“ヌーベオプスの呼びかけ”を、まったり訳しかけてた猫屋でありますが、その間にもサルコジは、同時多発無差別攻撃を展開。3月の選挙を前にした、個々のサルコキャンペーンに、何らかの論理性、あるいは少なくともクロノロジカルな関連性があるのであれば、それはそれなりに批判もできよう。
問題は、サルコジ政治には、“ニコラ・サルコジ”という政治商品登録商標以外に、なんら共通点が見つからないってことなんだよね。まあ、これもあらかた分かってはいたことだ。だが、そのなんにもなさ自体を、政治戦略としちゃうってのが、新手といえば新手である。サルコ・ブラックホール現象とでも名づけるべきなのか。
サルコ・シーズン1;バンリュー叩き内務大臣にして、セシリア・サルコジの夫、UMP党首、アルカイックな共和国をぶち壊す仏大統領候補。
サルコ・シーズン2;大統領選挙に勝利したと同時にセシリアに見放され、修道院にこもるはずが、セシリア再ゲットを目指して、マルタ島でボロレ・ヨットでヴァカンス過ごし、夏休みはセシリア(つまりサルコ)にとっての桃源郷“米国”で過ごすも、これも空振り。結局、ジャッキーとジョンFケネディのコピペ人生は、かっこ悪い隠密離婚でチョン。人民;『なんだ、結局、嘘だったのね。』
サルコ・シーズン3;離婚後3ヵ月、出会ってから2ヶ月のサルコジ・ブルニ電撃隠密結婚。グラビア・スキャンダル誌と大手新聞と大手テレビのゴールデンタイム、それにアンケート会社さえ押さえれば政治活動は完了、、、と思いきや、これが逆目に出た。サルコのブランド;別名ブリングブリング見せびらかし作戦は、物価高・労働条件の不安定化・生活苦にあえぐ国民に嫌われることとなり、同時に、政府ご用達メディアの不人気につながった。
そして、
シーズン3の第二幕無差別攻撃サルコ必死だな編、が始まったのだったよ。
つまり、
ご用達大手メディア、から国民が離れ、同時に大手メディア内をふくむサルコ批判レジスタンス(バディウ・ニコラ一世のランボー・マリアンヌの2月14日アピール・オプスのアピールetc.)が組織され始めると同時に、サルコの“ゲリラ”活動の回転度も加速したのだった。
目的は、人民に考える時間を与えないこと、および抵抗運動組織化阻止であるね。
方法は、連日つじつまの合わない衝撃発言を、とんでもない場所から発することである。この場合、発言者はサルコ自身、あるいはサルコの顧問、あるいは大臣、あるいは隠れサルコエージェントであったりする。
これは、マキャべリ理論を越え、(読んでないからわかんないけど、たぶん)クラウゼヴィッツも孫子の兵法をも越えた、21世紀ゲリラ政治戦略である。つまり、市街地で展開される非戦闘員市民をも巻き込んだゲリラ攻撃展開であって、誰が見方で誰が敵であるのか、誰が誰の発した弾丸によって負傷したのか、なんとも判断がつかない。
Bordel である(注;ボルデル=仏語男性名詞、淫売屋の意。二次的意味として乱雑な場所、乱痴気騒ぎ)。
症例1:カナル・プリュスよ、おまえもか。
マリアンヌに掲載された《2月14日の呼びかけ:共和国の警告》は大きな反響を呼び、呼びかけ掲載号は発売後すぐ2万500部完売ののち1万分(訂正:)25万部完売後、10万部増刷したそうである。なお、CSAアンケート調査結果この呼びかけへの支持率は69%だった(現在でのサルコジ支持率が、36-38%であるから、この数字は信用性あり、と考える)。
同時にサルコ・サイドは、『テロ行為(Laurent Wauquiez) ・ファシスト(Roger Karoutchi)・スターリン主義(Yves Jego)、Stasi (東ドイツ秘密警察のこと、ピエール・ルルーシュ発言)』、『反民主主義(フィヨン首相)』 と、今回は顧問ではなく、内閣およびUMP総動員での、アンチ・サルコ運動封じ込め作戦に出ている。でもこうやって並べてみると語彙のチョイスにそれなりの論理性があって、まんま“作戦”という香りがするですね。
さて、これまでTF1やfrance2 など大手夜8時ニュースのサルコ・マンセー度に嫌気のさしたオーディエンス避難先になってた、カナル・プリュスのGrand journal なんですが、この一ヶ月ぐらいかなあ、なんか現政権要員をゲストに迎える回数も多くなって、なんか以前のキレが失われてた。
21日の夜は、出演者のひとりであるジャーナリストのアパティが自己ブログなどで非難した、2月14日の呼びかけ企画人、ジャン-フランソワ・カンを番組にゲストとして呼んだ。Droit de réponse、つまり批判に“答える権利”を与えるはずだった。
ところが、結局のところ番組の流れはアパティと他の司会者計4人によるのJFK(カンのことね)個人批判、それに対するJFKの応酬になってしまったわけ。このジャン-フランソワ・カン、ジャーナリストというよりも論争家と呼びたくなりますが、今時でも反骨精神をしっかり温存しておる貴重な存在であって、反権力風を装って去年あたりから人気が出たアパティおじさんと比べてはいけない(とは仏メディアウォッチャーの猫屋の意見でがす)。なお、問題の番組はマリアンヌの記事 Le Grand Journal de Canal+ polémique avec JFK で見られる。
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アタクシは決して共和国主義者じゃないけど、異なった思想・世界観を持つ人々が共生するための“共和制”というのは、基礎としてありだろうと思うし、
直接選挙民主制がなんでも解決する魔法の政治形態でもなんでもない以上、間違い・手違いは起こりうるわけで、起こった場合はフィードバックして間違い・
手違いを直す機能があって当然だろう。三権分立も、議会による監査も機能しない場合には、デモや署名運動に訴えるのが筋でしょう。
なお、この呼びかけには以下の20人の知識人・タレントらも署名してる。クリステーヴァ、ソレルスにヤニック・ノア、チュラム、ハルペン検事も。
