22日発売のヌーヴェロプスに、エマニュエル・トッドのインタビュー記事がありました。トッドのインタヴューは、これまでにも何本かこのブログで翻訳していたせいでしょう、なんか“うちの兄貴”がしゃべってるみたいな印象があります。でも、この人のストレートさは独特ですね。余談ですが、米合衆国経済の先行きが暗いわけで、トッドの予言(帝国以降 2002年)がソヴィエト崩壊についでまたまた現実化しそうな雰囲気であります。
サルコジ?《それは、強者へのレスペクトだ》
Sarkozy ? «C'est le respect des forts»Youssef Coubage との共著で:《le Rendez-vous des civilisations (Seuil)/文明のランデヴー(ソイユ社)》 を出版した歴史家そして人口統計学者トッドは、大統領の“アグレッシブな気質”は“必然的に弱者に立ち向かわせる”と考える。彼のスケープ・ゴート追求は、そこから来ている。
ヌーヴェル・オプセルヴァトール: 現在の新たな社会危機をどう解釈しますか?拒絶するフランス、ヨーロッパの拒絶、グロバリゼーションの拒絶、フランスは再び反抗しているのでしょうか?あるいは、大物ではなく、小さな特権をもつ者たちへの攻撃に向かうニコラ・サルコジを告発すべきでしょうか?
エマニュエル・トッド: 今起こっていることを理解するためには、政治テクニックとしてのサルコジスムの歴史を考える必要があるでしょう。バンリュウ危機のおかげでサルコジは権力にまで行き着いた。内務相だった彼が火をたきつけ、そしてこの燃え上がりの記憶が、大統領選挙運動時、北駅での出来事によって(サルコジに)有利な方向で再活性化した。ナショナル・アイデンティティに関するディスクールのおかげで彼は政権についた。当初から、サルコジスムとはフランスの不安の責任者、スケープ・ゴートを告発することで機能している。それは、バンリュウでは移民の子供だったし、今は公務員とその類似職なのです。
N. O.:大統領選挙で、サルコジはル ペンを後退させたとは評価しないのですか?
E.Todd :サルコジはル ペンを越えている。ル ペンは語るだけだ。サルコジはバンリュウを炎上させるために国家機能を行使した。オープン政策(訳者注;左派から政府内要員をリクルートする策)での任命は、サルコジスムの奥深い本質を覆い隠した。ある意味、今政権にあるのは、FN(フロン・ナショナル)なのです。サルコジの現実とはふたつのチョイス:金持ちにあてた減税というプレゼント、そしてDNAテストは貧民に、容赦なく叩かれる、彼らよりさらに貧しい人間がいるのだという意識をもたらした。これは古典的だ:(国内)経済問題を解決しえない無能力は、外部キャラクターを敵として指名するのです。
N.O.:シュミノ(鉄道員)は内部の敵なのですか?
E. Todd - シュミノの場合、外見的はより弱い(vulnérable)、もうひとつ別の敵の指名です。特に年金問題に関する、許しがたい小さな特権保有者に対する平等論が活発になっている。これは論理的に一般世論の支持を前提とするものです。けれど、サルコジがぶち当たる問題とは、アイデンティティ・エスニック問題での語調から離れ、経済と社会運動、マルクス主義者がいうところの階級闘争という場に彼が移動したことです。スト実行者を認めることなく、職員たちは、自分たちの個人的問題に立ち戻った。彼らは、サルコジの経済問題についての無能を確認したのでした。
N. O. – 無能、それは言いすぎでしょう!
E. Todd. :右にしても左にしても、すべての政府がこの問題に直面してきました:グロバリゼーション、自由貿易、中国やインドといった新興国の登場によって給料に加わるプレッシャーです。ヨーロッパ国境における保護政策の度合いをもってしか、どんな政府もこのプレッシャーを弱めることはできません。それを行うためには、同政策に反対するドイツと対立しなければならない。だがドイツは大国です。そしてサルコジのロジックとは強者をリスペクトすることだ。
N. O.:それにしても、ストに人気はないわけですが。。。
E. Todd :そうです。けれどサルコジが気づかなかったのは、彼がスト決行者たちと自分自身を痛めつけたことです。小さな特権を有する者を弾劾することは、彼が大きな特権を擁護していると思い起こさせたのです。この敵の名指しでのエラーは、サルコジスムが熟考ではなく、直感に基づいていることを示しています。彼のアグレッシブな性格は、自然と弱者攻撃に向かう。けれど彼はシュミット主義者ではない:カール・シュミット(Carl Schmitt)は、政治の本質は敵の指名にあるというセオリーをたてました。サルコジの攻撃性は、たとえば漁業船員に対して、彼が男として月並みに攻撃的な大統領なのだと証明しました。
