アンチCPE運動の結果としてのフランス全国ストの火曜日です。ゼネスト規模ではありませんが、メトロ・バス、SNCFなど交通機関も通常の半分ほどの運行がなされる見込みです。なお本日新聞-全国紙もおやすみ。WEBは更新してますね。ル・モンド リベ。さっき寄ってみた郵便局は平常道理営業。普通は窓口に列が出来る時間帯なのにガラガラでした。
さて、サッカー界の賢者リリアン・チュラムがル・モンドのインタヴューに答えています。訳出してみましょう(かなりの意訳なり)。
リリアン・チュラム:「ゲットーを開放せよ!」
25日発行(26日付)ル・モンド記事
2005年11月、バンリュウ暴動にあなたは反応した。今、怒りを表わしているのは学生です。この運動を理解しますか?バンリュウの恵まれない若者と社会的により適応している学生は共通点を持っている:どちらも将来を望んでいることだ。残念ながら、彼らに約束されているのは不安定性(la précarité )だ。
バンリュウの若者は人種差別を告発する。フランスのエリートたちは社会の硬化に責任がるのでしょうか?
言葉には意味がある。アラン・フィンケルクロートのような尊敬されるべき哲学者が、フランスサッカーチームはヨーロッパ中の笑いものだ。なぜならチームが『ブラック・ブラック・ブラック』だから、と広言するとき、それはノワール(黒人)はフランス人ではないという意味なのだろうか? もしあなたのオリジン(起源)が、ロシア・イタリア・ポーランドであればあなたは完璧に同化したフランス人だ。けれど、大昔からアンティーエ(西インド諸島人)であり、またフランス人である私は、肌の色にせいで非-フランス人なのだろうか?そう、言葉には意味がある。そしてニコラ・サルコジがある種の言葉を使う時、(結果する)われわれ社会の苛立ちへの責任がある。まるで、何年か前にははっきりと極右勢力のものと考えられていた思考が回収されて、今では“あたりまえ(ノーマル)”になったかのようだ。。。
ジョン-マリー・ル・ペンが大統領選挙第二回投票に至ったとき、私はそれをグアドル-プからの電話で知った。悪い冗談だろうと思った。翌日、トリノユベントスのチームメイトはフランスを馬鹿にした、人権の国だってね!あの時は本当に恥ずかしかった。
現在のフランス社会状態に不安になりますか?
はい、なぜなら悪い意味でのアメリカ化が進んでいると思うからです。(複数の)ゲットーが形成され、豊かな者たちが一方に、もう一方に貧しい者たちがそれぞれのコミュニティを作って自己閉鎖してしまう。将来、どんなフランスを望むのか知る必要がある:ひとつのナショナル・アイデンティティがすべての階層の人間に共有される国か、各コミュニティの利益によって分断され消耗された国か。マイノリティという言葉が使われすぎていると私は感じる。この言葉が政治家たちの語彙から消えてなくなればいい!すべての人間がこの社会について同じ見通しと同じ権利を持つべきだ。けれど、人々がこの国と一体化する(この国に自己のアイデンティティを重ねる)ためには、行動し、教育し、ゲットーを開放しなければいけない。その道がたどられていない。。。
フォンテンブロー近くのシテであなたが子供だった頃、状況はすでに閉鎖的ではありませんでしたか?
シテ内には、今はなくなってしまったかに見える社会的混合がありました。この点から見れば、この15年ほどで状況ははっきりと悪化している。このゲットー化を助長させる代わりに、オリジンがどこであれすべてのフランス人たちのつながりを織り出すよう責任者たちは努力をすべきだ。政治家には責任がある、なぜなら彼らのディスクールが、隔離を賞賛しコミュノタリズムを助長するからだ。フランス市民の特定カテゴリー人口がメディアに出てくるための法を(議会で)可決しなきゃならないなんて、ノーマルだと思いますか? この国のノワール人口を魅了したり、鎮めたりするためにノワールをひとりテレビに出演させなければならない、そうではなくて単に現在のフランスの現実が、その多様性においてノワールでもある、そういうことなのです!(訳注1)どうしたらメンタリティは変わるのでしょう?