Jean-Pierre Azéma;historien Jean-Luc Barré;écrivain François Berléand;comédien Philippe Besson;écrivain Gérard Boulanger;avocat au barreau de Bordeaux et historien Régis Debray; écrivain Vikash Dhorasoo,ancien footballeur Marc Ferro;historien Antoinette Fouques;Présidente de l'Alliance des femmes pour la démocratie Benoîte Groult;écrivain Eric Halphen;magistrat et écrivain Catherine Kintzler;philosophe Julia Kristeva;écrivaine et psychanalyste Jean-Pierre Le Goff;sociologue Joaquin Masanet ;secrétaire général de l'Unsa Police Jean Mauriac;journaliste et écrivain Yannick Noah;chanteur et personnalité préférée des Français Jean-Pierre Rioux;historien Henry Rousso;historien Philippe Sollers;écrivain Benjamin Stora;historien Lilian Thuram;footballeur et membre du Haut Conseil à l'intégration Jacques Weber;comédien
右のクーリエの表紙上に見える、Vu de Madrid Sarkozy, ce grand malade つまり、“マドリッドから見ると:サルコジ、この大病人”というタイトルが、メトロに張り出されたポスターではあら不思議、消えてしまったという話。確かに、当雑誌を購入する人間に比べて、メトロの利用客数は比べようもなく多いわけだ。パリ・メトロの広告を扱うのは、Metrobusという会社で、知らなかったけど大株主はラガルデールなんだって。なお、ラガルデールは、クーリエの親会社でもあるル・モンド買収を諦めていないようである。桑原・桑原。
ということで、久しぶりにクーリエ・インターナショナルのぞいて見たら、お宝がゾクゾク出てきた。リンク貼るですよ。読むと、少しだけど、元気出る。
Sarkozy, ce grand malade (El Pais) 記事原文
L’homme qui ne savait pas être président (International Helarde Tribune )
Le président, la reine et le cadeau de mariage (The Observer)
しかし、こないだのSMSスキャンダル・オプス起訴もそうなんだけど、変な小細工しなきゃみんなそのまま忘れるようなトピックが、ついつい脊髄反応しちゃって結局大騒ぎという、サルコ・フランス。やっぱ、どこか自爆志向があるんだよねえ、どうしても。。。
症例3:憲法委員会を『控訴』する仏大統領
と、続けようと思ったんだけど、さすが憲法がひっかかる話なんでもうちょっと、一夜漬けの駄目押ししてから書くこととする。だって、“懲罰と監視”というタイトルのル・モンドの社説を訳そうか、とアタクシが考えてる間に、われらが大統領は憲法委員会の判断に不服であると、Cour de Cassation(破棄院、仏最高裁)に訴えたのだった。ゲッ、ホントかよ、な話です。
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今日の追加であります。
まずは、これはひどい:社会福祉施設で働く(滞在許可書なし)母が、国外強制退去の目的で“検挙”されたんだけど、11歳の息子に電話する許可が下りず、24時間の間少年はひとりで待ってた話。結局、裁判所は国外退去令を却下している。母親の声が聞けるリベラボ:«La police m’a empêchée de téléphoner à mon fils»
こちらは笑える、しかしマジ:Impeachment (zaz)
完全な民主主義の崩壊ですね。。。既に内相時代からの公序秩序の拡大解釈や、憲法委員会がシラク以来、時の政権の意向に沿った判断しか出さなくなっていることは、多くの人権、憲法学者の嘆くところ。にも関わらず、今回憲法委員会が反対の意見を出したのなら、それはSageがよほどのことと判断したからでしょうに。自分の都合のいい判断が出るまで司法巡りするつもりでしょうか。最近の外国人(合法不法含め)への行政の対応は、欧人権裁判所に持ち込んでもいいくらい、法を無視していますが、国民への法も無視するようなら、どんなに撹乱作戦をしてもおとなしくしているような国民ではないと思いますが、フランス人。
投稿情報: Amina en résistance | 2008-02-24 16:19
Amina同士、
サロン・ダグリクルチュール事件と憲法委員会問題に関わってて(はは)忙しくて、返事が遅れました。すんまそん。
実際、サルコのバーカ・ネタは笑って済まされるけど、物価上昇や法律問題で直接傷めつけられるのは、一番弱い人口だし、つまりアタクシども移民も入るわけで、笑ってばかりはいられんです。郊外の住人や年寄りや母子家庭とか失業者をバカにするから、pauvre con の一言で、堤防が崩れかねない。マリアンヌ読んでたら、サルコチームの今回のあわて方は、UMP内アンチ・サルコの多さにびっくりしたためだ、ってのがあった。いくらなんでも、フランス人はそれなりに格好や面子や、エスプリや言葉や、そこいらへんを重視する人々です。フランス国が法国家にあらず、となったら、こりゃこの世の終わりだよ。ここはサルコの手に負える国じゃない、いい意味でも悪い意味でもね。
投稿情報: 猫屋 | 2008-02-25 04:49