水曜日にあった、政府労働省からの代表も交えての、各労組およびSNSF・RATP幹部の交渉の結果、今回の2週間続いた交通ストは解除となった。国鉄・メトロ・RER・バスの全セクターが通常通りの運行となるのは、この週末と見られている。
一般人としては、まずほっとした。
だが、これで大型交通ストがあと12年は(つまり1995-2007のレベルという意味)ないだろう、という保証はない。今回は、公共企業サイド、つまり政府側が小出しに労働者サイドの要求を呑んでいったんは解決に至ったわけだ。
詳しい交渉内容とその結果(ストライカーが勝ち得たもの)については今の時点でアタクシは知りえないのだが、全体の感想としてはもっと早くに具体面での交渉を政府側がプロポーズしていたなら、“被害”、つまり一般市民の費やした時間、一般店舗が売り上げを減らした金額、SNCF・RATPの売り上げ損失等が、大幅に避けられただろうと思う。特別年金制度がPIB(英語でGDB)に占める割合は0.7パーセントでしかない。参考: Les mauvais calculs de la réforme des retraites
だがサルコジは、この後に来る一般年金制度改革への第一歩として、絶対に譲歩の態度を見せたくなかったわけだが、プラグマティズム(損得金銭バランス)の観点ではサルコはマイナス点を計上した形だ。つまり、特別年金制度改革で得られる利益よりも、交渉の結果職員に与えられる代価(recompense)+今回のストで生じた経費のほうが大きいだろう、ということだ。
もう一方で、金額にはならないスケールで開示されたことがある。社会および政治分野での世代交代だ。ベルナール・ティボー(この人は15歳で見習いとしてSNCFに入社し、共産党幹部になる可能性もあったがあえて鉄道に残り、のち全国労組幹部までなった人物。知性・カリスマ性・ネゴ能力も持ち合わせている)がCGTの前線ヘッドを今回頭角をあらわしたル・レストに譲る。
同時に、仏社会党の(少なくとも一時的なものと信じたい)壊滅をあらわにしたし、極左のオリヴィエ・ブザンスノ(昔風にいうと第四インターになるのかな、フランスではトロツキストと呼ばれてる)への支持率が、たとえばセゴレンヌ・ロワイヤルへの支持率とタメになった。また、社会党(の生き残り)組では、エレファントと呼ばれた大物たちがリサイクル・ゴミ箱行きとなり、モンタブールを筆頭とするニュー・ジェネレーション(40・50歳はじめ)が、注目されるようになった。
たとえば、ブザンスノは30台はじめという年齢。まだまだこれからの可能性は大きいし、社会党が現実的に消えてなくなっても、たとえば今はポー市の市長の座を狙っているバイルーも含めて、新しい中道・左派・極左のアリアンス(共闘)ヴァリエーション、あるいは新党の結成だって可能だと思う。
はっきり言って政治というのは、サルコジ一人に任せるにはシリアスすぎる仕事なんです。
交通スト後、次の焦点は大学改革問題と仏司法システムの再構築になるだろう。
公務員の給料上昇にあてがうための金額はもうたいして公庫に残っていない。2008年には、一般年金制度改革と全国市長選挙がある。政府は選挙前にTVA(直接消費税)をあげられないから、サルコジの公約した仏国の大型改革を実現するための費用は極めて限られているわけだ。
特に大学改革は、いくら企業の大学資金への介入があったとしても、結果が出るまでには15年が必要だといわれている。おまけに、未来の世界経済の動きがまったく予見できない現在の環境で、大学・グランゼコルのどのセクターにより多くの予算を組むべきかは、どの学者・経済人・大学ヘッドにも分かっていないわけだ。だが、この仏教育分野への資本投下をミスったら、こりゃ世界的損失ですぞ。マジ。
この、ヘンに加速された時代に、未来ヴィジョンを持ちうる人材、そして同時に歴史・経済・国際関連・法、もちろんサイコロジーや医学・テクノロジーまでのクリアな視野を持っていないと、政治家として生き延びれないんだよね。国内ではバンリュウという課題や、原油価格が100ドル15ユーロ=1ドル(後記;みごとに間違い)1.5ドル=1ユーロという経済環境、エコロジー問題、人口高年齢化、アフリカおよび中東問題もあるし、タイトなロシアとの関係もある。はっきり言ってヌイイしか知らないアナクロ弁護士サルコではダメポ。