教育によって。物理的かつ人材的に重要な手段が、この国のすべての階層の教育に向けて用いられるべきだ。長期的に見れば教育には急いで可決された法よりも効果がある。繰り返しになりますが、どんなフランスを望んでいるのか?政治責任者たちは、ロング・タームの視野を持たず、有視航海している。
誰が、フランスがふたつの大戦から抜け出し、再建するのを助けたのか?ノワール、マグレブ、イタリア、ポルトガル、ポーランドからの移民たちはこの国の豊かさの源泉です。一定の人々のディスクールが、残念ながら、呼び覚ます傾向のある隠された人種差別と戦わねばなりません。アカデミー・フランセーズのメンバーがポリガミについて発言するとき、この人物は、結果的に日常的人種差別を強化する極めてネガティフなメッセージを送っているのだと言う自覚があるのでしょうか?(訳注2) バンリュウ問題は、何にもましてエスニックと宗教の問題だとアラン・フィンケルクロートが説明するとき、彼もまた、フランスにずっと以前から存在する隠された人種差別を呼び覚ましてしまう。
あなたは、人種差別行為に汚染されたイタリア・リーグ内で10年活躍しているわけですが。どのようにお考えですか?
1996年にパルマにやってきたときはすぐには分かりませんでした。それでも少しずつ、ノワール選手として、人種差別的罵倒を叫ぶ一定のファン(tifosis)との間に問題が出てきた。そしていったんは収まった。けれど数年前から、現象が大きく再発してきている。数日前に国際連盟(FIFA)が、サッカー競技場での人種差別行為をより厳しく取り締まる規制を公式化したのには理由があるわけです。イタリアでの状況は憂慮されるべきもので、私としては、パオロ・ディ・カーニオ(ラッツィオ・ローマの選手)とそのサポータの間で取り交わされたファシスト式挨拶と、一定の競技場内で聞くサルの叫び声は同じ性質のものだととる。ことは重大です。何ヶ月か前、ティエリー・アンリを『糞ノワール』と扱ったスペインチームの監督、ルイス・アラゴネスに対する国際オーソリティの寛容と同様に理解しがたいものです。
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テューリン特別派遣記者、アラン・コンスタンAlain Constant によるインタヴュー
訳注1:TF1の20時ニュースのアナウンサー、PPDA(ポワーブル・ダボール)引退後ノワールの青年ジャーナリストが担当する模様。どうも仕掛け人はあの、サルコジらしいです。またテレビでのマイノリティプロモートのためコタ(比率性)導入法も検討されたようです。
訳注2:バンリュウ騒動の最中、アカデミー会員エレン・キャレール・オンコース(専門ロシア文学)がロシアテレビNTVに向けて「彼らはひとつのアパートの中で三人か四人の妻と25人の子供がいて、あれはもう人が住むところじゃない。人多すぎでオモテを走ってるのよ。」などと発言。同様なことをフランス語でも喋り捲っていた。
参考 仏語ウィキペディア
Hélène Carrère d'Encausse
Polygamie (サルコジ発言記載あり)
なかないい記事ですね。感謝。
しかしアラン・フィンケルクロートはもはや「尊敬される哲学者」ではなくなりましたね。
投稿情報: 天神茄子 | 2006-03-28 22:47
やっと翻訳終えました。夕方突然気分が悪くなって大変だったんですが、落ち着いてきました。ヴィールス性ガストロでしょう。
フィンケルはもうだめ。BHLもあかんです。
テュラム、言葉の選びかたがいまいちだったりするけど、どうしてこれだけ語れるスポーツ人はそうそういません。スポーツ人だからこそ、こういった「理想論」を叩いていって欲しいです。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-29 00:41
試合中、一部サポーターからの人種差別的野次は、いつまでたってもなくならないどころか、以前よりも過激化しつつあるらしいですね。特に、スペイン、イタリアなどでは、そういう傾向にあるらしいです。バンリューのサッカー少年から世界のトッププレイヤーになった今でも、試合に勝つ以上にラシズム・一切の差別に対する問題が、チュラム選手にとって真の戦いであることは、彼の最近の発言からも伺えます。
投稿情報: | 2006-03-29 01:34
↑名無しさんで投稿してしました。
投稿情報: chaosmos | 2006-03-29 01:35
