ジャック・アタリが、“la libération de la croissance française” つまり“フランスの成長率を開放するため” のレポートを、サルコジ大統領に提出した。このレポート作成は、元ミッテラン大統領の顧問だったアタリにサルコジ大統領が依頼したもので、各分野の専門家を集めてフランス国家を“近代化”するための、フランス構造変革内容を具体的に列挙したもの(らしい)。その改革は300を越える提案がなされている(らしい)。
アタリによると、これら改革案は3月の市長選挙後に始められ、ヨーロッパ議員選挙のある2009年六月以前に終了せねばならない(ようだ)。彼は「世界株式暴落が起きるリスクまで想定してこの企画を設定した。世界経済状況が悪化するならば、これらの改革はさらにすばやく実現されるべきだ」とも語っている。
リベから参考記事:
Quand Jacques Attali dézingue tous azimuts (2 ヴィデオつき)
Un plan de financement nébuleux
右からも左からも批判が多いわけですが、大統領は発表前に、アタリのレポート内容を必ず実現すると言ってたわけですが、実際問題として内容がどんなもんだかは分からないものの、国家構造自体を変えようとするプランをフランス国政府が実現するだけの予算が、どこかにあるとは思えない。
つか、サルコジ新大統領は、掲げた公約を実現するために選ばれたと認識するわけで、公約内容の是非は横に置いとくとしても、それじゃあ大統領(一人だけ給料大幅アップ)とか、内閣とか、あれだけ大人数の顧問とか、なんのために公務員つまりパブリック・サーヴァントやってるんでしょうか。。。愛人を国家財政で囲ってたミッテランや、パリ市財政で飲み食いし放題、市営アパートに友人親戚を住まわせていたパリ市長シラクは、そんなおおっぴらには無駄使いやってなかった分、許せはしないにしろ、いちおう体面を考慮はしていたな、と小一時間、、、
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フランスでも、最近は最も経営内容が確かである銀行だったはずのソシエテ・ジェネラルが、一社員の違法行為で49億ユーロの損害(プラスその影響で起こる株価損失)をこうむった。
いろいろネットで情報を拾ってみたら、この31歳の社員は、リヨンの大学でマネージメントを専攻してから2000年に当銀行に入社、現在の年収は10万ユーロ(約1600万円)だったそうだ。最初はトレーディングのミドルオフィスで監査をやって、のちにフロント・オフィスでストック系sicav用の投機を手がけていたたらしい。彼は一年にわたって二重会計を自分のオフィスで計上しながら、結局50億ユーロに近い損失を出しても、監査の時期ややり方を熟知していたため発覚を逃れていた。
もちろん、この事件は発覚したばかりで、具体的内容が分からないうちはめったなこと言えないんだけど、金融界というのがいかに、ボードリアールがいうところのシミュラークルつまりヴァーチャルになってしまったか、というのをよくあらわしている。現在進行形の株価落下もそうだけれど、システムの複雑化、つまり空間的(グロバリ化、構造自体のコンプレックス化)および時間的(クレジット、投機、シュミレーション、ショートスパンでの効率要求)複合要素が絡み合って、現在社会の“上部構造”つまりマクロを形成している。問題は、システム自体が人間の作り出したものである以上、どうしたって間違いを最初から内包してるって事かもしれない。
1995年だったと思うけど、シンガポールの若い英国人トレーダー、ニック・リーソンが勝手に日本の石油ストックに投資し大損したケースがあった。でもニックは儲けを自分の銀行口座に振り込むよう工作してたけど、今回の事件の仏トレーダー、ジェローム・ケルヴィエル;Jérôme Kerviel は自分のために偽スペキュレーションしてはいなかったようだ。ボーナスが狙いだったって説もある。おまけに彼が働いていてのは、デフォンスの本社ですよ。あの太目のタワーが縦に割れてる風でかいやつ。
同一コンピューター上での二重帳簿スペキュ、だと思うんだけど、そんなこと本社でできるもんなんですかねえ。本当に一人でやってたのかなあ、、クサイなあ。
いずれにしろ分かってるのは、いかに監査システムを完備しても、こういった不正行為は絶対無くならないだろうということだ。システムが複雑化すれば、そのシステムの裏をかくやり方も複雑化するだけだし、扱う金額が多くなればなるほど、不正行為から生じる損害額も多くなる。
