何故かフランスでは毎年9月に多くの新刊書が出るわけで、通常は文庫版しか買わない、つまり話題の新刊なんてのは2・3年に一度買うかどうかなんだが、どうも今年はウンベルト・エーコの新刊とともにこれも購入してしまいそうである。今のところフランスでの小説部門売り上げ第一位のようですが、900ページだそうで、読みきれるかどうかは確信ないわけです が。。。
Les Bienveillantes, par Jonathan LITTEL ガリマール 25euros
フランス語で書かれたこの小説の著者は、ニューヨーク生まれの若い(36歳)ユダヤ系アメリカ人なんです。父親はニューズウィークのレポーターにしてスパイ小説の御大。フランスの高校でバカロレア(大学入学資格テスト)を通り、アメリカはイェール大学で美術と文学を学んだあと、ヒュマニタリアン( Action against Hunger )として、シエラ・レオーネ・チェチェン・アフガニスタン・ロシア・中国・ルアンダ等々で働いている。今はベルギー人の奥さんと、2人の子供を育てるためスペインに腰を落ち着けたようですが、現在は(三回目のトライだそうで)フランス国籍を申請中とか。自分はヨーロッパ人だと自己評価している。
小説はひとりのドイツSS、親衛隊エリートのモノローグとして展開される。かなりな文献をベースに、もちろん作家が戦地で得た経験もベースではあるけれど、いかにひとりの優秀な人間が優秀な虐殺者となりうるのか、を描いている(ようだ)。
すでにゴンクール賞か、という声も上がっているようですが、今作家は自分で英訳中だそう。
なお右上は、1994年にドイツ軍によって拷問ののち処刑された若いロシア女性の写真。この写真が小説を書き始めるきっかけとなったのだとか。
この世代の、国境を越える才能に期待します、猫屋は。
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おまけ:今パリのマイヨール美術館で行われている“マリリン、ラスト・シーン”という写真展があります。死の直前に Bert Stern が撮った一連のヌード展覧会。また写真集ばかりでなく、マリリン・モンローに関する本もこの頃何冊か出ている。ヌーベロプスにあったフィリップ・ソレルスによる書評が上出来なので、仏語読みのモンローファン、あるいはソレルスファンは読んでみてください。→ Un roman de Michel Schneider « Marilyn dernières séances »
«Je déteste les enterrements. Je serais drôlement contente de ne pas aller au mien. D'ailleurs, je ne veux pas d'enterrement - juste que mes cendres soient jetées dans les vagues par un de mes gosses, si jamais j'en ai.»
《埋葬式は大嫌い。自分の埋葬に立ち会わなくていいのなら大満足よ。だいたい、埋葬なんてして欲しくない - 子供がいるとして、その子達の一人に遺灰を波のなかに投げ散らしてもらいたい。》
これが、1955年に出席したある女優の埋葬式で、マリリン・モンローがトルーマン・カポーティーに語ったことば。またフロイトの書簡集を読んだマリリンの反応も感銘深いです。
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フランス語読みの方にもうひとつ、あのベネディクト教皇の問題発言に関するル・モンド記事です。“イスラム:ベネディクト16世の躓き?、by アンリ・タンク”
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