金曜の夜のTV(fr3)ニュースで、ソルボンヌ大学(正確にはパリⅣ)にスト中の学生がたてこもり周囲を警官隊が固め、隣接するサンミシェルやリュ・デ・ゼコルなどの通りは内部の学生を支援あるいは批判する学生達でうめられ、警官隊と学生の衝突する場面も見られた、、、という報道があったわけだ。
このトピックと関連写真を昨夜ブログにアップしようと思ったら、タイプパッドがメンテナンスでアクセスできないまま寝てしまった。土曜の朝起きてラジオを付けたら 『ソルボンヌ封鎖は“平穏の”うち早朝に解除された。』と言っていたわけ。
CPE (初雇用契約)法に対する反対運動について2月9日にSHIBAさんが(法律に関する説明も)、またFENESTRAE氏が今日(3月10日)詳しい説明を書いている。
ひとまず、拾ってあった写真をアップし、昨日までの(ソルボンヌ周辺には近寄らなかったけど)パリでの若い連中とそれを見守る住人の様子とか、今夜少し書き加える。
なお写真は上から:9日の凱旋門での無届デモ、10日のソルボンヌ近辺での学生と警官隊の衝突、構内から広場を見る学生、11日朝4時前後占拠構内から退去する学生を追うCRS(機動)隊員。
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なお上記fenestrae氏ブログへのTB先見たら、日本に入ってる情報がズレテルようなので、こちらに書き加えます。(該当ブログのコメント欄に書き込めませので)。
フランス中の学生が運動を開始したり、あるいは参加せずとも不安感を抱く今回のCPE法はこれまでの雇用法に加えて、若年層雇用の試験期間を2年間に延ばすという内容を含み、この期間中は雇用主は理由がなくとも雇用契約を一方的に解除すなわち解雇できる、としている。この法律を関連機関:各労組やアソシエーション、または他政党との協議なしで国会を通過させたド・ヴィルパン政府に対する批判は右派党からも出ています。また、雇用クリネックス化(使い捨て化)を危惧する一般市民からも、今回の運動はかなりな幅で支持されていた。一言で言えば、一般雇用パート・アルバイト化と失業者のあらたな増大に対する懸念だと言えるでしょう。
なお次回のデモは学生中心のものが木曜日(16日)、学生を含めた一般者のものが土曜日(18日)に予定されています。来年の大統領選挙に向けて、どのぐらいの動員数が出るかがかかってるわけ。また後で書くつもりだったけれど、ソルボンヌの学生占拠は68年以来始めてだそうです。
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以下続き、
さて、またしても鶏の夕食(今日は半値に下がった地鶏をオーブンで丸焼きにしてみました)が終わりコーヒーも飲んで、相変わらず燃えてないパリからの現地報告。
この一週間ほど、天候のはっきりしない雨の多いパリをほっつき歩いているとメトロとか近郊鉄道線との乗り換え駅なんかに、やたらと元気のいい子供達が歌ったり叫んだりしてるのにぶつかった。CPE反対運動で盛りあがるパリ市内の中高生である。女の子が多い、したがって極めておしゃべりで陽気である。黒い子も白い(つかピンクの)子も中くらいの肌の子も混じって、男の子は髪が長かったり、顎鬚チョリリンとか、ま、普通のパリのお子達。今思えばこれは先週のストで交通機関に影響はなかったが、職員ストで学校が休みになった日だった。
木曜に、政府は内容の一部訂正あるいは日付をずらすといった譲歩を見せず該当法は議会を通過、この時点で運動拠点が大学に移ったようだ。
金曜には近隣都市からも学生が上京、またソルボンヌ構内に(この時点での人数は20から50人ぐらいだったらしい)泊り込み・議論していた学生に加えて、ソンシエ(パリⅢ)、トルビアック(パリⅠ)からも学生が集まった。警官隊が周囲を固めてからも、ソルボンヌ内部では『学生運動の記憶が残るシンボル。内部破壊はやめるべし』 と言ってたらしい。それでも内部にサンドイッチや飲み物の差し入れがなされてた模様。
この前後私が市内で見たのは、金曜夕方のメトロ構内で高校生たちが歌ってたり、SNCF駅構内でデモ帰りの女子学生たちがニコニコとオマワリさんにタクト(ビラ)を見せて説明してたりしてる場面。回りの大人やメトロ・鉄道職員もめずらしくリラックスして眺めていた。これにはふたつの説明がいるだろう:まず、労働者や失業者のスト権はどんどん狭まれていること。上に書いたように、雇用のさらなる不安定性には全人口が不安感を持っている。(プラス冬がやっと終わりそうって安堵感も同時にあり。)
なお、土曜朝、大学構内にいた学生数は200から300と報道されている。しかしこれだけ報道陣が内部にいるのに、機動隊が強硬解除というのは不思議。また近隣のマクドナルド攻撃は、映像から見ても“壊しや”の仕業かと思われます。
参考:ソルボンヌ内の状況--ル・モンドのポルトフォリオ(音声と写真)
