世界金融危機の大詰めは今年の夏ごろになりそうだというエコノミストの意見がありますが、今度は世界食糧危機です。農業大国のはずのフランスでさえ、この一年でパン・パスタ・乳製品・魚・肉などの食料品価格が25から50パーセント近く上がりました。フランス固有の理由としては、世界穀物価格上昇とは別箇に、中間および販売業者、とくにハイパーのマージン増大があげられるようです。
- 中国・インドなど振興工業国における新しいミドルクラスの食生活スタイル改善、つまり肉や乳製品の消費ですね。食肉用家畜は多くの穀物を消費します。
- それから世界人口自体の増加予想から、穀物ストック自体がスペキュレーションの対象となっている。これは金融世界やオイル・ビジネスでの投機と同じ流れです。同時に株式でのキャッシュが、現在の危機状態を逃げて、オイルや先物にフィールドを替えたんじゃないかなあ、とも思う。
- バイオ燃料政策で、ヨーロッパを含めた多くの国々が農業のやり方を変えました。たとえば米国やメキシコのとうもろこし畑が食料から、燃料用とうもろこし栽培に切り替えた。米国ではかなりの国家援助がバイオ燃料栽培農家に支払われています。単純計算で人間様が食べる分が減ったわけです。
- 世界気候不順の結果である、洪水、日照り、火事、いなごなどの異常発生などにより、出荷量が減少。
- 政治紛争から、農民の難民化と移動が各地で起こる。
- 原油も安かった自由貿易主義時代(まだ続いてるけど)には、とにかく単価が低く豊富な穀物を輸入するのが“普通”だったわけで、同時に自国での穀物栽培は放棄された。
等々があると思います。特にアフリカでは、多くの地で主食である米が不足。これまで米を輸出していたエジプトやインド、タイなどの産出国が国内需要に答えるため輸出を中止したのも大きい。飢餓が原因となって、地域紛争がさらに深刻化する危険性があるわけです。
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14日月曜日、ル・モンドは創設以来初めてだそうですがストのため休刊でした。テレラマやクーリエ・インターナショナル、カイエ・ド・シネ
マ等々を発行するル・モンド社の財政問題から130人解雇が決定され、それに抗議する編集員も含めたストになった。というわ
けで、ル・モンド紙の発行はなし、ウェブ版もかなり記事数がすくない。でもこれは大変気にかかる問題だし、日本ではあまり議論になっていない気
もするので訳しておきます。
飢餓暴動:世界銀行が警鐘
ル・モンド.fr、AFP、ロイター 2008年4月14日暴動(死者5名、負傷者200名)と、ジャック・エドワード・アレクシス首相退任をもたらした食糧危機に直面するハイチ政府に対し、世界銀行は1000万ドルの援助と、現地への専門家派遣を決定した。この援助は、政府が「貧困家庭には手の届かないものになった食料の価格上昇に対処する」ためであると、世界銀行はコミュニケで説明している。土曜日、ハイチ大統領ルネ・プレヴァルはこれまでの暴行の繰り返しをさけるため米の価格を下げると宣言した。
この出来事は、現在、貧しい国々を襲っている食糧危機の重大さを、今一度際立たせる。この週末に行われた春の会合で、世界通貨機構(IMF)と世界銀行(WB)は、この問題に対する危惧を表明した。ドミニック-ストラス・カンIMF理事長は、価格高騰の継続は「恐ろしい結果」をもたらし、「過去において私たちが学んだように、この種の状況は時として戦争に行き着く」と語った。
ロバート・ゼーリック(ROBERT ZOELLICK):「待ってはいられない」
食料権に関する国連特使であるジャン・ジエグレール(Jean Ziegler)も、価格上昇と食糧不足に起因する紛争と「長い暴動期間に向かって」世界は進んでいると、月曜のリベラシオンでのインタヴューで答えている。「暴動と紛争とコントロールのきかない地域不安定化の長いピリオードに私たちは入ろうとしている。価格高騰以前すでに(...)8億5400万人の人々が厳しい栄養不足状態にあった。これは予告された大殺戮だ。」とジグラー氏は警告する。先週発表された世界銀行のレポートによれば、2月における3年間の世界小麦価格上昇率は181%で、同時期の食料価格上昇率は83%だ。この価格高騰は、エジプト・カメルーン・コートジボワール・モーリタニア・エチオピア・マダガスカル・フィリピン・インドネジアとその他の国々で、暴動を引き起こした。世界銀行によれば、世界で少なくとも33の国が、政治紛争と社会騒乱におびやかされている。
この問題は、6月に日本で行われる経済G8で討論される。「フランクに言って、私たちはそれまで待ってはいられないのです」と、ロバート・ゼーリック世界銀行総裁はみなす。彼にとっては、今が現実的に大胆な新しい食料政策を打ち出すべき時なのだ。危機に対処する世界食料プログラムが必要とするところの、少なくとも5億ドルの緊急供給を、氏は援助諸国に対しては要求する。世界銀行はアフリカへの農業融資額を2倍とし、8億ドルを貸し付ける。世界経済の鈍化が貧困国家に与えるインパクトを和らげるための多くの政策に加え、ゼーリック氏は、国家資本によるアフリカでの投資開発も望んでいる。
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参考
リベからジエグレールのインタヴュー、予告された大殺戮
:«Une hécatombe annoncée»
FAOの英文記事:Urgent measures required to reduce impact of high food prices on the poor
Poorest countries’ cereal bill continues to soar, governments try to limit impact
後記:しかし、「神の偉大なる手」はどうしちゃったんでしょうか? 一生懸命ドル刷ってたグリーンスパンとバーナンキの手がそれだったんでしょう(やれやれ)。「歴史の終焉」というのもありましたが、あれもとんでもな話でした。
うちも、すでに家庭内食料危機です。
3月になって、0.8% の物価上昇、子供は育ち盛り、外ではリセアンがデモ行進、この先どうなるのでせうか?
投稿情報: k | 2008-04-15 14:59
ああ、育ち盛りが2人いたら大変だあ。
うちじゃあ、安売りの牛ひき肉とバナナと豚肉と麺類ばっかであきた。安売りのって大量パックだから食べ残さないように(冷凍庫小さい)リキいれて食べてたら太ってしまった。あと、いくつもスーパーや13区のタングとか回って値段比べるから、買い物だけで余暇が終わっちゃう。なんたる文化生活!今年の終わりアタリはたぶんもっとタイトになると思う。
投稿情報: 猫屋 | 2008-04-16 01:32