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と、一気に今の時点での感想を並べてみましたが、あと数日したらもっと明瞭な仏現在スキャナー画像みたいのなのが見えて来ると思う。
第四インターが急成長しますように。
Marina Anissina - Gwendal Peizerat 2002 Olypmpicsアイスダンスを見た時、
女性が男性をリフトするという前代未聞の演技に度肝を抜かれました。女性の強烈な黄色の衣装と髪の色にも。抑圧されている奴隷(Gwendal )を解放する女神(Marina)という設定だったそうです。独創性のあるフランスらしさを感じました。曲は、「私には夢がある」。by Youtube
幅広い視野、見識、経験をもち、人徳のある、誰もがリーダーとして誇りに思える
新顔のリストアップお待ちしております。
ところで、東軍イラン、ロシア、中国、欧州、西軍米国+イスラエルで第3次世界大戦を起こそうと目論む人々がいると説く人々がいますが、北京オリンピック以後、
11月の米大統領選挙辺りには、回避できるか勃発するか明瞭になるでしょうか?回避できても世界恐慌という噂は絶えません。フランス民衆の動向は重要だと思いました。フランスでこけたら、世界的に民衆は不利な気がします。世界的に1%対それ以外の闘いなんですから。フランス人は、そこまで意識してるかどうか知りませんが。
ブッシュの行け行けイランと世界戦争発言に対して、チャベスが、彼は精神病院へ入るべきとパリで発言したそうですネ。ロン・ポールの演説もYoutubeで見ました。彼が当選するなら世界が平和になりそうですが、だからこそ消されるのではと見てるウオッチャーもいるみたいです。
投稿情報: ラム | 2007-11-24 12:24
>未来ヴィジョンを持ちうる人材、そして同時に歴史・経済・国際関連・法、もちろんサイコロジーや医学・テクノロジーまでのクリアな視野を持っていないと、政治家として生き延びれないんだよね
具体的に有望な政治家の名前を是非教えてください。この先注目させていただきます。
投稿情報: petit | 2007-11-26 13:08
ラムちゃん、
また猫屋の知らないことばっかりコメントいただいても、お返事できないっす。すんません。なお、アイス・ダンスカップルは2人とも、ロシアと北欧からの移民だそうで、K夫人から教えてもらった。
petit 氏、
それがいないから、今のフランスが困ってるわけです。DSKはワシントン。オーブリにはカリスマ性がない。メディアがこれだけ統率されちゃった結果、メディア映えのするヴェイルとかモンターブールとかしか表にでてこなくなってしまった。まあ、政治ばかりではない、アート全般も同じでしょう。
オリヴィエ・ブザンスノは悪くないですよ。もちろん、“党”の問題をどうやってクリアするかに、これからの可能性はかかっていますが。84歳にして威厳を保ち続けているダニエル・ミッテランと32歳の郵便配達ブザンスノにはまだ無傷の、なんだろうhonnetotéが感じられます。こりゃ今時珍しいし、そのうえ論理性がある。
投稿情報: 猫屋 | 2007-11-27 02:58
トッドの説明がとても明快なので、仏文と猫寅殿の和訳を比較して、仏語のおべんきょーさせていただいております。がっこのテキストはつまらなくて、勉強する気になれなかったのですが、生きている内容だと、俄然、原文ではなんと表現しているのだろう?と興味が湧いてきました。
要は、アジる人、策謀する人がいても、しっかり水をかけて消しちゃう人がいるので、フランスは大丈夫なのですね。日本のステルス的法改正(年金や保険や教育や)に関しては、脳内も右往左往してしまいます。無駄に将来を心配しても消耗するだけかも。
ロシア人だったんですか。流石バレエの地元。ありがとうございます。
宮崎正弘氏の中国描写を読むたび、日本へいずれ中国人移民がもっとやってくるのかなあ?と想像しちゃいます。
湖北省で、バスにガス供給ができず、公共バスが止まった。およそ十万の通勤者に支障がでた」(英誌『エコノミスト』、07年11月24日号)。
投稿情報: ラム | 2007-11-27 14:26