ネット版掲載ル・モンドのAFPとロイターとの共同記事です。日曜夜、TF120時ニュースでクレール・シャザルに答えたヴィルパン・インタヴューとそれに対する反応が手短に書かれている。週末はほとんどのプレス・ジャーナリストもお休みなので、これからいろいろ反応が出てくると思いますが、まずはこの記事を即訳出。なおTVを見た訳者の感想などは、のちほどこのエントリに追加、あるいは別エントリで書く意向なり。
ド・ヴィルパン氏CPEについて説明、動員は続く
M. de Villepin s'explique sur le CPE, la mobilisation se poursuitLEMONDE.FR | 12.03.06 | 21h16
日曜12日、TF120時のニュースに招待された首相はその初雇用契約プロジェクト(CPE)を擁護、『可決された法は適用される。』と断言して、このプロジェクトの単純な取り消しを要求する声に対する拒絶の態度を明確にした。しかしながらドミニック・ド・ヴィルパンは、この青年層に関わる新契約に、みっつの『追加ギャランティー』を加える提案をする意向があると示した。
この三案のうち、雇用主が理由明示なしに契約解除出来る二年間のあいだ、CPE該当者は『指示者(referent)アシスタンスを受ける』ことが可能性だと首相は述べた。
さらに、『職業研修を受ける』ことを青年に可能にするため、失業手当に『たとえば3ヵ月の間』、『収入補足』を追加すると提案した。ヴィルパン氏は同様に、CPEの『定期的評価』を提案。『この契約を、6ヶ月ごとに社会パートナー達と共に再評価する機会』を作りたいと述べた。
『教育的』政務執行を目指しながら、CPEに関しては『多くの誤解と混乱と不理解』があったと首相は認識した。論争の的となったこの法以外の部門でも、雇用不安減少の方法については、『社会パートナーたち』との会話を始める用意があると宣言。『国民全体と共にさらに進んで行きたい。CPEばかりではなく、不安定化に関する危惧が存在する』と、CPE継続は『個人的賭け』ではないと強調した。
決定的一週間
この表明以前に、CPE反対者たちは動員継続を表明しており、これからの一週間は政権にとって決定的なものだと見られる。ポワティエに集まった全国学生連盟(la coordination nationale étudiante)は、その『決意』を再確認し、木曜の青年組織同盟Stop-CPEが呼びかける集会および土曜日の労組と合同のもの以前に、火曜日からの集会参加を若者に促している。
同様に、全国高校生ユニオン(UNL)と独立民主高校生連盟(Fidl)もそれぞれのコミュニケで、来週の校内総会開催と反CPEへの大幅結集を呼びかけている。
金曜日に、全84校のうち数十の大学がスト中、あるいは封鎖されている(教育省によれば30前後、AFPによると40、UNEFによると45)。週末の間、一部封鎖あるいは占拠の場に残っているものは数少ない;例、トゥールーズⅡ-Le Mirail、レンヌⅡ、モンペリエⅡとⅢ、カン、トゥール、ブレスト、ナント、ル・アーブル、グルノーブルⅡとⅢ、およびディジョン。
しかしながら、これら結集している若者は、月曜以降、anti-CPE運動に賛同・不賛同にかかわらず、デモ当日以外の大学封鎖に反対し講義継続を望む多くの学生と協議することになる。Le Monde.fr およびAFP、Reuters
首相は若者の声を聞かなかった
Le premier ministre n'a pas entendu la jeunesseUNEF代表のブリューノ・ジュリアール(Bruno Julliard) は日曜夜、CPEに関するドミニック・ド・ヴィルパン首相の発言のあと 『怒りのまざった失望』を持ったと表明した。『首相は若年者の声を聞いていないし、最初からとまるで同じ嘘の議論を繰り返す長い演説をしただけだ。』
同サイドのベルナール・ティボー (Bernard Thibault) CGT委員長は、CPE撤回はネゴシエーションの対象ではないと表明。同時に、首相の対話申し込みは『誠実ではない』、と判断した。
(訳者注:最後の部分は月曜午後現在該当記事には含まれず別記事の一部となっています。参考別記事:Le retrait du CPE reste un préalable pour les syndicats)
はじめまして。フランスの時事問題について、しばしば勉強させていただいております。
訳出されている記事、最後の一文は以下のような意味ではないでしょうか。
「集結している若者たちにはしかしながら、月曜日以降、学生の大部分との折衝が必至となるであろう。CPE支持・反対にかかわらず、学生の多くはデモ当日以外の封鎖に反対し、講義が行われることを望んでいる。」
とりいそぎ、気づいたことだけのみにて失礼いたします。
投稿情報: strapontins | 2006-03-13 14:00
strapontinさん、
ご指摘ありがとうございます。意味はそのように理解していたんですが、推敲なしの当訳出文では通じてないことを発見、、、これから手直しします。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-13 14:11
ヴィルパン、例によって演説はできるけど対話はできない人という印象をさらに強めました。クレール・シャザルの質問は短くポイントをつきながらわりにクール。シャザルは反権力がちがちですっぽんのように食い下がるタイプじゃないんだから、ヴィルパンはもうすこし丸め込むような雰囲気を作ることもできるはずなのに、用意したようなことばでしか答えられないものだから、シャザルの短い本質的な質問に答えがないという印象が強まる。
