見に行って来ました。ストーンズです。でも(というか必然的というべきか、、、)がっかり。
状況説明いたしますと、これは2006年秋に、映画作成のためニューヨークのビーコンシアターで2回行われたローリング・ストーンズコンサートを、スコルセッシが16台のカメラを駆使して作ったドキュメント映画なのだ。ところどころ昔のインタヴュー映像やこの映画のメイキング・オブ映像も組み込んである。参照:Shine A Light
一緒に行った若手ロッカーの相棒は、この映画気に入ってた。
本来であれば、ジャンピングフラッシュとかサティスファクションのイントロが聞こえただけでファンキーになるアタクシである。だが、今回は2時間続く映画放映中本気でファンキーになれたのは、ブルースおじさんバディ・ガイがストーンズと共演するところだけだった気がする。あそこはメチャよかった。ミックはマジにブルース・ハープ。曲はシャンペン&リファー。
ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトもアコースティック・ギターでこちらもアコースティックのミックとデュオ。これも悪くなかった。健康優良児的ホワイトと横の小柄痩せ型ミックは世代の違いだね、あれ。爺と孫。
ロン・ウッドがスティールギターを持ち出したカントリーが一曲(タイトルは失念)、これもよかった。She Was Hot という、これはアタクシ知らなかった歌も、長くてステキなイヤラシサ全開演奏で立派。
キース・リチャードは、まあやしの木から落ちたばかりのせいか、ギターはかなりラフだった。でもソロで歌ったYou've Got A Silver は凄みがあったです(しかし、アイラインだけメイクでマリリン・マンソンとタメはる妖気のキースは超“老”人である;なおルックはパイレーツ)。
結局のところ、聞きなれたジャンピングジャックや悪魔にささげる歌だのブラウン・シュガーなんて、どうしてもオリジナルや過去のライヴ版のほうが出来いいのが当たり前だし、やせ細ったミックが走り回れば走り回るほど、こっちは“なんか無理してんなー、ミック”と思ってしまうのだった。それで、かえって知らない曲のほうが楽しめたんだろう。
ナッシュビルでのコンサート映画の二ール・ヤングは律儀に年取ってて、つまり経験をかかえて、いわば年輪を感じさせる落ち着きがあってよかったんだけどなあ。
あるいは、I'm Not There のように、聴き手の想像力だけで映画一本作っちゃうほうが好きだなあ、個人的には。
一緒に映画見た若手ロッカーにとっては、生まれたときにストーンズはすでにオジサンバンドだったわけで、単純に楽しめたんだろう。
と、個人的にはあんまり気に入らなかったんだけど、シアターのデコがもろ1976年のラスト・ワルツを意識してるとか、なぜかビル・クリントンがステージに出て来てストーンズを紹介するんだけど、“今日の私はストーンズの前座です”とジョークをかます。とにもかくにもバディ・ガイとの演奏は超一流ブルースなんで、これだけでも見る価値はあると思う。ロックの元にはブルースがあった、という事実を確認できる。
最初のコンサートでは、観客があまりに熟年すぎるんで、2日目は若い女の子を集めてきてステージ近くに配置したそうである(←ニューヨーカーのすっぱ抜き)。
スコルセッシ1942年うまれ、ミック1943年生まれ、クリントン1946年生まれ、でありまして、スコルセッシは“生きる世界遺産”ストーンズがリタイアする前に映画化しときたかったんだろうな。てか、“生きるドル箱マシーン”って言いかえてもいいけどさ。
お気楽ストーンズ・ファンとしては、1992年に観たIMAX映画 Rolling Stones at the Max が忘れられない。パリのヴィレットにあるジオッドって名の球形IMAXシアターに、3人のストーンズファン仲間と一緒に見に行ったんだけど、なにしろサラウンド音響および画面の端から端までミックがあの調子で通り抜けるわけで、ほとんどファーストクラス・ベッドシートに横たわった姿勢でわれらは踊りまくったのだったよ。
今回、スコルセッシはあくまで自分の“映画”を作りたかった。つまり画像の対象と距離を取り、すべてを管理したがったんだが、ストーンズの真髄はあくまでライヴと観衆とのフュージョンなわけで、ここらがうまくかみ合わなかったんだと思う。
最初に見たときは“なんだこれ”と思った、ジャン-リュック・ゴダールの“One to One、悪魔にささげる歌”はよく考えると凄い。一曲のロックがどうやって作られていくのかがよく分かるし、スコルセッシの映画の過去録画部分にはなぜか出てこないブライアン・ジョーンズの晩年のヘロヘロ具合も理解できる。
当映画の過去インタヴューでインタヴュアーの“60歳になってもロックやってると思いますか?” という質問に、26歳のミックが“当然やってる”と平気で答えている。あの男って、いったいなんだ? これがアタクシの現在における大きな問いであります。
自分の好きな音楽映画というのを見直して思ったのですが、ミュージシャン視点の音楽映画ってあんまり面白くありません。プロデューサー視点とか、少し離れたところでなおかつ熱狂を共有するようなのがいいです。じゃなきゃよくできたライブ映像に勝るものはないかと。
投稿情報: ぴこりん | 2008-04-26 14:04
うん、このテーマは面白いよね。一番記憶に残ってるのはどうしても日比谷の封切りで見たウッド・ストックで、でもあれはメンバーが凄すぎて番外だな。。。
ところで、今夜はアルテでマニュ・キャチェ(ドラムとアレンジとプロデュースの人)のライヴ(マイナー)番組見てたんだけど、出来よくてもう一度ネット版で見て(聴いて)ました。なかなか渋いんだけど(全部で一時間半)、音楽ってのはやっぱ凄いなーと思ってしまった。エモーションが(言葉を通り抜けて)じかで通じるし、大体コミニュケーションだし、出来がよい音だと、自然に体が笑うでしょ。
(仏語より英語のほうが多いし)時間があったら見てみて:http://plus7.arte.tv/fr/detailPage/1697660,CmC=2012290,scheduleId=1992314.html
投稿情報: 猫屋 | 2008-04-27 04:46