4日間の間、フランス全部の映画館料金が3.5ユーロになる 《映画の春》 キャンペーンであったわけだ。ほぼ500円なり。で、見た映画は、ミュンヘンでもトルーマン・カポーティでもShooting Dogs でも Sayuri でもダーウィンでもなくて、サント・ペテルスブルグで撮られ、出演する俳優は日本人と米国人の《太陽》。←フランス語オフィシャルサイト
いい映画でした。ロシアはイルクーツク出身の監督アレクサンドル・ルクーロフは、この映画の準備に10年かけたそうです。その10年間、彼はドキュメンタリー映画を撮りながら、日本を廻り、昭和天皇に使えた従事も含む多くの年長者に会ってインタヴューし、また米国では文献をさがしたのだそうだ。
昭和天皇の役をイッセー尾形が、出演時間は短いですが皇后役を桃井かおりが演じている。マッカッサー役は Robert Dawson、よく似てる(といっても本物は写真でしか知らないわけですが)ような。なお米兵を演じる俳優は米国から参加、日本人俳優の多くはイッセー尾形のアトリエ所属者で、エキストラはペテルスブルグの邦人留学生。また植木はアジアから取り寄せたんだそうです。
上記オフィシャルサイトに監督へのインタヴューがあり、ルクーロフ監督が始めて日本に行ったときの印象が語られています。彼は驚きも、エキゾティスム(異国情緒)もロマンティズムも感じなかった。通訳者は絶え間なく『何か質問がありますか』と聞いたが監督にはいっさい質問する必要が感じられなかった、そうだ。(ロシアという地は欧州から見ればアジア、日本から見ると西洋なのかも。)
敗戦後の皇居に昭和天皇は一学者を呼んで、日本でもオーロラを見る可能性があるか聞きただすシークエンスがあって、天皇と学者がどこに座るか決めるのにあっちに行ったり、こっちに行ったりするコミカルな場面なんですが、人間なんだか生き神様なんだか、ご本人も周囲も分かってないという滑稽がよく演じられていました。
初めて天皇に会ったダグラス・マッカーサーが、『まるで子供のようだ。誰かに似ているんだが、誰なのか思い出さない。』 とモノローグするんですね。意味は深い。
映画はフィクションであります、と言う意味でよく出来た、インテリジャントないい映画なので、日本での上映を期待したい。
プロトコルの幽閉者、『天皇の孤独』を描くイッセー尾形の熱演(+桃井かおりの国母ぶり)は見る価値があるのですよ。
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