N. O.:サルコジは大統領として振舞っていないということですか?
E. Todd :ある意味で、フランスには大統領はいないのです。彼は首相を押さえつけ、ハイパー・プレジデントと呼ばれました。それは、一国元首の機能とは、あらゆる方向に走り回ることだけではない、という事実を忘れている。国家の、国民のシンボルとしてのディメンションがあって、大統領はそれを体現するべきなのです。ベルルスコーニの時代でさえ、イタリア人たちは大統領を有していた。サルコジの、このディメンションを引き受けられない不能力さは、不安定の感情を作り出します。サルコジは不安を呼び起こす:彼は、逆説的ですがオーダーよりもよりディスオーダーを体現する保守人なのであって、これが対学生を含む紛争の増加・増大を説明します。
N. O.:サルコジという実験は失敗におわるのでしょうか?
E.Todd.:誇張すべきではないでしょう。けれど、5年間にわたって弱者を叩き続ける大統領など想像不可能だ。軌道修正が必要となるでしょう。すでに企業人の間で不安が高まっているのを感じます。なぜなら、サルコジの外交政策も、ひどく金がかかるからです。この点でも、彼は強者、あるいはそう見えている米国をおだて、ロシア・イラン・チャドといった弱者を非難する。しかし、フランス経済に必要なエネルギー源は、ロシアとイランにあるのです。
N. O.:救いはMedef(仏経団連)からやってくるのでしょうか?
E.Todd.:Medef では絶対ない。でも大物企業家たちでしょう。これはフーケッツでの夜会に参加したサルコジの億万長者の仲間に限られるわけでもありません。(訳者注、サルコジは大統領当選の夜、企業家と俳優や歌手・コメディアン・ジャーナリストなどを招いてフーケッツというレストランでパーティーを開いた。参加者リストはセシリア・サルコジがつくったが彼女は出席せず。政治家は極めて少なかった。)
インタヴュー エルヴェ・アルガラロンド
Hervé Algalarrondo
Le Nouvel Observateur 22/11/2007
ありがとうございます。とてもわかりやすいです。メルケル側近が、仏大統領が関与していないことは何ですか?と仏高官?に質問したそうですね。北京での式典でも、悠々と歩く中国首相と、蟹股?ですたすたと先へ先へと走るように歩く姿が何とも目立ちました。何をそう急ぐのでしょう?
基軸通貨としての米ドル後、バスケット制が始まるのはいつからなんでしょうね。これでどの国も危機回避できるならそれもよいのでしょう。
[パリ 22日 ロイター] フランスのサルコジ大統領は、今週末の訪中で、ドル・ユーロ・円・人民元という主要4通貨の関係が「公平」になるよう求める意向。by ロシア政治経済ジャーナルhttp://blog.mag2.com/m/log/0000012950/
多極化上手くいくのでしょうか。均等ね。
プーチン氏はルーブルを基軸通貨に、と米高官に立候補したそうです。
9月4日産経新聞【モスクワ=遠藤良介】ロシアのラブロフ外相は3日、外交官養成を目的とするモスクワ国際関係大学(MGIMO)で演説し、米国と欧州、ロシアの3極による「集団指導体制」が世界秩序を形成すきだと提唱した。
投稿情報: ラム | 2007-11-26 22:21
猫屋さん、ダニエル ミッテラン が良さそうですよ。
待ってま〜す。
投稿情報: k | 2007-11-26 23:38
たしか、中国は手持ち外貨の1/3をユーロ建てにしたとか、するとかどっかで読みました。イランは(米国との通商いまだなし)はユーロだてで貿易してるはず。仏TVの対中国貿易プロパガンダは昔、つまりシトロエンのころから張りぼて作りなのはよく知られております。EADは仏国企業じゃないし、中国に(も)核関連もの売ったからってあんまりほめられた話じゃないかも、ですしねえ。だいたい対中国輸出ではフランスはイタリアよりランク低かったんじゃなかったか。。サルコがユアンのレート上げろって言って中国政府がそのとおりしたら、IMFとかいらないよねえ。
Dミッテランのヴィデオいいのが見つかんないんですよ。ちょっと待ってね。
投稿情報: 猫屋 | 2007-11-27 02:44