chaosmos氏、今晩は。
フランスでも、PSGとマルセイユの試合が中止になるくらいひどいわけです。デモでもそうなんだけれど、こういった凶暴性ってどこから来るんだろうかと思う。同時にサッカーファンはどこでも危ない。サッカーは好きだけれど、競技場に行く気になれません。残念ですが。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-29 01:48
「シテ内には、今はなくなってしまったかに見える社会的混合がありました。この点から見れば、この15年ほどで状況ははっきりと悪化している。」という言葉から、いくら現在平和に人種・国籍混合が進んでいるように見えても、それは必ずしも続くとは限らないという意味で、非常に重い現実を突きつけられる気がします。
サッカー、サポーターとごろつきの見分けがますます付かなくなってきている気がします。この競技の位置づけが国によって違うということもありますが(例えば中田秀は、イタリアと英国でのその辺りの違いをまだ分かっていない気がする)。
スポーツ・・・試合だけ見ている分には面白いのですけどね。地域・国の代理戦争的な役割もあるからなあ ^_^;
投稿情報: ぴこりん | 2006-03-29 13:57
あ、しまつた orz「秀→英」でした。私も人名(漢字もスペルも)弱いです・・・。
投稿情報: ぴこりん | 2006-03-29 14:16
エレン・キャレール・オンコース>この人、ソ連が崩壊する前夜あたりに「ソ連という国は官僚制度がしっかりしていてるからあと100年はもつ」と発言していたのを思い出します。なんかエマニュエル・トッドにも叩かれていたような。てんで信用できないオバサンですね。
投稿情報: 天神茄子 | 2006-03-29 14:32
ぴこりんさん、
イギリスに比べて、確かに元移民系仏人の政治参加や経済上部構造への参加は遅れています。これにはコタが憲法にある「平等」概念とぶつかってしまうのと、仏上部構造がいいにせよ悪いにせよ、グランゼコルに代表されるエイリー主義的なものを土台にしてるからだと思われます。イングリッシュ・スクールのプラグマチズムとフレンチ・スクールの原則主義の違いもある。ただ、実際フィールド上で問題になるプレカリテ=不安定性・流動性・不確定性、もっと露骨に言えば貧乏化でもあるんだけど、これはシステムの違いを超えてどこの地でも起こってると考えます。“大衆”のフーリガン化ってどこでもある気がするですよ。今読んでる丸山真男の時代って本、かぶる部分もあり興味深いっす。
なおハピーフューな読者の皆様、
誤訳・誤字・数字間違い等についてはお気づきの方、ひそかに御指摘願いたいです。
天神茄子氏、
これも女性オニババ化のヴァリエーションでしょうか。日本の話題本は読んでないけど。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-29 16:56
↑コメント内「フランス・エイリー主義」とは、ブライアン・エイリー教授(ケンブリッジ)の立てるフランス型エリートテクノクラートのなす政治形態分析論における仮説としての、、であるわけないです。単なる間違いです。正しくは「エリート主義」、すんません。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-29 21:52
>ヴィールス性ガストロ
大丈夫ですか?お大事に!
本題からズレますが…えっ、PPDA、引退?いつですか?もうすぐ?TF1平日20hニュースって永遠にPPDAがやると思ってました。いや、なんとなく。
あと、気になるのは、ダノンだったかデザートのCMで、チュラムのママが「初めてのゴールが忘れられない…いつもなんでも分かち合う子供だった…」とかいうやつ、あれってチュラムの本物のママなのだろうか。同居人は「そんなわけない」と言いますが。
投稿情報: shiba | 2006-03-31 00:14
ども、お帰りなさい。
正露丸のおかげで元気になりました。クノちゃんのおかげでもあります。
そう、PPDA引退です。シャザールもやめるような気配。ってTF1まず見ないんですけど。
テュラムのCM見たことない。でも本ものの気がする。
ところで、テュラムは後日政治家になるに5000ドラクマ。
なお次回オフは九日になりそうです。
投稿情報: 猫屋 | 2006-03-31 03:54