CPEの細部のややこしさそのものが全面的な拒否--TCEで前例あり--を力づけるという見方が最初からありましたが、もともと条文に盛り込まれていない細かい特典を場当たり的政策としてあれこれ付け加えると約束しても、この期に及んでは、「なんだかぐちゃぐちゃいっているけど、とにかく2年間はいつでもクビという話なんでしょ!」という反発をさらに誘発するだけだなと思いました。
そして若者たちと協議、交渉ということばを一言も発しませんでしたね。tous les partenaires sociaux と繰り返すだけで。もちろん学生たちということばも用いなかった。若者がすべて学生ではないから、ポリティカリーコレクトですが。CPEはバンリュウの学歴のない若者を助けるものはずなのにという理論で、学生たちの行動を世論から孤立させようとしたとして学生たちをますます怒らせた。コミュケーションの断絶が深まります。この間を教育大臣がつなげばいいんでけど、後者が完全に学生を怒らせているから、これはこじれるでしょう。
問題の最後の文のところですけど、完全閉鎖に反対する学生の数に、majorite という語でなく une importante partie というあいまいな語を使ったところがル・モンドらしい用心さというべきか。
投稿情報: fenestrae | 2006-03-13 16:43
>majorite という語でなく une importante partie というあいまいな語を使ったところがル・モンドらしい用心さ
書き込みしたときには気づいていませんでしたが、まったく腑に落ちるご指摘です。「ソルボンヌ封鎖」についてのエントリーにてリンクの張られていた記事(封鎖から排除までのクロニクル)にも同じ巧妙さ(この場合モンタージュとでもいうべきもの)を感じました。
今後の関連記事の紹介も期待しております。
投稿情報: strapontins | 2006-03-13 18:46
>fenestrae氏、
TV20時の、おまけにTF1ニュースを見るのは本当にひさしぶりだったし、途中で裏番もちらちら見ながらなんですが、確かにド・ヴィルパンのタクティクスのまずさにまず失望しました。クレール・シャザルの突っ込みは、この手が流行りだしてるってのもあるし、TF1
大ボスのブイグがサルコジ支援隊の親分だからなあ、とこちらは下馬評談。複雑ですよ。なんでFR2を選ばなかったんだろう。
またtous les partenaires sociaux 、社会パートナーと訳しときましたが、聞いてるうちにだんだん企業家達、としか受け止められない感じになった。ここで労組なり学生代表なりを織り込めないド・ヴィルパンの基盤と回転のおそさが出ちゃったと思う。もともと経済関係知識ゼロの人なんだが、政党内でも孤立化していて有能な人員がチームにいない。それが表面化したんだと思います。あとは、タクティクスだけの塊のようなサルコジがどう出てくるか、でしょう。(そして社会党の出方もなんだけど)
この記事は週末のpermanance(待機)記者が書いてるんですね。メディアの反応、この一週間は目が離せません。
やっとゆっくり本が読めそう、と思うと絶対何か起こるわけで。ミロセヴィッチ関連、ブッシュのインピーチメントまでいくのか拷問・人権問題、まだまだ続く歴史論争と、ネタばかりなのに、困ったもんです。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-13 18:51
> strapontinsさん、
コメント重なりました。フィガロやリベの記事と比べると分かるんだが、ル・モンド記者はさすがに週末でもみごとな編集ワザを見せています。他にも紹介したいル・モンド記事は溜まってるんですが、いかんせんヘボとはいえ(いや、ヘボゆえに)翻訳に時間がかかるので本数こなせないのが残念です。なんだかんだ言ってもル・モンドはいい新聞ですよ。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-13 18:59
思い出したことを2つ。
1.UNEFの代表の学生は、ヴィルパンはもし反対している学生たちと話し合おうという気があるんだったから、いつでもオレの携帯に電話してこれるはず、番号は教えてあるからみたいなことをTVで言ってました。たしか二日ほど前だったかとにかく、昨日のTF1のヴィルパン出演より前。なるほどそんなふうに考えるのだなと思いました。日本だったら「学生のぶんざいで...」。もっともすでに社会勢力としての全国学生組合組識が存在しないので仮定まで行きませんが。
2.学生が運動している関係でジル・ド・ロビアンがヴィルパンの次に表に出てくるけど、若者はすべて学生ではないという原則からすれば、ヴィルパンの代理として対策にあたるのはほんとうは労働大臣のジャン=ルイ・ボルロのはず。なのにボルロがほとんど不在。CPEはヴィルパンが個人的にさっさと決めて、ボルロが話をきいたときにはもうすでに既定路線だったいうことですが、このあたりでもヴィルパンの孤立が目立ちます。ボルロも「いいとこどり」のチャンスですかね。
投稿情報: fenestrae | 2006-03-13 20:15
>ほんとうは労働大臣のジャン=ルイ・ボルロのはず、
で、思い出したんですがfr2の週末担当女性キャスターはボルローと再婚したばかりだ。
バンリュウ騒動の時もボルロー前線には出てこなかった。まあ、そのせいで人気が落ちてない、、ってか、TVメディアと政界の仲良し度ってきりないんですよね。知り合いのUMPプロ・シラク派人はすっかり干されて外部団体に行ってますよ。まさにいずこも同じ戦国時代です。
なんか、コメント欄でネタがつきて次のエントリ書けそうもない(笑)。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-13 21:06