藤周一さんと、佐伯啓思さんのシンポがあるはずでした。加藤さん亡くなって、立教の三浦信孝さんに代わったらしいです)
日本の報道は日本のことばかり。(不況不況、派遣切り、路上生活、所持金がこれしかありません、節約法、省エネ、みんな頑張れ、頑張ります)で、やっぱり国としてどうするのかは全く見えてこない。
だからといって、もうしっかりバラバラにされてしまったかのようなこの国の中で、皆が繋がることが出来るのか?(いやずっとバラバラだった?どうしたら連帯できるかなんて分からない?)バラバラに頑張るの?
でも、かりんちゃんのところや、三浦さんのところで人が繋がるのを見ました。
(探し物をして、行き着くところって限定されているようで、興味の対象がはっきり。猫屋さんの跡を見てびっくりしたり)
今更ですが、ネットの世界から、何か生まれているのかもしれないですね?
なんだか力をもらいました。
文字通り、自分の畑を耕さなくては、、
猫屋さんいつもありがとうございます。
無性に、皆にありがとうって言いいたくなったのです。
投稿情報: みみみ | 2009-02-06 13:50
みみみ氏、
返事遅れてゴメンナサイ。こんな駄文に付き合ってくださって、こちらこそありがとう、です。
日本でも、派遣村みたいな新しい“企画”でもしないとメディアは動かないし、こっちの大型デモもサルコはスルー作戦に出ています。18日まで労組との会合を延ばして、ってフランス全国学校の冬休みですよ。朝廷ご用達じゃないネット情報しか残ってないんですが、これの機動力は米国で証明されているわけです。
miura 氏や、kiyonobumie 氏のところにはだいぶ前から時々お邪魔してたのでした。
今年もよろしく。
投稿情報: 猫屋 | 2009-02-07 12:39