(後だしですが、ル・モンドによるソルボンヌでの経過記事)
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追加です。
ソルボンヌ構内にCRSを送る指令は帰国フライトからサルコジが送ったようです。ヴィルパンは知らなかった可能性も大きい。以上オプス記事より。
この手の占拠は長引けば長引くほど占拠側の宣伝になるから無理してでもさっさと掃除しようと思ったんでしょうね。政府側の戦略としては正解です。ただ教育大臣のジル・ド・ロビアン、学生を挑発ばかりしていったいこれは何だと思います。たしか10年ほど前UDFが対FNで曖昧だったときに毅然とした態度をとって一本筋の通った人だと思ったけど、バイルーと喧嘩して文部大臣になったあとバンリュウ騒動のときの態度や、それとの関係でのオートグラフ教育メソッドでのスタンドプレーなんかで権威主義とデマゴーグ性がめだちました。ヴィルパンが譲らないのはこれは規定路線だけど、このジル・ド・ロビアンの対応が火に油をそそいでいくのではないかという予感がしています。
投稿情報: fenestrae | 2006-03-11 21:50
このエントリ、これからちゃんと書き換える予定ですが、金曜に駅で見た風景からは予想もつかない方に行った。猫屋政治感覚としては(大して新聞読んでないしTV報道もほとんど見てないですが)、南洋に出てるサルコが(前回のように)ド・ヴィルパンの失敗を修復してウマー、の線かと思う。ロビアンは最近サルコ側に回った人じゃなかったかな。
ただFR3のカメラがソルボンヌ学生側にいたんですね。FR2はソルボンヌ付近に壊しやがいたと報道したらしい。この週末にいろいろなところで、ワサワサと動くんでしょう。たとえばPSのサイトにアクセスできないみたいだし、、、ってもともとそんなキャパないだろうから情報でもないか、、。これからの仏メディアがどっちに転ぶかで来年の選挙に大きく影響がでるでしょうね。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-11 22:01
占拠している女子学生の一人が、学長の要請がないと機動隊は入れないが、これから週末で学長はいないからまあ週明けまでは大丈夫と言っていましたが、みんな週末返上で働いているようで甘かったです。
ジル・ド・ロビアンはシュヴェヌマンみたいな頑固ものの感じだけなら学生との間にまだ信頼関係を築く余地もありますが、今はこれにサルコジの軽薄なデマゴーグ体質が加わっているからどうしようもない。もちろん彼としては一般のおとなの世論のほうを向いているというのもある。TF1のニュース記事のフォーラム欄をみると一般の人の反学生バッシングがすごい。
サルコジが出てきてどうなるか。学生のサルコジに対する不信感を考えると、これからサルジが出てきてもそううまく行くか。てぐすねひいて待っている学生もいるのではないでしょうか。バンリュウの若者と違って学生のほうには構築去れた言論も実力行使のノウハウもありますから。もっとも彼が対決姿勢をとらず調停者になる可能性もある。
ナンテールなど三大学の学長がCPEの停止を求める意見を出していますね。ナンテールは反スト派がストの違法性を告訴したというのもあるけど、一方で大学評議会全体で反CPEの声明を決議したりとこれからの動きを先取りしているようです。
あと今ポワチエがヘッドクォーターになっているような報道もラジオで聞きました。
投稿情報: fenestrae | 2006-03-11 23:17
金曜日のポールでCPEに異議アリの人が50%、30歳以下は60%というのを読んだんですが、ソースが見つかりませんでした。たしかパリジャンでした。
カナメのひとつは『ソバージュ系壊しや』と『右派壊しや』がどのくらい入ってくるかでしょう。大学では、ノンポリ系+68アコガレ派が始めは多かったようですけど。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-11 23:43
68憧れ派、なるほどこういう世代の言われ方もあるんですね。
真性(?)68派の僕としてはカルチェラタンに機動隊と学生、催涙弾で、失われた38年の歳月を引き戻したいところではあります。「憧れ派」はちょうど、我々の子供達世代になります。
アコガレ派なんて言われると、後ろめたさと居心地の悪さで入るべき穴を必死に探さなければなければいけません。
あらゆる分野において今の世界的な、指導者の不在状況はいかに僕たち真性68派世代が成長出来なかったかの結果としてものの見事に現れているとおもいます。
68年のあの時代、権力と対峙する事を結局はリスクやエゴとしてしか総括出来なかった。
そのツケなのだとおもいます。そんな連中が世界のリーダーシップを握れる訳が無い。
本当に能力のあった連中は権力中枢からは完全に疎外されてしまっています。