LEMONDE.FR | 24.01.08
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そんなこんなで、金融(サービス)業や、多国籍企業が法の網をくぐるための国際弁護士(サービス)業が超花形職業である時代なんて、あんまりいいことな
い。しょうがないから、ミクロに猫屋家家訓の“自分の畑を耕すべし”を鑑みてみても、耕すべき地べたなど、どこ見回してもないんだよね。。。。ため息。
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今晩のおまけ:仏Wiki で見つけました。仏経済学者ダニエル・コーエンの著書(2006)、ポスト・インダストリー社会についての3レッスン、のレジュメ版(仏語)です。
Trois leçons sur la société post-industrielle
こんにちは・・・
アラリさんというのはどんな人物なのでしょうか。なんとなく偉そうな感じで人を睥睨したような、自分が一番だというようなそんな雰囲気ですかね。これだけ数多く出せば一つくらいは冗談でアタリになるかもしれませんが・・・、どうも彼の狙いは改革なんかではなく早々に諦めさせるのに300以上の提案をした、言ってみれば目潰し弾というわけでしょうか。だからみんな300幾つとも全部大事だといって一つとして譲らないのはそのためでしょう。この場合、一つ一つは軽率に出来ているはずですよ、そういうのは。
ソシエテ・ジェネラル銀行のディラーは間違いなく一人ではありませんね。こんな大きな会社だからこそそんなことは出来ないのです。相手は金ですからいくらでも狙っている人はいます。彼一人が甘い汁を吸えるわけがないのです。そのために凌ぎを削っている株とはそう言うものです。必ずパートナーか裏があるはずです。それが顕れれば、この銀行の信用は沈みます。
投稿情報: | 2008-01-28 21:56
こんにちは、
アタリ・レポートの欠点は結局大元の一貫した姿勢がないことと、あくまで専門家たちによる寄せ集めの案であって、現実との接点にかけてるって事だと思います。まあ、アタリをせめてもしょうがないというか、というより頼んだサルコに責任があるでしょう。環境グルネルにしてもそうだったけど、結局実現化したのは、燃費が安くつく新車販売に国から援助金(つまり税金)出して、車会社が儲かった、ってそれだけだし。税金無駄使い。
ソック・ジェンについては、いまの段階ではたいしたことはまだいえないと思います。結局は、デリヴァティフを多く扱って、結果売り上げ上げていたソック・ジェンの流れに、トレイダーはのってただけだと思う。ちなみに、JKはいちセントも儲けてない。会社のために賭けに勝つのが彼の仕事だったから、もっと稼ごうとしただけですよ。稼がないトレイダーには存在理由はないもんね。ソック・ジェンはOPAで消えて無くなるでしょう。
投稿情報: 猫屋 | 2008-02-01 04:27
いや、BNPと一緒になって、世界2位の銀行になるでしょうね!結果凄い事になるでしょう!
サルコジにとってもこれで世界最大規模の銀行がフランスに出来るんだから「渡りに船でしょう。」
もしかして、ジェローム・ケルビエールさまさま…?
ソシエテ・ジェネラルも結果オーライでしょう!
投稿情報: Socgen | 2008-02-02 07:29
どうでしょうかねえ。BNPからのOPA、ブルッセルからクレーム入らないとしても、SGとBNPの合併となると、かなりの大量解雇になるはずで、かえってドイツ系とかの欧州系銀行との合併でもいいような気がします。しかし、スイスはきついし、英国系もだめだからなあ、、、AXAとかの保険業ともこれ以上同銀行内業種を増やすのもイクないですし。。。ムズイ。
投稿情報: 猫屋 | 2008-02-04 00:38
ジャク・アタリというと小生にとっては音楽評論、なかんずく現代音楽評論で80年代に話題となった『ノイズ──音楽・貨幣・雑音』 (みすず書房 )を思い出します。
投稿情報: Amicizia | 2008-03-30 18:28
Amicizia 氏、
アタリというのは不思議な人物です。音楽評論まで書いてたとは知りませんでした。最近は、フランス近代化とガンジー伝記と、動物(人間も含む)“愛(つかセックス)”のかたち、の本を出しています。
投稿情報: 猫屋 | 2008-03-31 02:24