昨日夜、リベのウェブ版のデペッシュ(最新情報)を読んで、深く考えもせず自己駐在的(自己中毒的?)エントリを書いたわけですが、一日置いてふーむと考えてみると、コロンバニが編集ジャーナリスト投票の結果、ル・モンド社のディレクター職を解任されるだろうというニュースは、現在時点でのコンテキスト内ではより政治的な意味合いをもつ、というのが今夜アタクシの印象であります。
同時に、ニコラ・サルコジにはもう飽きてしまった。なぜなら、そのやり方自体デジャヴュ(日本語ではデジャブね)だからだ。テレビTF1の新ディレクターに、サルコジが内相当時の官房にして大統領選挙第二選挙官房だった若手ローラン・ソリ(国立行政院出のたしか36歳)がノミネートされた。同時に、フィガロとル・ポワンの記者が、エリゼ宮とマティニオンの顧問職についている。
政治家とジャーナリストの“ゴケッコーン!”は、フランスばかりではないんですが、ここ数年来のトレンドであります。これって、現実から切り離された、メディアとポリティックが対面する鏡のごとく魅了しあうという、極めてミクロな空間でのオージー・SM・パーティーのごとくに見えてしまう。
大統領選挙直後、スポンサーも株主も持たない独立週間新聞カナール・アンシェネに捜査令状がでたわけですが、編集部は「情報提供者の名をあかすことはジャーナルストの職業モラルにかけてできない。ジャーナリズム独立性はヨーロッパ憲法によって保障されている」と、クリアストリームにからむシラク日本口座汚職情報提供者書類の提出を拒んでいます。
同じ日に検察はサルコジの弁護士事務所にも捜査の名目で警官を送っていますが、こっちは単なる突っ込み防止用バランスとり空捜査だろう(書類管理ができない弁護士さんなんて即クライアントが逃げますね)。
カナール紙捜査は、「ゴラ、おとなしくサルコ様の言うこと聞かんかい」という意味でございましょう。社会党が今何をしていようが、ブザンスノが何か言っても(次の出番は5年後だし)、DSKがどうあがいても、末端党員が声を嗄らしても、サルコ一色のTV・ラジオ・無料新聞は、対抗勢力動向をポジティフにはとりあげません(特にあのジェットとヨットの持ち主がオーナーである朝晩無料新聞とかね)。
こんなに忙しい時代に、コマイ情報を集めたり、(20世紀も含む)古典本を読んだりできる人間は少ないでしょうし、フランスでは“文化”をになう下流人という階層人口はいまださして多くはありません。
ミッテランがよくいってた、Laisser le temps au temps (時間が解決するみたいな意味)という言葉を、ミッテラン嫌いであった猫屋ではありますが、なぜかしんみり思い出しています。
システム(新資本主義装置)はますます加速し、ヒトは孤立化され、カテゴライズされ、プロファイルされ、監視される。ヒトとヒトはますます隔離され、各人は目前の画面に見入っている。内側で生きるヒトは装置の全体像を見ることはない。
後記:本来は、「ル・モンドとアタクシ」というタイトルで、いかにして猫屋はル・モンド読みながらフランス語を学んだか、、、という、コロンバニにも関する文章書くつもりが、書いてる間にズレました。そうゆー夜もあるさ、ということで。おやすみなさい。
猫屋様。大統領戦後、落ち込んで食欲も無くなった私ですが、最近は
フランス人を、ヒューマニズムを信じてみようと思っています。それこそが私が愛したフランス共和国なんですよ。。。時代遅れといわれても、
メディアがサルコに握られようとも!!
投稿情報: じゃんぬ | 2007-05-24 06:33
いかにしてル・モンドでフランス語を学ばれたか、読みたーい。
しーかし、驚くことばかりですね。TF1のディレクターは元選挙官房ですか。。 ルポワンのジャーナリストはニュースで見て、そんなことがあっていいの??なんでみんな、何にも言わないの??と思いましたが。(だって以前から仲良くなかったらそんな顧問になんて入れないですものね。つまりは情報操作が有り得たということを堂々と言ってるようなもの,,,なのに)フィガロのジャーナリストもですか。。
今日は警察のトップに学友(友人?)を据えたとか。確かにデジャヴ...感覚的に慣らされそうで怖いです。。
投稿情報: ねむりぐま | 2007-05-24 15:31
じゃんぬ氏、
ねむりぐま氏、
ますます酒とタバコの消費量が増えて、たしかに体重も減ったですねえ。サルコは健康にもよくない(笑)
ルポワンだかフィガロだか、ドッチのジャーナリストかは忘れましたが、ずっと社会党追っかけやってたヒトなんですよね。つまりロワイヤルの弱点とかみんな知ってる。これも総選挙対策だ。
ただ、日本での小泉旋風とか思い起こしてみても、ここでの違いは、TVには出てこなくても新聞・雑誌(とウェブ)が情報を出してるところでしょう。メディア合戦ではマテリアル的に負けていても社会党には人材がいるんだし、ゲリラ的にだけど(たとえば arret sur image とか)TVで踏ん張ってるジャーナリストもいるわけです。
そんな状況で言うと、ル・モンドが編集内部の抗争でコロンバニ退出っていうのは喜ばしくはないかな、とも思ったですよ。つまり、これは古典的戦術で、分離させてから叩くという、米国外交とかがそうですが、それに乗っかっちゃうとル・モンドも危ない。
投稿情報: 猫屋 | 2007-05-25 13:26