冬なしのまま今はほとんど春のパリで、遊んでばかりいる猫屋なんですが、昨日は以前関連記事をアップしたこの映画を見てきました。そしたら、主演のフォレスト・ウィテカーが、オスカー主演男優賞をとっちゃった。さもありなん。
映画自体は極めてクラシックな作りになってる。スコットランドの厳格な家庭の息子、ニコラス・ギャリガンは医大を卒業してアフリカでの“冒険”に出かけるんですね。時は1970年代です。
アフター68のなんでもありな空気の中、国境のない医師団的(MSFが創設されたのも70年代初頭なり)ミッション先にウガンダを選び、人妻をたぶらかしつつ大統領顧問になってしまう若い医師と、不思議な魅力とパワーで権力を手にするが、次第に懐疑に悩まされ結局は暴君となり狂気にまでいたるアミン大統領のかかわりを、フィクションと歴史事実を絡み合わせて描いている。
インタヴューで、監督ケヴィン・マクドナルドは幼年時代を過ごしたウガンダの自然や空気を映画にしたかったとも語っています。なお、この監督は Touching the Voidという、二人の男が冬山で遭難、クレバスに落ち込むという事実をもとにした山岳映画も撮っていて、これは見たけどかなり怖かった。
映画を見た後、なにやら極めて暗ーい気分になって、つい相棒とつまらんことで喧嘩になった。なんと申しますか、インパクトの強い映画だ。
ストーリーは極めて単純。そして、若いニコラス医師が、なんともお気軽なオポルテュニスト(日和見的)でモラルなしダメ男なんでなかなか感情移入しにくいってのもあって、アミン・ダダ=フォレスト・ウィテカーの存在がさらに圧倒的なんですね。
貧しい家庭の子供が、フィジックとメンタルの特異さを使って、同時に元宗主国イギリスや、イスラエル・パレスティナも手玉にとって権力を握るんだが、8年のあいだに単なるパラノヤック独裁者になってしまう。この、権力を手中にしたアミン・ダダの変幻プロセスを体現するウィティカーの動き方が、兎にも角にも、見ものなんです。
そういったわけで、狂った権力者というものを目前にし、対する欧州人(ニコラス)も単なる女たらしのエゴイストであって、これはどうも気分は暗ーくなったのであった。
いやいや、しかし、この演技は見るべし。熱演なんてもんじゃない。体現です。
なお、同僚医師の奥さん役がジリアン・アンダーソン、あのXファイルのスクリーおネエさんでありますよ。アミンの第3夫人は Ray でレイ・チャールズの奥さん役やってた人。
また、ブラック・アフリカが関わる映画って、アタクシが見たものでいっても、インタープレター、ロード・オブ・ワー、ブラッド・ダイヤモンドなど、かなり数が多い。見てないのでも、ホテル・ルワンダやダーウィンの、、(あとなんだっけ、タイトル忘れたが)とかあった。同時に歴史映画の数も多いわけで、ハリウッド映画がお気軽SFやホラー、CGじゃあ観客を呼べなくなって、歴史や政治やアフリカにインスピレーションを求めている、ってわけなんでしょう。結局は物語ですね、人が生きてくのに必要なのは。
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