というわけで、昨晩、文章書きに専念してておそらく3時間ぐらいのアイドル期間が長すぎたせいでしょう、アップロード・ボタンを押したら、書き終えたエントリー記事がまたしても宇宙のかなたに消えてしまったわけです。まあそういうこともよくあるさ。気を取り直しての仕切りなおしでございます。なお、前回の文章The Party is over、読み返してみたらなんともブレタ文章なんでガックシしたんですが、まあ全世界的に気分はブレてたですし、アタクシの過疎ブログなんざ楽しみで書いてるんだから、いいか、と勝手に解釈した。もちろん、AAAとかBBBとか、金融商品格付けをする同業内オーソリティは、アタクシのようないい加減なことを書いたらいけません(でもかなりいい加減だったんだけどさ)。
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昨日書き始めた時は、情報リンク集にしようと思ったんだけど、書きながらあきらめた:情報ありすぎ。それから、シロウトはどうやって情報をリアルタイムで理解しえるかのプロセスをググリながら書こうかと思ったけど、これもあきらめた。
オプションとかセキュリゼーションとかレバレッジとかレバレッジ・バイアウトとかCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とか、なんともまあ、人間というのはとんでもなく複雑なシステムを作り上げるものだなあ、とアキラメと感嘆の入り混じった感慨を持ったけれど、なぜかユウレカ的ワカッタ満足感は得られなかった:要するにこれら複雑装置が行き着いた先が、今回の、実質経済・実質社会をも巻き込みつつあるクレジット・バブルの破裂と、現在の大難問クレジット・クランチだったわけで、なんでも知りたい???印人間のアタクシでさえ、さすがに気が滅入ったのだった。
で、単に、わかったいくつかの事柄を、なるべく簡潔に、順不同、書き出してみます。
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今週月曜の欧州での株価暴落の原因には、週末にブッシュ大統領が、ポールソン法実施には45日ほどの準備期間が必要だと発言したこと(その後ブッシュ大統領は実施に向けて加速させると訂正しました)と、土曜にパリ大統領官邸で行われた4国元首(仏・伊・独・英)+ECBのトリシェ+ユーログループの長ジュンカー(リュクセンブルグ)会談(3時間半)が、続いた会談後の仏メディアとサルコのオート・セレブレーションにもかかわらず、具体的なヨーロッパ政策を打ち出せなかったことにあるようです(コーエン教授が言ってた)。
また、ブッシュ・サルコをはじめ、多くの政治家と多くのメディアやエコノミストの発するアラートが、逆に市民に恐怖感を植えつける要因になったこともあるですね。
つまり、『あなたの銀行は潰れません。潰れたとしても国家があなたの貯金を補償します。あるいは国家が銀行を買い取ります』とオーソリティー/権威が言えば言うほど、株主を含めた国民は事態の重要さを知り、過剰に想像し、パニックする。
『分からない』という人間現象は、たとえば愛情関係ででもそうですが、しごくまともな人間をある種のパラノイヤ状態に押しやるですね;恋人や配偶者の裏切りが主人公を苦しめる図は、人類共通な芸術の永遠的テーマであるね(あ、話がずれた)。
打ち出せる対策としては、まずは汚染債権・物件を、パソコンに入り込んだウイルスと同じように、カランテンヌ/隔離する。腐った豆と腐ってない豆をトリアージュするんですね。で、腐った豆は国家が国債発行などで作った金で買取り、パニックが通り過ぎて価格が『正常値』に達したところで売りに出す。そういうシナリオだとアタクシは理解しました。ただ、誰が何を基準にして買い取り価格と将来の売り出し価格を決めるのかなど、微妙な点の調整に時間がかかるわけです。これがポールソン法。
そうやって米国でポールソン法の実施準備中に、ヨーロッパ各国の内政問題から来る食い違いが原因で、欧州四カ国会議は統一した経済緊急政策を提示できなかった。その空白期間に人々の不安・不信が高まり、同時に、株式市場の非常に非情な掟が作動したんだと思います:この掟とは、ゲインです。
大手金融企業の破産・統合・国有化にもかかわらず、まだ職を失っていないトレーダーたちの使命は同じです;ソクジェンのジェローム・ケルヴィエル君がそうだったように、彼らはゲインを上げるのが仕事なわけでして、現在多くの国でショート・セイリング(空売り)は一時的に禁止されてますが、それ以外にもアタクシが想像もできないテクがあると想定できる。それらのテクを駆使してプロたちは自分の職務を継続する。これがマネー・ゲーム。