68世代で権力の中枢に残っているものが居るとすれば、それはエリート面して単に風向きばかりを窺っている、せこいチキン野郎にしかすぎません。
そして『我々の時代は』なんて言う言葉を厚顔無恥そのままに発してきます。
こんな、連中に決して気を許すなです。
68世代は日本では団塊の世代デス。こんな連中に老後なんていう発想を許すな。
仮に僕に許されているものがあるとしたなら、常に飢えて死ぬ覚悟を持ち続ける事ぐらいです。
投稿情報: クノちゃん | 2006-03-12 07:30
クノちゃん、どうもです。
今晩8時にド・ヴィルパンがTVでスピーチします。その結果で今回の運動がどっちに転ぶか(小規模なガス抜きデモか、労組と組んだゼネストまで)見えてくるんじゃないかな。
昔と違うにはメディアの力とインターネット・携帯で(凱旋門の抜き打ちデモはそうだったと思うけど、フラッシュ・ムーヴあるいはオフみたいなの)がすぐ企画できるようになったことだと思う。
『68年憧れ派』ってのは単に猫屋のネーミングですよ。オルター・グロバリとかの若い連中とかも入るんだろうけど、全体的に言っても、チェ・ゲバラやボブ・マーリーなんかのTシャツ着て、パレスティナのスカーフみたいの巻いて煙草手巻きのやつ吸ってたりするのっているよ。(こっちからみりゃかわいいもんだけど)。
まあ、68年はこっちではそんなに否定的なものではない。むちゃ嫌いな層はいても、今の35歳から60歳ぐらいの人間の半分ぐらいにとってはノスタルジックって感じじゃないかなと思う。ま、これはパリの話だけど。(地方都市は極めて保守的なとこが多い。)
ただ大きな違いは、68年の運動が対権力(実際の各国政権)だったとしても、今のはそうじゃない。直接には青年層に関わる雇用法が対象だけれども、背後にあるのは現在(そしてこれからの)の経済システムが『普通に、そこそこ幸福に生きていくための職業』を得られるための学歴、というのをどんどんレベルアップさせていて、いくら勉強して職が見つかっても短期バイトだけじゃたまらん、ってゆう不安と閉鎖感があるんでしょう。
けが人や死人が出るストやデモはもちろん困るけど、どんどん厳しくなる学校教育内容にくらべて、将来の展望は見えない、夢も持てない、政治も信じられない、若い連中が、あまるほどのエネルギーを合法内で出すのは悪いことじゃあないと私は思うし、ソルボンヌでなんかあった、、ということで他の地方や他の国の学生たちも声を出すなりしてもいい、と私が思ったとたん、これを恐れた政府は即潰したわけだ。
日本のカリスマ某ブロガーは、日本の若い衆もフランスのように国会燃やせばいい、見たいなこと言ってたけど、それは言い過ぎにしても、バンリュウでのように車に火をまた付け始めても困るわけだが、『やってらんないよ!』って表通りを歌うたったり、大声で叫んで練り歩くお祭り騒ぎぐらいはやってもいい。そりゃ面白いもん。
あと、ソルボンヌ構内には高校生もいて家に帰らなかったから親から一ヶ月の外出禁止をくらった、なんて話してる。パリで言えば、マリファナとデモも高校生活の一部ってところがあります。(アルバイトは休暇中にする子もいるけど一般化してないですけども。)
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-12 17:51
↑なんかエントリひとつ分ぐらいのボリュームになりましたが、
ド・ヴィルパンが何言うか聞いてから、またいいたい放題書いてみます。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-12 18:16
確かに、68年との大きな違いは、インターネットなどメディア状況がまるで違う事、グローバリズムと言う言葉に象徴されるように世界や権力に対する認識がまるで変わってしまっている事、などなど歳月以上に大きく変わったと思います。
しかし中国にしてもフランスにしても国家権力は堤防に開けられた針の穴が、洪水を引き起こす可能性がゼロでない事は、過去の歴史から充分に学んでいます。
権力は針の穴にたいしては寛容であったことは、ただの一度もありません。
権力の許容するお祭り騒ぎや発散も、それが針の穴から棒の穴に広がる可能性を持ち始めれば権力は、容赦なくそれを潰しにかかるでしょう、フランスのCPE反対闘争は権力側から見れば、決して針の穴ではないと言う事だと思います。
権力の側にとってはバンリュウ暴動よりもはるかに大きな危険性を秘めていると思います。
多分、サルコジもド・ビュルパンもバンリュウ暴動の時よりも言葉を慎重に選んでいるのではないかと想像するのですが?
投稿情報: クノちゃん | 2006-03-13 09:44
忘れた!
猫屋さんの 「68アコガレ派」っていいネーミングだと思います。
言葉に対するセンスの良さ感じます。
猫屋さんに一票。
投稿情報: クノちゃん | 2006-03-13 09:50