猫屋の理解したショート・セリングなるものを説明してみる:まず某企業株を証券会社から借り受け、たとえば100ユーロで市場で売る。それから同株が50ユーロに下がった時点で同じ株を買い戻し、貸し手の証券会社に返すんですね。ゲインは50ユーロです。リスキーですが、当たれば当たり。だが、ここに「噂」という要因が介入する。100ユーロ株価の時点で株を借り、たとえば該当会社の経営内容があぶない、という噂を流す。とくにこの5週間の世界株式市場はナーヴァス/敏感になっていて、情報(もしかしたら噂)には飛びつくわけですから、タイミングと場所さえ選べば、値崩れを“作り出す”ことができるわけ。
昨日だったかおとといだったかに攻撃されたロイヤル・バンク・オブ・スコットランド株価暴落の火元は噂だったと報道されていました。まあ、この手の意図的攻撃とパニック売りとの区別はシロウトのアタクシにはなんとも分からないのですが、今の株式市場を動かしているのは、パニック+賭けのプロの手腕+故意的噂と正確な情報の混合、なのではないかなと思います。
「経済学」というのが、はたから見てる分には面白い理由は、まったく恣意的/人間的産物、言い換えればロマネスクだからなんで、最終的には人間のサイコロジー/精神分析学に負う部分が大きい。まあ専門家はそうは思ってないでしょうが、金融工学なるものを細密化すればするほど、リスクの拡散を狙えば狙うほど、またある意味で規制を完備すればするほど、金融業界の天才たちは抜け道を見出すし、ドツボにはまる時ははまりまくる。おまけに人間つーのは忘れるからね:台風と恐慌は忘れたころにやってくるのかもしれない。でもって、付け加えれば、貧乏くじを引くのは末端の貧乏人であります(と自慢しても財布の中身と腹は減るばかり)。
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あ、書き忘れるところだった:結局のところロシアン・ルーレットとクルーグマン教授が評した、米国オーソリティによるリーマン・ブラザーズ破綻放置が、その後の危機世界レベル拡散に大きく貢献しちゃったみたいである。また9月半ばに、JPモルガン・チェイスは預かっていた170億ドル相当のリーマン債券を凍結し、二日後にリーマンは破綻したっていう話を米国のサンデイ・タイムズがすっぱ抜いてます。JP Morgan ‘brought down’ Lehman Brothers
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現在は、金融企業のほとんどすべてが、腐ったピーナツの混ざった物件をつかみたくなくて、他金融機関への融資を凍結している。昔の金持ちが、パニック時に庭に金貨を埋めたのと同じ反応ですね。
結果として経済および社会の血液であるキャッシュが流通しない。これがクレジット・クランチ。血液が止まっちゃったらリアルな経済が死んじゃう、、というんで、対策として世界中の中央銀行がキャッシュを市場に供給(金利4.ナントカ%=数字また忘れた、での貸し)してるわけです。
で、正気を失った世界株式に対して、このエマージェンシーなファースト・エイドが効果を示してきたら、腐ったピーナツを選りだし、それから行き過ぎたアウト・オブ・ローな現金融システムに新しいノーム/規制枠を作り、弱った経済・社会システムに、ニュー・ニュー・ディールを打ち出して、経済・社会再構築、、、ってのが「正しい」シナリオなんじゃないのかな。
ただ、新しいプレイヤー;帰ってきたロシアやインド・ブラジル・中国・サウジやイランなどの国家資本がどう動くのか。米国が、今回の救済策でまた背負い込む財政赤字をどうするのか。中国や日本が持っている米国債やドルをどう扱うのか。アフリカやハイチやトルコ・クルド、アフガニスタン・グルジアなどの政治不安定地域に、クレジット・クランチの影響がどう出るのか。問題は山済みであります。
個人的には、ヨーロッパというロング・タームでのアヴァンチュールが、この試練を機に大きく前進し、統一かつ独立した民主的経済・税・外交・軍備ヴィジョンのもと、21世紀の多軸世界で大きな役割を果たしてほしいと思うし、なんだかんだ言ってもユーロはユーロ圏の共通担保であって、今のようなパラダイム・チェンジ=プリ=結節期には大きな盾として機能するんじゃないかと考えています。
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もっと書きたかった断片情報はたくさんありますが、充分な時間もないし、アタクシのアタマもまたしても飽和状態なんで、もう少し寝かして、距離もとって、後日にまた「書きながらの推考」をしたいと思います。
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今夜のおまけ。ティナ・フェイによる偽サラ・ペイン@SNLの第3弾、ジョー・バイデンとのTV討論をパロッています。残念ながらアタクシの米語力では半分ぐらいしか分からないのがヒジョーに残念なり。
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